翠と橙(みどりとゆず) vol.051 「そうだ~~。あれ…ゆずからだった~~。」
「そういえば…。」
薫郎。
完璧に思い出したあの時。
中学時代に、学校の昇降口で。ある女子生徒から小さな箱と紙袋。
紙袋の中を見てみると、黄色と薄い青色のストライプのマフラー。
薫郎、通り過ぎた女性の後ろ姿を見て、
「あれって…。ゆずからだった~~。そうだ、そうだ。引っ越しの前の日、学校で。いきなりだったから、全く、何が何だか分かんなかった。」
まだ、その女性の後ろ姿を追っていた薫郎。
あの時もらった小さな箱の中身。チョコレートだった。そして紙袋の中のマフラー。
結局は1回か2回しか…使っていなかった。
その理由は…、その頃、周りにも、そういうタイプのマフラーを首に巻いていた学生は、
いなかったのである。
それよりなにより、そのマフラーはいつの間にか、母親が首に巻いて使っていたという。
薫郎、テーブルに右肘を着いて、
「そうだ~~。あれ…ゆずからだった~~。」
懐かしい余韻に浸りながら、ふと薫郎、
「えっ…???…じゃ、ゆず…、あの時…???」
「お待たせしました。」
ウェイトレスが目の前にアイスコーヒーを。
「あ。ありがとう~。」
「ごゆっくりとどうぞ。」
薫郎に一礼をして後ろを振り返ろうとするウェイトレス。
そのウェイトレスの顔を見て薫郎、思わず、
「ぶっ。」
その音に気付いたウェイトレス、
「なにか…???」
薫郎、慌てて、
「あ~~。いやいや。別に…はい。なんでも、ありがとう~~。」
「失礼いたします。」
ウェイトレスがテーブルを離れていく。
薫郎、
「うそだろ。マジで、そっくり。いるもんだねぇ~~。ゆずそっくりじゃねぇか~~。」
そしておもむろに腕時計を…。
「あと…50分。」
そしてさっきの女性が座っているらしき席を…。
すると、薫郎、いきなり目をパチクリ。
「いやいやいやいやいや。おぃおぃおぃおぃ。うそうそうそうそ。」
いきなり椅子から立ち上がり、体が勝手に動いていた。そしてその女性の席に。
女性の前に座っている男性。いきなり自分たちの席に現れた男性を見て、
「…ん…???…何か…???」
薫郎、いきなり一礼をして、
「いきなりで申し訳ありません。お世話になっております。株式会社アンジェリーナ、ジェシカの杉浦薫郎と申します。豊崎社長、その節は、誠にありがとうございました。」
そうなのだった。麦わら帽子にサングラスの女性。
総合デパート「ロンド(輪舞曲)」の社長、豊崎真奈美だったのである。
一礼をして頭を上げた男性を見て豊崎真奈美、
「あら~~。ふふ。杉浦君。こんにちは。」
そして、男性の隣に座っている女性も、
「は~~い。ふふ。お疲れ~~。杉浦君。」
男性は初めて見る顔だが、その男性の隣に座っているのが、
ロンド社長、豊崎真奈美の秘書、三笠忍。
ロンドに初めて営業をした際に、社長の豊崎まで親切丁寧にガイドを務めてくたれ女性である。
薫郎、
「わぁ~~。三笠さん。」
男性、
「社長…???」
真奈美、
「ふふ。ジェシカの山根千慧の相棒。杉浦薫郎、通称、ユッキ。ね、忍~~。」
その真奈美の声に忍、
「はい。」
薫郎、
「えっ…???えぇぇぇぇ。どうして…、僕の…???」
真奈美、
「か~~んたん。うちの秘書課、ヤマチとユッキ、一目見て、大好きになったんだって~~。…で、あれから、いろいろと調べたんだって~~。」
その声に薫郎、
「えっ…???え~~~???」




