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ここは人類最前線7 ~魔性争乱~  作者: 小林晴幸
魔境にただいま☆
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2.年末最後のお仕事

ははは…思いっきり時期がずれましたが!

作中はまだ年末です。

そしてまぁちゃんの正式な正装が…!


*以前書いた内容との矛盾があったので、一部説明を書き足しました。




 まぁちゃんにとっての、年末最後の大仕事!

 もうこの為に勇者様に彼岸を見せてまで大急ぎで帰ってきたと言っても過言ではありません。

 それは、『魔王様』であるまぁちゃんにしか出来ないこと。



  大 掃 除 です。



「よぉぉおおおおおっし、今年も綺麗にしてやらぁっ!!」

「ま、まぁ殿…何だかやけにテンション高いな」

「テンション上げねぇとやってらんねぇんだよ!」

 早朝から私の父にこってりお説教されたまぁちゃんは、ちょっとヤケでした。

 でもこれから待ち受ける大掃除への憂鬱な気持ちを振り払う為だとかで、考えてみれば毎年こんなんだったような気もします。


「その…リアンカ? まぁ殿のこの様子は一体………」

「まぁちゃんはこれから大掃除なんですよ。それが好きじゃないみたい」

「大掃除! 魔王が!?」

 わあ、勇者様が驚いてるー。

 まぁちゃんの本性知ってるだろうに、今更だよ。

「その、リアンカ…? 俺は魔境の常識にまだ疎いんだが…その、魔境では魔王が大掃除に参加するのは普通なのか…?」

「むしろまぁちゃんお一人の仕事ですよ?」

「まぁ殿、ひとり!? 魔王なのに!?」

 勇者様はいったい、何をそんなに驚いているんでしょう…?

 何故か頭を抱えて項垂れてしまった勇者様に、私は首を傾げます。

「私、何か変なこと言いましたかね?」

「その、まぁ殿はどこを大掃除するんだ…?」

「歴代魔王の墓場と歴代勇者の墓場ですが」

「普通の場所じゃなかった! というか、勇者の墓を掃除する魔王って!」

「なんか放っておくと変な煙が充満し始めるそうで、毎年年末に強制的にお清めするそうですよ」

「魔王がお清めってなんなんだよ!」

「こう……… ガ ッ と根こそぎ煙と変な気配を消滅させるそうです」

「予想以上に力技だな…! それ、お清めじゃないだろ、絶対!」

「あと魔物とかが異常発生したり、勘違い系の悪魔が一大コロニーを築いたり、うっかり目覚めちゃった暗黒系のナニかが巣を張ったりとか、ここは放置しておくとヤバいなって場所をみんなでピックアップして、一番ヤバい場所をまぁちゃんが直接出向いて綺麗に根ぜt…じゃない、『お掃除』するそうです」

「各所のデータを取り寄せておいて、掃除するのは一番ヤバいところだけなのか! というか、最後に根絶を言いなおした意味は!?」

「これから大掃除するって時なので、字面だけでもクリーンにしておきました」

「……………字面だけでも」

「ええ、お掃除に行った筈なのに、毎年帰ってくる頃にはまぁちゃんが酷い有様になっていて全然クリーンとは言えませんからね」

「…ひどい、ありさま」

「返り血、返り肉片その他でぐっちょぐちょ…」

「ストップ。わかった、それ以上は言わなくて良い」

「まあ、放っておいても自然淘汰されて目立ったナニかは気がついた頃には影も形も残さず消滅しているのが魔境の常ではありますけれど」

「相変わらず、激しいな…魔境。半年ぶりなのに、この急展開。いきなりすぎて心の準備が不安になってくる………色々と常識が揺さぶられそうだ」

「あれ、まだ欠片でも常識が残ってるんですか?」

「リアンカ…自分の発言をよく振り返ってみような? いま、物凄く酷いことを言ったからな?」

 私はまぁちゃんの『大掃除』の説明をしていただけなのですが…

 気付いた時には、勇者様が何やら物凄く深い溜息をついて遠くを見ていました。


 まぁちゃんの、『大掃除』。

 まあでも大掃除なんて言っていても、それにはただ魔境を綺麗にしようなんてボランティア精神に溢れる思惑は欠片もありません。

 その真意は、一種の『示威行為』です。

 

