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180話

時間は少しだけさかのぼり……暗い暗い……果ての果てまで黒い世界……

深い穴には白く光る階段が螺旋状に続いていく……

「こんなところに本当にあるのか?」

「アハハハ、心のなかで私に間違いはないよ」

二人の足音! 黒い服に包まれた少年と道化のようなドレスを身にまとう小柄な少女……偽ダルスと魔王ラプチャーだ

彼らは何をしているのか?

「ダルス本体を乗っ取って戦闘した時に止めやがって!」

「しかたないのね、脳細胞が全滅しちゃったから精神をここに避難させないとダメだったし、この体を君に破壊されちゃったら本当に死んじゃうからね」

「あん? 俺が負けるっていうのかよ!」

「アハアハハハ! それでこのダルスってのは自称天使の誰かさんが魔王となんらかの方法で作った子供なんだけどね、どーやら肉と魂を粘土みたいに混ぜて作ったみたいなんだよ」

ラプチャーは楽しそうに説明をする

「それでこんな楽しい精神世界なわけだけど……で、その材料をつなぎあわせた核部分があってね、巧妙に隠してるつもりみたいだけど私にはバレバレでさ」

偽ダルスは眼下に続く階段を苦々しく見る

「チッ……俺はここにずっといたのに気づかなかったぞ」

「そりゃ神の果実の影響だろうぜー、アレのパワーが膨大だから分からなかったのだーまぁ私は気づいてたけど初めから」

「ハッそりゃスゴイ!」

偽ダルスが言い捨てる……その時!

黒い世界に突如オーロラじみた波状の光! 金属をぶつけたような高音が鳴り、無数の人間サイズの水晶のようなものが現れた!

「ハハハハハよっぽど隠したいものがあるみたいだね、あなたの正体がわかるかもよ」

水晶のようなものは変形し人型になりクリスタルの腕から光線を発射!

「アアめんどくせぇ!」

偽ダルスが黒い闇の雷撃を放とうとしたが

「消えて」

ラプチャーそう口にした途端、オーロラじみたものとクリスタル兵が消滅した!

「なっ」

偽ダルスは一瞬なにが起きたかわからなかった!

「心の世界は私の思うままに作り変えられるんだよ、面白いでしょ?」

偽ダルスは答えなかった、この魔王にとって偽ダルスの存在自体を消すこともたやすいのであるという事実に恐怖せざるを得なかったのだ

「アハ、アハハハ、そんな怖がらないでよ、今のところは業務提携なんだから、ね?」

ラプチャーは相変わらず笑顔だ

「というかなかなか着かないし省略しよ! 過程と罠と施錠を削除!」

ラプチャーが声を出しただけで、空間がひび割れ、ガラスの割れるような音が響き、二人は真っ白い空間に居た……


「もう何も言わねぇ」

「さーぁ始まるよー」

瞬間、白い空間にぼんやりと景色が浮かび上がる……そこには薄暗い部屋、床には淡く光る魔法陣、その外周を炎の渦が巻いている

一人の女性と男性が居た

「あー、それでこれは?」

偽ダルスは諦めたように尋ねる

「記憶だよ、普通は親の記憶なんてないけどコレの製造が特殊だから記憶が残ってるのだぁー」

「というかお前口調を統一」

「アッほら話し始めたよ」

記憶の中の女性……美しい金色の髪とかで美人だが、それは天国の世界でダルス達に遭遇した彼の母親だ……姿は変わっていない

「天使族の私と魔王のあなたのパワーを合わせれば、十二神魔王に対抗できる子を生み出せるのよ」

「ああ、魔王軍の人間世界侵略を止めるにはそれしかない」

「アー、懐かしいな、このダルスの父魔王は十二神魔王が侵略するとか言ってたんだっけか?」

話を聞いて、偽ダルスは無表情に言う

「そーそー、あの人……魔王ウィザードが十二神を潰すための嘘だったわけだけどね」

そしてダルス両親が魔法陣の中に立った

「でははじめましょう……レッツ合体!」

二者から光の粒が流れだし魔法陣の中心に置かれた2つの花のようなものに集まり……人の形に!

