182話
人間世界……大小様々な四角いビル群の光が夜の町を照らす……
しかし今宵、眠らぬ町の住人はゾンビだった……
「ああゾンビゾンビ! 老若男女多種多様ゾンビ!」
魔王モンクは自ら生成した白い虎形エネルギー体に騎乗し走り抜ける!
「グジュジュジューッ!」
ゾンビ!
「寝てろ!」
「ジュババーッ!」
エネルギー虎が老人ゾンビを食い破る!
「ったく、殺すより早く増殖してる可能性があるな……無事な奴だれもいねぇぞ」
モンクは周囲を眺め回した
「久しぶりに使うか、大技!」
モンクの纏うオーラが白から青に変色!
「チェンジディレクション! イーストドラゴン!」
モンクが飛翔! そしてエネルギー虎が青いドラゴンに変化してモンクが乗った!
「ハァァァァーッ!」
モンクのオーラが頭上に集まり……竜型エネルギー体が数十匹生み出され、町に降り注いだ!
龍は町を破壊しつつ敵を自動で追い喰らい尽くす!
「何人か民間人も死ぬかもしれねぇが……ま、ゾンビを全滅させねぇことにゃ死ぬのは変わんねぇか」
モンクは諦めたように破壊される町を眺めた……その時!
「グシャシャァァァァァーー!」
ロケットじみた勢いで虹色の何かがモンクに飛んできた!
「うぉっ!?」
驚く! 白い肌は淡く虹色に発光し、瞳孔の開いた目、口からは腐敗液が垂れ、お菓子の袋や死体を抱えている……魔王ビザール!
「オマエウマソウダ!」
「来やがったか悪食野郎!」
モンクが腕をふるうと、彼女の背後より数体のエネルギー龍が射出される!
「ソレハタベモノジャナイナ!」
ビザールの体から虹色の糸じみた極細触手が伸び、すべての龍を捕縛!
「ッな! 触れたら爆裂されるはずだ!」
この魔王ビザールは、神の果実を取り込んだダルスを喰らいその力の断片を得ているのだ!
「ソノクビモラッタ!」
魔王ビザール背中のばした枝じみた触手でビルを叩き高速移動! エクスキューショナーソードでモンクの首を狙う!
「ゾンビの分際で剣使ってんじゃねぇ!」
モンクの顔にエネルギー龍の頭が重なる!
エクスキューショナーソードにモンクが噛み付いた!
「ウガォ!」
食いちぎる! さらに掌を突き出しビザールを吹き飛ばした!
「グシャーッ! キニイッテタノニ!」
ビザールは虹色の糸触手を噴射しビルの合間にネットを作り、それをクッションにして衝撃を流し、さらに張り付いた!!
「グゥゥゥゥゥ……」
触手ネットに無数の目が開く! 無数の虹彩がモンクを捉えた!
「ゲ……やばそうなの」
次の瞬間数百本の破壊光線が放たれた!
一方その頃……
「そこのけそこのけ! ウワッハッハ!」
魔王カタクラフトが巨大武器を振り回し建物ごとゾンビを薙ぎ払っていた!
「ふぅぅ、ただ倒すだけでは芸が無いな! せっかくだからいろいろ使ってみるか!」
カタクラフトはどこからともなく機関銃を出し乱射!
「ギャウォォォボ!」「ベベベベベ!」「ゴンギギギギギ!」
ゾンビの群れが次々とはじけ飛ぶ! 血飛沫!
「ガッハッハ! 無粋ながらも楽しい武器よ!」
満足気に笑うカタクラフト! しかしその時爆散ゾンビをかき分け何者かが猛スピードで突っ込んできた!
「ガハハ何奴!」
カタクラフトは長槍を構え敵影に突き刺す!
「ザザザザ……」
しかし敵は体に穴が空いたにもかかわらず同じ速度て突っ込みカタクラフトを殴った!
「ガッハッハ片腹痛いわ! 実際に腹が痛いわけではなく比喩!」
重装鎧だから無傷!
「ザザザザ……」
敵は殴り続けるが無視してカタクラフトは観察した
「うむ、死体が乾燥し砂の体なわけか! 物理無効ときたもんだ!」
カタクラフトは青い剣を取り出した!
「これはどっかの魔王ギルドから奪ったウンディーネスラッシャーという武器で水属性付与効果をもつ一品よ!」
青い斬撃! 砂ゾンビは濡れて固まった!
「ザザ……」
「そしてお次に取り出したるはどっかのお宝武器、エナジードリル! こいつは面白い一品でな!」
動かない砂ゾンビに電気を散らすドリルを突き刺す! すると砂ゾンビには傷がつかず、代わりにその下の床に大穴が空いた!
「ザ……」
砂ゾンビが穴に落下すると、穴がひとりでに塞がった!
「うむ、これで封じたな! やはり持つべきものは武器よ! それもいっぱいのな!」
「おお……コラプションを倒しおったか……」
「今度は誰か!」
ゆっくりと何者かが歩いてきた……それは痩せて小柄な老人であり、ぼさぼさの紫色の長髪、しわの刻まれた縦長の顔は透明な丸い板で覆われ、黒い喪服の上に白衣を纏っている……
「儂は……魔王ネクロマンサー!」
「魔王ネクロマンサーだと! 誰だ!」
「死体を研究し幾星霜……みんなからはゾンビ博士としたわれておるよ!」
「俺様は魔王カタクラフト、武器泥棒よ! しかし……ゾンビの大量発生とゾンビ博士……ここにはなにか関係がありそうだ!」
「よくぞみやぶった! 儂こそ魔王ビザールの製作者じゃ!」
「なにっそういうことだったとは! 全く気づかなかったわ!」
「我が成果物の活躍を見ようとわざわざ人間世界まで訪れたのじゃが……我がコラプションを倒すとは良い被験サンプルを発見するとは幸運じゃ!」
「ガッハッハッハ! 食えないジジイよ!」
「フォフォフォ! ではデータ収集と參ろうかのぉ!
魔王ネクロマンサーは手に収まるサイズのミニ棺桶を放り投げた!
「いくのじゃ! 魔王サマエル!」
棺桶が巨大化し、中からゾンビ魔王が現れた!
「シャーシャシャシャ!」
死体に赤い蛇とぶどうの蔦が絡まっている魔王だ!
「ガッハッハッハ! 戦よぉー!」
戦闘が開始された!