 常人では殲滅出来ないモノを、たった一日…いえそれよりも短い僅かな時間でこの世から欠片も残さず消滅させる。

 魔境でそれが出来るのは、僅かな実力者…その中でも凄まじい実力を誇る魔王を置いて他にはいません。

 時間をかければ出来ることでも、如何に短い時間で片付けるかと言われると、誰もが一日でそれを果たすのは無理だというでしょう。

 それをまぁちゃんだったら一時間か二時間ですよ! 一時間か二時間!

 

 そうやって、定期的に片鱗でも実力の一端を他に見せつける。

 それは魔王への求心力を高め、反発心を刈り取る為には必要な行為です。

 だって魔境には、ヤンチャ(笑)な方がごろごろいますから!

 魔族って『強さが正義!』みたいなところあるしね。

 舐められたが最後、皆さん血気盛んに立ち向かってくるでしょう。

 格上相手には喧嘩上等!が信条の魔族さん達ですから、舐めてなくてもそれなりに喧嘩は売ってきますが…『大掃除』をするとしないとじゃ、無謀な挑戦をする相手の数が違うんだって。

 圧倒的に力の開きがある相手との喧嘩は不幸に繋がりますからね。

 魔王であれば、それも興でしょうけれど…物には限度がありますし。

 ある程度、実力が近ければまぁちゃんだって楽しんで殴り合うでしょうけど。


 でも魔族は弱い者イジメは嫌いですから。

 強い者には喧嘩を挑み、弱い者は庇護っちゃうのが魔族だし。

 いくら下位の相手からの挑戦上等だとしても、まぁちゃんだってアリクイと蟻さん単体並に実力差のある相手が向かってきたら、困ってしまいます。

 なので、実力を弁えないお馬鹿さんが下手に挑戦してこないよう、振い落すためにも魔王の実力を知らしめる必要があるということみたいです。


 実際に、この『大掃除』による示威行為を考案した五千年くらい前の魔王様が『大掃除』を実行する前と後では無謀な挑戦者(と書いて、自殺志願者と呼ぶ)の数が圧倒的に違うとか。

 …うん、五千年前の魔王さんは、弱っちい相手に喧嘩を売ってこられるのが超☆絶☆面倒だったみたい。

 それ以来、魔王陛下の『大掃除』は恒例行事になったそうです。

 一応、力の誇示が目的なので凄く派手ですよ。

 年末の風物詩くらいの感覚で楽しみにしている人も多いんですよね。

 特に今年は、年明けすぐからバトルマニアの祭典(笑)が始まりますからね。

 戦闘狂でまぁちゃんへの挑戦を志す猛者たちが、魔王の実力の一端を目に焼き付けようとものすご~くウキウキワクワク、楽しみにしているんじゃないかな。


 ………というようなことを教えたら、勇者様が項垂れてしまいました。

「は、はは………そうか。圧倒的な実力差を見せつけられるんだな…」

「勇者様どんまい! 大丈夫、勇者様の心なら折れてもすぐに完全修復☆」

「折れることは既に前提なのか…っ」

 勇者様のメンタルなら、折れること確実だと私は睨んでいます。

 はっきり言ったつもりはありませんが、勇者様は手で顔を覆ってしまいました。

 そんな勇者様を目にしても、毎度のことなのでもう誰も気にしませんけど。

「ん? 勇者、今度はなんで落ち込んでんだ?」

「…と思ったら、ここに気にする人がいたよ」

「あ? どうした、リアンカ」

「ううん、なんでもないよ?」

 怪訝そうな顔をするまぁちゃんに、私はすかさず誤魔化し笑い。

 どうやら今まで『大掃除』の支度の為、ちょっと席を外してたみたい。

 だから勇者様が沈んでいる経緯がわからなかったんだと思う。

 まぁちゃんも勇者様に関してはとりあえず聞いてみたってだけだったのか、特に興味を長引かせる訳でもなく。

 私が特に何も言わないので問題なしと判断したみたいです。


「まぁ殿、その格好は…」

「ん?」

 あれ、気がついたら勇者様がまぁちゃんをじっと見ている?

