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朝ーー
今日はテスト受けてさっさと帰るか。
リビングに降りてみると、机の上に朝ご飯と置き手紙らしきものが置いてあった。
私は置き手紙を手にとる。
ーーレノンへーー
急な用事ができたので、隣町まで行ってきます。昼頃には帰ると思うから、待っててね。
朝ご飯ちゃんと食べるんだぞー?
ーーお父さんよりーー
「急な用事か…。」
私は朝ご飯をいつもより早くたいらげ、タンスの奥においやられていた制服に着替える。
準備ができたと同時に玄関から声がする。
「レノンー、今日はテストだから来るんでしょー?早く行くよー。」
「ハイハイ、行けばいいんでしょ行けば。」
久しぶりに制服を着て学校に向かう。正直ダルい…。
「ねぇ、昨日渡したの読んでくれた?」
「ん?あぁ、これか?なかなか面白かったぞ?www特にここの落書きとかwww」
セレナの絵のところを指差してみせる。
「あれ!?消したと思ったのに!!?」
「wwwにしてもお前絵下手クソだなwwおぐふぅっ!!」
鳩尾を蹴られた…。超いてぇ……。
セレナはよほど恥ずかしかったのか、顔を真っ赤にしていた。
「そういえばさ、あれまだ魔王倒されてないけど続きはどうなるんだ?」
「えっ!?あ、あぁあれ?実はまだ考えてないんだーww」
「なんだよ続き気になるのに~。」
私はそれをセレナに返す。
「楽しみにしてるからな。」
「うん!!続き頑張るよ!!」
私とセレナは並んで校門に向かった。
「やっと終わりか…。」
やっと5教科終わった。正直簡単すぎて退屈だったな…。
やはりここでは私に学べることは一つも無いようだ。
改めて再認識しながら窓の外を眺めていた。
「ウォーカー?ちょっと話があるんだが。」
後ろから誰かに呼ばれた。振り返ってみると、なんだ先生か。
「質問なんだがお前は大学とか行く気あるのか?」
唐突だな。しかし私の答えは一つだ。
「すいません、あんまり考えてないです。」
「そうか…。いやな、お前ももう高校三年だからな、進路を聞いとこうと思ったんだがww」
私は進学に興味はない。どうせ学べることなんか一つもないのだから、わざわざ義務教育終わってまで学校に通ったが正直無駄だったし、これからは独学で父のように研究したいと思っているので大学に行く気はない。
「レノンー?どうしたの?」
「ん?あぁ、なんでもないぞwwwそれでは先生さようなら。」
私は先生に軽く頭をさげセレナと帰路につく。
「はぁ~…。テストもうボロボロだよぉ~。どうせレノンは余裕だったんでしょ?」
「フッ、もちろんだwww満点しか取る自信無いwww」
「レノンは頭良くていいよね…ハァ。」
「あんなの簡単だろwww」
いつもと同じ帰り道、いつもと同じ色の空、いつもと同じセレナの笑顔、なに一つ変わらない…とこの時は私も思っていた。
あのサイレンを聴くまでは…。
私とセレナの目の前を、真っ赤な消防車が横切っていった。
「うわっ!?危ないなぁ~火事かな…?」
私はその時異変に気づいた。
遠くに黒い煙が見えた、が、問題はそれが何かではなくそれが見えた方角ーー
セレナも気づいた。
「ねぇ…あっちって私達の家の方だよねぇ…」
「セレナ!!急ぐぞ!!」
私は気がついたら走りだしていた。セレナの腕を掴んで、ひたすら私達の家の方角にまっすぐ走っていた。
そして、辿りついた先にはーー、
真っ赤に燃える家と、それを我が先にと押し寄せる野次馬と、先程私達の目の前を横切っていった消防車。
「あ…あぁ……」
すべてが真っ赤に染まるなか、セレナの顔は血の気が引いてみるみる青白くなっていく。
燃えていたのはーー
父が待つハズの私の家だった。