「ウオオオオオ!」

ダルス父が唸る! 苦しそうだ!

「よし、完成ですよ……」

そして虹色の胎児が完成した! 高熱の蒸気を発するが、徐々に冷め、肌色の赤ん坊となった……

「オギャー! オギャー! ミルクが欲しいぜ!」

赤ん坊が叫ぶ!

「おいちょっとまてこれは嘘だろ!」

偽ダルスが叫ぶ!

「完成しました……大丈夫ですか?」

ダルス母がダルス父魔王に声をかける

「ガ……問題ない……」

大柄な魔王は地に膝をつき、苦しそうに答える

「ならば、ここでこの子の説明をさせていただきます……これは通常の魔王や人間より遥かに高い魔力量を扱うことが可能です」

ダルス母は平坦な口調で言う

「単純な魔法でも常人の数百倍の威力を発動できるでしょう、もっとも複雑な魔法に必要な知能の保証はできませんが」

「そこは今後の学習しだいか」

「ですね、その他の機能は大規模な霊的容量、丈夫な生命力、バックアップ機能、精神防衛機能、その他いろいろ」

その言葉の最中、偽ダルスの表情筋がピクリと動いた

「バックアップとは?」

ダルス父が聞く

「核を一つ余分に用意したことで、この子の中にもう一つの精神が生まれます……まず考えられない事態ですが、この子の精神、魂が破壊されてもバックアップがこの体を動かすことができます」

ダルス母は淡々と説明した

「……」

ダルス父、そして偽ダルスは無言になった……

「フフフ、ハハハ……そういうことだったんだね! 良かったね知れて! 私も嬉しいよ!」

ラプチャーが偽ダルスに嬉しそうに笑いかけた

「…………ふざけんなぁぁぁぁぁぁボケェェェェェェェェェェェll!」

激昂絶叫咆哮暴走!

偽ダルスから漆黒の雷のようなものが無数に放射される!

「何がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!バックアップだァァァァァァァァァァァァ! 俺は、俺はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「アハハハハハハハハハハハ!!」

ラプチャーは腹を抱えて笑い、黒い電撃は全く受け付けず弾かれる!

当然記憶の世界には一切干渉せず、映像は続く……ダルス父が口を開いた

「なぁ、メーテアー……一応自分の子供なのに冷たすぎないか?」

「フフ、そうかしらね……でも私は止まれません、もう手段を選べないのです……それはあなたも同じのはず」

「……そうだな、どの道我々が育てるわけではないのだから」

「ええ、この子は野に放ち、流れのままに局面を打破するでしょう……それがこの子の運命です」

「それも機能の一つか?」

女性は微笑を浮かべ答える

「さぁ、どうでしょうね?」

その時、空間が破裂し再び真っ白い世界に戻った!

「アアアアアアアア、なんだよ! アアアア!」

偽ダルスはなお叫んでいる!

「まさかここまで来る人間が来るなんてね」

不意に、女性の声が聞こえてきた……


「アアアアアアア、てめぇ!」

偽ダルスがその声の方を向くと、そこには先程まで話していた女性が立っていた

「どの面下げて出てきやがったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

偽ダルスの周囲に黒い炎、雷、風、水が出現し、黒い蛇の形を形成!

そして高速で女性に襲いかかる!

「フフ、親不孝ねぇ」

偽ダルスの攻撃は記憶の映像のようにすり抜けはせず、直撃した……しかし女にはまったくの傷を与えられていなかった

「やーめーとーきーなーダークダルス、あなたじゃ勝てないよ」

ラプチャーが場違いな笑顔で声をかける

「あんたは、ダルス母の心の一部をここに封じといたんだね」

「そうね、だいたいそれであっているわ、目的は侵入者の排除よ!」

女の背中からカラフルな水晶の翼が展開!