 勇者様が顔を引き攣らせて、まぁちゃんを見ています。

 その目は、がっちりとまぁちゃんの全身に合わせられていて。

「ああ、まぁちゃんの格好がいつもと違うから気になったんですか?」

「というか………その、大分、いつもより…派手じゃないか?」

「いつもが派手じゃないとでも?」

「まあ、いつも派手だけど…」

「俺、そんなに派手かぁ…? いつもツートンカラーでシンプルじゃねーか」

「大体モノクロだもんね、まぁちゃん! 体色からして」

「体色言うなや…」

 まぁちゃんは常に全身真っ黒けですけど、微妙にひらっとしたローブやらマントやらを着用した上で肩が出ているという無防備なのか重装備なのかわからない格好をしています。

 人間さんの国々を見て回って気付きましたけど、この厚着と薄着を同時に行っているような格好は中々珍しい。

 まあ、まぁちゃんは魔王の略式正装の一番簡略化されたver.が普段着なので、その辺にそんなのがごろごろしてたらおかしいんだけど。

 でも略式正装、なので。

 さりげなく全身に宝石やら鎖やら刺繍やらが施されています。

 黒という目立たない色がメインなので、わかり難いけどね。

 でも見る人が見れば派手にも見えるんじゃないかな。

「いつもより、って言ったじゃないか」

「まあ、その感想は間違っちゃねーな」

「そうだね。まぁちゃんのこの恰好、正式な魔王の姿だし」

「!!?」

 あ、勇者様が固まった。


 まぁちゃんの、正式な姿。

 つまりは正装ですね。

 以前、勇者様の国の舞踏会に着ようと試みて止められた衣装ともまた違う衣装。

 アレはアレで正式な姿だし、戴冠式でも着た正装ですが…今の姿とは、含められた意味合いが異なります。

 以前見せてくれた格好は、どちらかというと典礼用。

 堅苦しい席で見栄えよく振舞う為の姿。

 今の姿はより武装としての意味合いを持ち…戦闘民族『魔族』の王としては此方の姿の方が魔王としてより正しい。

 どちらの衣装も最高位の意味づけがされた正装ですし、どちらも防御力がおかしなことになっている姿だけど…戦いの中に身を置いてこそ、魔王なのでしょう。

 …だけど不思議なことに武装用の正装の方がひらひらずるずるしている不思議。

 ………先代から授けられた衣装だから、まぁちゃんのご両親の趣味が反映されているせいですね……………うん、とっても似合うよ、まぁちゃん。

 

 さっきも言いましたけど、この『大掃除』は示威活動の一環ですからね。

 どうせだからとびきり派手に目立つようにやろうと、お祭り騒ぎ大好きな方々が張り切って下準備を整えたりします。

 魔王にもとびきり派手にという注文を付け、正式な姿を要求するという…魔境って命知らず多いよね☆

 代々の魔王もここで手を抜くと後々挑戦者が溢れて面倒だということは理解しているので、仕方なしに武装しているそうです。


 魔王の正装は、魔王にとって最強の戦闘衣と同義。

 それが戦闘用の正装となれば、有象無象の攻撃は掠りもせずに弾かれます。

 あまりに強力な魔法が数々かかっていたりしますし、仰々しい。

 元々この衣装は、戴冠式にて『魔王子』から『魔王』に位が上がった時、それまでとは『生まれ変わる』という意味合いを兼ねて先代魔王に授けられる姿です。

 ちなみにこの衣装を授けられる前に戴冠式で着用している衣装が、前に舞踏会で見せてくれたアレです。(→『ここは人類最前線6』149.みんなでおめかし?)

