翠と橙(みどりとゆず) vol.007 尋音、「うそ。東大…。」
尋音、
「うそ。東大…。」
その途端、翠、顔を緩ませ、
「…東大…。」
そして、頭の中で、
「…そりゃ、教えたら、覚えるわな~~。」
尋音、
「ゆ…ず…ちゃん。東大…だったんだ…。」
変顔で…。
橙、照れながら、
「あ…。はい…。」
「でも…、凄いでしょ、ボス…、いや…。ブランドマネージャーの奥さんの…。立派な…、お宅…。」
最後まで万葉に言わせないで橙、両手をひらひらとさせて、
「いえいえ。とんでもない。私…、今、アパート…住んでます。」
その声に、翠、万美、尋音、
「え―――――――――っ!!!!」
尋音、
「ア…アパート…???…って…。」
「はい。ちっちゃな…アパートに住んでます。」
万美、
「いや…。いやいやいや。…その…。なんで…???」
「ん~~。…なんでって…言われても…困るんだけど…。なんか…。自分ひとりの力で…やってみたくって…。…だから…。ここ、アンジェリーナも、親にも、親戚にも内緒で…。」
尋音、
「いやいやいや。…内緒って…言っても、分かるじゃん、すぐに…。」
「うん。すぐ、バレた。」
翠、
「ぶっ。」
万美、
「かかかか。」
「両親からは…なんて…???」
「おまえの好きなように…。って…。お姉ちゃんたちはもう…、完璧に独り立ちして…。結婚もして、家庭持ってるし…。」
「ふん。」
「でも、でもでも、オジサンが、こう言ったの。手加減は…しない。やってみろ…って…。」
万美、
「ふ~~ん。…で…。」
翠、
「入社試験…受けて~~。見事…合格…???」
「途中入社には…なりましたけど…。」
「まっ。3ヶ月…遅れの…。」
万美。
橙、ペロリと舌を出して…。
名古屋の某デパートの前で、千慧と薫朗。
千慧、
「行くよ、ヤング。」
「はい。」
アンジェリーナは…シェアを拡大しようとしていた。
これから向かおうとしているデパート。
名前は、「ロンド(輪舞曲)」旧名を、「豊橋デパート」と言う。
昭和の半ばから百貨店業界に進出。順調に業績を上げ、世に言う、「バブル景気」から、
経営者を交代している。世代交代である。
その後、バブル崩壊後もあらゆる手段で、その危機を乗り越え、そしてまた、
その後に押し寄せてきた、「リーマンショック」でも、一旦は、急激に業績は下がったが、
すぐに盛り返し、今や全国展開で、その経営手腕は、ビジネス誌でも賑わせている。
その経営者が現在の豊橋真奈美58歳である。
当然の事ながら、経営者たる所以の経営者。
その傘下の役員すら、一筋縄では…行かない。
因みに、このデパートとの提携を交渉し、どのくらいの企業が、それを果たせなかったか…。
デパートの中をじっくりと歩きながら眺める千慧と薫朗。
これはビジネスとは言え、デパートにいる客に不審を思わせる恰好は…、と言う事で、
ふたりの恰好は、ビジネスを感じさせない恰好で、
千慧は白地にオレンジの花柄の前開きロングワンピース。
薫朗も、千慧のアレンジでのカジュアルの服装。
もちろん、この事は、これから向かう、「ロンド(輪舞曲)」側でも、了承済でもある。




