第5話 選ばれし者の証
どれくらい時間が過ぎただろうか。考え込む者、だだ唖然として立ち尽くす者・・・・
だがいつまでもそうはしていられない。
「どうして過去へなんか来ちゃったのかしら?なんとか元の時間に戻れる方法はないの?」
皆が押し黙ったまま時間だけが経過して行く中でルーチェは縋るようにルドルフに聞いた。
「どんな力が作用したのかは分からないが、ここへ来る前と同じ状況が作り出されれば可能性はあるかも・・・」
ルドルフもずっと元に戻る方法を思索していたらしく、ようやく一つの可能性を導き出した。
「同じ状況って?あの鏡が光り出す前?」
「そうだよ。あの時それぞれ何をしていたか思い出そう。なにかキーワードがあるはずだ。」
「私はただ泣いていただけだし・・・」
そう言いながらルーチェはアルクとケイト達の方向に目を向けた。
「何をしてたかと申しましても私は別になにも・・・・・ただケイトさんを見ていただけですが。」
『そうよね。ただぼーっと突っ立って見とれてただけね。私はそんな2人を見てたわ。』
アルクの言葉にミーアが付け加えた。
ばかな奴だと呆れたルドルフだったが、よく考えたら自分もルーチェをただ見ていただけの同じ状態だった事に気づいて言葉に詰った。
「私はこの書籍の裏表紙に書いてあった文字を読んでいただけで・・・・
もしかしてこれを書いた人の名前かと思ったのだけど、違ったみたい。」
「そうですよね。私達はこれといって何も・・・・」
ケイトの言葉にアルクは大きく頷きながら同意する。
「古代語なので分かる単語しか読めないけど・・・アダブラ・・カム・・スライズ・・・イエーネ・・・
選ばれし者の証・・・龍の力・・・鏡の・・・・望みが・・・なんだかまるで呪文のようで何のことかさっばり分からないわ。」
ケイトがぶつぶつと呟いく。
同時にルドルフとアルクが振り向いた。
「今なんと言いました?ケイトさん?」
「えっ・・・と・・・さっきアルクさんから渡されたこの書籍に書いてあった古代語の意味なんだけど?
私はところどころの単語の意味しかわからないけど、そんな事が書いてあったの。」
ルドルフはケイトの持つ書籍をひったくる様にして取り上げた。
そしてパラパラとページをめくる。
「これはどうやら日記のようだな。女性が書いたものらしいが・・・・」
「ルド、すごいわ。古代語が読めるなんて!」
「少しは嗜みがあるが・・複雑なのは無理かな。」
ルーチェの尊敬の眼差しに照れるように頭を掻いたルドルフだった。
そんな場合ではないぞと俺はちょっと思った。
「陛下。そこには何と書かれているのですか?」
「まさか!私がその呪文のような文字をよんだからじゃないでしょうね?」
アルクとケイトが焦ってルドルフの持つ書籍を覗き込む。
「いや。それだけではなさそうだ。ここに書かれてあるのはなにか・・・
あわてて書いた走り書きのような・・・メモのようなものかな。
龍の力・・というのは意味不明だが、鏡というのはさっきの鏡の事だろう。
選ばれし者の証をその鏡にかざして望みを唱えよ・・・・という意味の事が書いてある。」
ルドルフは書籍の文字を指で辿りながら意味を説明していく。
「そういえば鏡・・・・!鏡は・・・えっと・・・あ・・ほらあそこに!」
キョロキョロと周りを見回したルーチェは部屋の一番目立つ壁にあの鏡が掛けられているのを発見して指差した。
「選ばれし者の証って何?それがわからないと鏡にかざせないわよ。」
ケイトは冷静に周りを見渡してそれらしきものを探そうとした。
『でもあの時、鏡に近づいたのはタオだけよ。』 上空からすべてを見渡していたサリーが言う。
『俺?俺は鏡になんか興味はないぞ!あれは指輪を拾っただけだ。
たまたま鏡の近くに転がっただけで・・・・あ・・そういえばちらっと映った俺の姿はなかなかのもんだったな。』
『あんたの姿なんかどーでもいいわよ!それより指輪よ!タオは指輪を咥えてたのよ。』
『指輪?そーいえばキラッて光ったような・・・・』
サリーの指摘で俺は指輪がキラリと光った事を思いだした。
「あの指輪は母の形見なんだが・・・・代々の王妃に送られてきたものだ。
王妃の証ともなっているが、台の方は何度か作りかえられてはいるが石はかなり古いものだ。」
ルドルフの言葉にルーチェは驚いた。
「ルドのお母様の形見・・・・そんな大切な物を私ったら床に転がしてしまうなんて・・・・」
ルーチェはひどく後悔した。
「そうすると選ばれし者の証というのは王妃の証と言う事なんでしょうか?」
アルクが確認するように聞く。
「タオ!指輪は?指輪はどうしたの?」
ルーチェはあわててしゃがみこんで俺を揺さぶった。
『あ・・あの・・・指輪は・・・ルーチェがなかなか受け取ってくれなかったからさ・・・
そしたらあの眩しい光で・・・驚いて口を開けたらさ・・・・ゴックンて・・・・』
「飲んじゃったのっ?!」
全員の視線を浴びて俺は身の縮まる思いだった。
本当に・・・すまねぇ・・・・・