 戴冠式で魔王になった瞬間、先代が魔法でぶわぁぁっとこの姿に変身させて。

 それからお披露目という、華やかな光景とともに過去が思い起こされます。

 だけどまぁちゃんも魔王に即位した時以外は、毎年この『大掃除』の時くらいしか身に纏いません。

 とっても素敵な衣装だけど、諸事情あってこの姿、まぁちゃん嫌いだから…。

 つまり年に1度、『大掃除』の時のみ見られる姿!

 もうまぁちゃん専用のお掃除用作業着と言っても過言じゃないね!

 うん、無駄に綺羅綺羅しいのでとても掃除が目的には見えません。

 事前に掃除と聞いていた勇者様が疑問に思うのも当然かも。


「………大掃除の時しか、着ないのか」

「ええ、この時くらいしか見ませんね」

「普段からこんなずるずる、着るにしても鬱陶しいじゃねーか」

「まぁちゃん、自分の正装好きじゃないもんね」


 基本的に魔王の正装は即位の時か成人の際に、先代の魔王が用意します。

 例外的に子供の時に先代が突如亡くなり、幼くして即位するというパターンもありますが…無駄に頑丈な魔王一族では滅多にそんなことありません。

 まぁちゃんの曾お祖母ちゃんはそう(・・)だったみたいだけど。

 その時はその時で、みんなでデザインを決めたそうです。

 まあ、やっぱりそれは例外として。

 体のサイズが変わったり、破損して作りなおす必要が出てもデザインは先代魔王が決めたモノから変わりません。

 なので先代と次代の仲が悪かったりすると、デザインが凄いことに。


 まぁちゃんの場合は魔王位を継いだ十三歳の時に、まぁちゃんのご両親が用意したんだけど………うん、デザインは素敵だよ。デザイン自体は。

 流石ご両親だけあって、まぁちゃんに似合うものを理解しているというか…

 あの二人、センスは悪くないもんね。

 ………着る側の好みに、頓着してくれないだけで。


 まぁちゃんは、心底嫌そうな半眼で言い放ちました。

「まあそもそも? 絶対に着なきゃいけねぇ時でもないと着たくねーし」

 だって女みてぇじゃねえか、と。

 目的の為なら手段を問わず、女装すらも時に厭わない魔王様。

 そんな彼が、嫌そうな顔をしているのは…ご両親が用意したという事実に複雑な気分を抱くからでしょうか。それとも単に女装でもないのに微妙に女性的な印象の漂う衣装が嫌なのでしょうか。

 きっちりと男用とは言い切れないデザインが…

 自分の姿を見下ろして、まぁちゃんは物憂げな溜息を吐きました。


 まぁちゃんの、正式な武装。

 それが初めて披露された時は、誰もが「まさか」と驚愕しました。

 授けられた衣装の基本はローブタイプです。基本は。

 魔族さん達は鎧で防御を固めるより、魔法の装飾品で防具を固めるし。

 そもそも正装なので、武骨さより華美具合が先に立つというか…

 ……………うん、華美過ぎるんだよね。


 略式正装は背の半ばから下をマントが覆っていました。

 しかし正式なはずのこの姿になると、何故かマントが消えます。

 …代わりに、違うものが背を覆っています。

 代替わりの際、先代が戴冠式の中で次の魔王の魔力に合わせて作り替えた、銀色の王冠の下からひらりと広がるモノ。


  ヴ ェ ー ル 、です。

 

 そしてローブタイプの衣装が災いして…その、なんというか。

 ……………うん、女性の衣装でも不思議じゃないデザイン。

 