「消えて」

再びラプチャーがつぶやくと水晶の翼ごと女が破裂!

「……残念ね、下の世界の干渉など効かないわ」

万全の状態で女が再出現!

「ハハハ、面白いねっ! それじゃあなたは上の世界って言うのかな?」

「そうね、ここが一階ならわたしは二階の住人ってところかしら……これが上の力よ」

水晶の翼を振るうと、それだけで凄まじい破壊力の風圧!

「ウガァァァァァァァ!」

偽ダルスがズタズタになりながら吹き飛ぶ!

「アッハハハハ! なにこれー!」

ラプチャーが精神世界そのものを書き換えて攻撃を消去する!

「ふうん……膠着状態ね」

女はつまらなそうに目を細めた

「そうでもないんじゃないー」

「と、いうと?」

「その上の力というのはあなたの子供にも受け継がれてるんでしょ? つ・ま・りー」

ラプチャーが口元を緩めると同時に、その姿が消えた!

そしてぼとりと何者かが落ちてきた!

「グワーッなんだぜ!? 痛い!」

ダルスだ!

「ほう、私の息子を呼んだか」

「だっ誰だぜ! 前会ったっけ」

「敵だぁぁぁぁぁ……殺せぇ……」

地面を這って偽ダルスが唸った!

「なんだかよくわからいけどウオオオオ」

ダルスの全身が白い鎧に覆われ、虹色の光が走っている! そして背中から白い天使の翼が広がった!

「なんか元気すごいぜ!」

「おお……素晴らしい力……ここまで育ったならば……」

女は驚きと満足を顔に浮かべた

「魔法コマンドファイアウインドブリザード泥サンダーダークホーリー!」

魔法に呼応して炎や雷などの翼が形成! 計7枚の翼は数十メートルに巨大化し、エネルギーが満ちる!

「なんだよコイツは……なにが起きてやがる?」

余りのパワーに偽ダルスは怒りすら忘れ呆然とした

「うおー? なんだぜこの羽根! 鳥っぽいぜ」

「畜生何もわかってねぇこの馬鹿!」

その姿を見て、女はダルスに言う

「我が子よ! その力は上に向かう流れを破壊する力だ! 魔王ウィザードを贔屓する運命を破壊できるのはお前だけだ! さぁ、そして私を倒しさらに強くなれ!」

「とにかくくらえー! 翼インパクト!」

七枚の翼がゆっくりと女を包むと、一瞬激しい閃光! 爆発が起き、女は欠片も残さず消滅した……

「ウフフ……私は単なるセキュリティ用に力を1%ほどちぎって残しておいただけにすぎない……本物がまた会えることを楽しみにしているわ……」

白い世界が砕け散り、雑多な記憶で形成された本来の心の世界が出現した

「ぬー、結局なにがなんだか……うわーっ!?」

ダルスがヒュンと消え去った……その代わりに魔王ラプチャーが降ってきた……


「はーいただいまー、」

ちなみにラプチャーがダルスを乗っ取った際、魔法狩人リッカーがらみの話をしていた

「テメェ、言いたいことは山ほどあるが……主導権をそんな簡単に奪えるなら、俺に使わせろ!」

偽ダルスが吠える!

「そこまでは約束してないってー、それより私もそろそろ行っちゃうから最後に遊びでもしよーよ」

ラプチャーは笑って言う

「なめやがって……ア? お前の肉体は破壊されたんだろ? どこに行くってんだよ」

「んん、全ての私と同じ特性を持ってる魔王なら移転はできるんだよっ」

「ああ、奴隷魔王があんだけいりゃそりゃ居んのか……そんな悪趣味な能力の奴も」

「いや、そうじゃないよー」

ラプチャーは笑顔で否定した

「全ての魔王の特性を併せ持ってる魔王が居るのだ」

「誰だ、そいつは」

「世界初の魔王、私たちはシンギュラリティって呼んでるやつだよ」

魔王ウィザードの野望が動く……

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