1/71
千の秋 0
時は、仁大皇帝の御世。
東は東疎の地から、西は間奈留の果てまでをひとつとした、大神来という国があった。
多くの戦乱を経て統一されたその国は、その頃の名残で各町は大きな壁で囲まれ、人々はその中で生活をしていた。
田畑までをも内包する巨大な町は、外敵を完全に遮断し、長い篭城にも耐えられるように作られているため、よその町へ行く用がない限り出る必要はない。
一生を、町の中で終える者も数多くいる。
他の町へ行く時は、役所へその旨を申請し、許可証をもらわねばならない。
ならず者を、町の中に入れないようにするためである。
では、町の外に住んでいる者はいないのか。
答えは──「いる」、だ。
山や海での生活を生業とする者。
よその地から、移民してきた者。
町から、何らかの理由で許可証なしで出て行った者。
彼らは、「外」の人間として、厳密に「内」とは違う法体系の中に置かれることとなる。
これは、そんな町の「外」に住む者の物語。