 元々まぁちゃんは男性的過ぎる姿はしてないけれど。

 でもやっぱり骨格やら何やらはきっちり男の人で。

 女装をするという時も迷わず笑いを取りに行ったくらい潔いけれど。

 即位時、当時十三歳。

 今より小さくて細身で、繊細な美貌を誇っていた美少年時代。

 ………今でも目に焼き付いて、覚えています。だって美しかったもん。

 即位式典の時の、まぁちゃん初の正装お披露目………。


 完全に美少女でした。


 どっからどう見ても、美少女以外の何物でもありませんでした。

 それも危険な魅力の、眩し過ぎて直視できない系の美少女です。


 第二次成長期が到来しつつあったけど、まだまだ片鱗しか見えなくて。

 男として成長しきる前の儚く華奢な美少年が、あら不思議。

 ご両親も悪気はなく、純粋に自分達が着せたい方向性で似合うものを選んだんでしょうけれど………叔父さんも叔母さんもやり過ぎだよ。

 あの二人…どっちもボケなんだよね。天然の。


 あまりの危うい魅力に、背徳感溢れる色気まで漂っちゃって。 

 あの時は私も幼くて、そこまでは理解していませんでしたけどね!

 あの時、まぁちゃんから目を逸らした人は沢山いました。

 野郎共は軒並みノックアウトされて、現実を前に苦悩に悶えていたそうな。

 うん、見てはいけないモノを見たというか…自分の罪深さにおののいて懺悔する人が続出したって聞きます。

 いったい何に罪深さを感じたのやら………。

 そして頭の腐ったお姉様方は大喜びで先代夫婦を絶賛していました。


 幼い私は無邪気に「わあ、まぁちゃん綺麗!」と思ったくらい。

 でもね、本人に言っちゃったんです。

 ――「まぁちゃん、お姫様みたい!」………と。

 あの瞬間の、まぁちゃんの顔は今でも忘れられません。

 赤ん坊の頃から一緒にいますが…なんか、初めて見る顔をしていました。

 声変わり前だったし、ボーイソプラノで違和感なく『お姫様』だったんだもん!

 ちなみにその後、せっちゃんも何か追撃していました。

 あんなに打ちのめされたまぁちゃん、あの時以外に見た覚えはありません。


 どうやら事前に自分が遠巻きにする人達からどんな感想を持たれているのか、勘付いていたらしいまぁちゃん。

 まあ、普通に鏡を見れば自分でも気付きますよね。

 そして私とせっちゃんの追撃が見事にクリティカルを弾き出しちゃったから…


 まぁちゃんは、完全完璧に自分の正装に苦手意識を持つに至りました。


 どこから見ても男性(でも中性的)に成長した今となっては、女装とまでは見えないのでそこまで忌避していないようですが…

 パッと見、女性的な印象を受けるのは確かで。

 まぁちゃんの身長が170㎝超えるまでは、頑なに着替えを拒否していたような記憶があります。

 うん、無理もないよね…。

 複雑な少年の心は、こうしてずたぼろになりながら大人に近づくのでしょう。



 ………というような逸話を思い出したので勇者様に説明してみたら、珍しく勇者様が心底同情するような目でまぁちゃんを見ました。

 まぁちゃんは…遠い目をしていたよ。

「あの後、まぁちゃんが先代魔王をぼこぼこにしようとして大変だったって、りっちゃんが」

「それは、仕方ないだろうな…」

「それ以来、何だかんだと理由付けてのらりくらりとご夫婦そろって逃亡(りょこう)三昧なんだよね」

「そんな理由で姿が見えなかったのか!?」

(たま)に帰ってきても、まぁちゃんが暇になって報復に行く頃合いになると姿が消えていたり」

「…ったく。あいつ等、復讐くらいさせろってんだ」

「息子に真剣に復讐の機会を狙われている夫婦、か……先代魔王、なんだよな?」

「ええ、そうですよ。私の叔父叔母でもあります」

「………リアンカの親戚かぁ」

 ある意味、とっても魔境の住人らしい夫婦だよね?

 あの自由奔放ぶりはちょっと見習いたいものがあります。


 そう思ってうんうんと頷く、私の隣で。

 勇者様がぼそっと「リアンカはもう充分自由だと思う」と呟きました。





魔王の王冠

 過去の魔王が屈服させた魔神の封じられた宝石がいくつも付いている。

 冠の色は銀で、宝石は黒や紅が多め。



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