翠と橙(みどりとゆず) vol.038 翠の心の中で、何か疼くもの…。
ほんの1時間の出来事ではあった。
けれども、この1時間の出来事は病院内では大問題。
屋上から降りて病室に向かう翠を見掛けた数人の看護師、
「逢坂さん、どこ行ってたの!!!」
その瞬間、翠、
「へっ…???」
看護師、別の看護師に、
「先生に逢坂さん、いたって、報告して。」
「はい。」
翠、目をパチクリ。
看護師、
「もぅ~~。病室にいなくって…。び~~っくり~~。」
そして、苦笑いしながら、
「もぅ~~。勘弁して。あなた、普通の体じゃないんですから…。命は…とりとめたと言っても…。もぅ~~。」
病室に向かいながら翠、
「ごめん…なさい…。」
そして、それからは翠も、医師の許可をもらって、ユウマと言う男性と、晴れの時は屋上、
そして雨の時は外が見える場所で会話を楽しむようになっていた。
既に2週間も経過すれば、男性は車椅子から松葉杖。
そして、その頃から、翠の心の中で、何か疼くものを感じていた。
ベッドの中でも、横になっていると、妙に胸が痛んでくる。そして、涙が出てくる。
そして、男性といる時には、何故か物凄い笑顔になっている自分…。
何なのかはまだ…気付かなかったが…。
当然ではあるが、男性も、そんな女性と一緒の時は確実にはしゃいでいた。
そして、遂に、男性と会っているとき、楽しい。
けれども、何故か鼓動が高鳴りながら話を、しているのだった。
そして、そんな自分の思いが、ようやく、何かと自分でも気づき始めた時…。
屋上に行っても、その男性がいない。
そして巡視に来た看護師に、
「ねぇ…、蛯原さん…???…ユウマ…くん…???」
看護師、メモを取りながら、
「ふ~~ん。退院したよ。」
「えっ???彼…。退院したんだ。」
看護師、
「ふん。2日前に。あら…、逢坂さんには…、何も…???」
そんな看護師に翠、
「うん。」
そして、数分後、いきなり布団を頭まですっぽりと。
「もう!!!なんで言ってくれなかったのよ。」
そして涙がとめどもなく流れて…。
「もう…逢えないじゃん。好きだったのに。もう逢えないじゃん。もう!!!!!!!もぅ――――――――――っ!!!!」
「みど…???みど…???」
万美から声を掛けられて翠、
「へっ…???」
尋音、
「どうしたのよ、何か、考えていたような…。」
「もしかして…、みど…。巽君って、あの…ユウマ…って…???」
翠、そんな万美に、
「いやいやいやいや。そんな…、タイミング良く…。だって、あれから10年…経ってんだよ…。」
にこやかにスタッフにもてなしている柴乃と巽。
そんな中で呉羽、
「ねね、菫さん。ユッキと、ゆずちゃん、中学の同級生なんだって。」
その声が聞こえていきなり菫の隣の惇哉が、
「ぶっ!!!うそ。ほんと…、コバ…???」
呉羽、
「うん。自己紹介で、いきなりその事実が判明。」
菫、素っ頓狂な顔をして、
「まっ!!!」
惇哉、
「ふ~~ん。ユッキとゆずがね~~。中学の同級生…。」
そして、
「ははは。何とも…偶然と言うか、奇遇なんて…、あるもんだね~~。」




