翠と橙(みどりとゆず) vol.009 橙の部屋のインターホンを押す巽。
アパートの自分の部屋に戻った橙。
そして、凡そその3時間後に、隣の自分の部屋には戻らずに、
まっすぐ橙の部屋のインターホンを押す巽。
「はい、おかえり~~、巽~~。」
「ほい。新しくメニューに加わったドリンクだ。」
「へぇ~~。美味しそう~~。」
テーブルの上で、そのドリンクを飲んで橙、
「うんうん。いい感じ。美味しい~~。夏場には良い良い。」
「だろ。…で、オジサンの会社、どんな感じ…???お昼前に俺もちょっと、デリバリーで顔…出したけど…。」
「あっ。来てたんだ~~。ぷふ~~。仕事に夢中で、気付かなかった。」
「…の、ようで~~。背中に、女性の人、ピッタリと…張り付いてたから。」
「うんうん。あの人が、あのフロアのチーフ。逢坂翠さん。」
「あい…さか…、みどり…。」
「うん。人に逢う。坂道の坂。そして翡翠の翠の字を書いて、逢坂翠さん。」
「へぇ~~。珍しいね~。翡翠の翠で、みどりって…。」
「かかかか。そんな事言ったら、私だって言われたよ。橙と書いて、ゆずって、珍しい~~って。」
その声に巽、
「あっ。そっか。」
「ふん。巽だって、初め、私の名前、読めなかったし…。はっきり、このは…とう…さん…。な~~んて、言ったもん。」
「はぁ~~???だっけ…???」
「そうだよ、かかかか。」
そしてふたり一緒にテレビを観て、やがて橙は…、巽の左肩に、カックン。
「おっととと。寝ちまったか。かかか。二日目、そりゃ疲れてるよな~~。」
静かに、そして優しく橙の体を持ち上げて、そのままベッドに。
タオルケットを掛けて、
「はは。明日も頑張れ、おやすみ。」
テレビのリモコンをオフにして、
「さて。寝よか~~。」
橙が起きないように、静かにドアを開けて、静かにドアを閉める巽。
「う~~っわ。あっちぃ~~。熱帯夜だな~~こりゃ。」
「雅樂さ~~ん。じゃ、私、上がりま~~す。」
絃。
「おぅ~~。お疲れ~~。」
そして人差し指を上に。顔も上を向いて雅樂。
絃、
「うん。顔見て帰る~~。」
「あいよ。気ぃ付けてな。」
「絃ちゃん、お疲れ~~。」
客人。
「あ~~い。蓮さん、あんまり飲み過ぎないでよ~~。明日も仕事でしょ~~。」
「あぃあぃ。心得ておりますです。かかかかか。」
絃、
「さてと。」
2階に上がって、ドアを開けて、
「はぃ。お疲れ様~~。」
「ふん。お疲れ~~。ビール飲む~~???」
「私は…、あっち。」
「かかかか。ハイボールね~~。」
そして冷蔵庫から、小さ目の缶のハイボールを絃に。
「かんぱ~~い。」
「…で、どんな感じ…???ユッキから、LINE…???」
そんな絃の声に、翠、腕組みしながら、その両肘をテーブルに。
そして顔を腕組みに納めるようにして絃の顔を見て、口を一文字に…、
「ふん…???」
「な~によ~。その顔…???」
そして今度は両手で絃の両頬を…。
「絃~~。かっわいいね~~。」
絃、
「かかか。だ~か~ら~~。」




