翠と橙(みどりとゆず) vol.036 いきなり、「おい。何やってんだ、おまえ!!!」
スタッフたち、
「私にも、私にも。」
数秒で持ってきた名刺がなくなる。
「尋、ナイス。ご名答。遊びに馬だ。」
翠。
「へぇ~~。こういう字か~~。」
スタッフたち。
呉羽、千慧、惇哉、
「ふんふん。」
その瞬間、翠、
「えっ!!!もしかして…。これって…ユウマ…って…???」
尋音と自分の間に立っている巽に、翠。
「あっ、はい。高校時代には、ユウマって…。呼ばれてましたけど…。」
翠、いきなり鼓動が、ドクン。
「ユウマ…。」
その瞬間、今度は万美、
「えっ…???ユウマ…。…って…。みど!!!」
巽、
「あの…。どうか…され…???」
最後まで巽に言わせないで翠、
「あ~~。いえいえ。なんでも…。はい。名刺…ありがとうございます。」
巽、ふたりの女性にお辞儀をして、
「では、どうぞ、ごゆっくり。」
テラスの入り口に向かって歩き、そして一旦振り向き一礼をして降りて行く巽。
それまでの数秒、翠の記憶が一気に、フィード・バック。
そして翠、頭の中で、
「…ユウマ…。」
ある男性と一緒の時期が頭の中に甦る翠。
10年前…。東京の某病院の緊急救命室に搬送された2人の男女。
ひとりは40代後半の男性。そしてもうひとりが女子高生。
学校のスポーツウェアを着ている。
既に男性の方は病院に到着した時点で、既に手の施しようもない状態に…。
けれども女子高生の方は、重傷ではあったが、
何とか、医師達の懸命な処置で命はとりとめた。
昏睡状態の女子高生。母親が寝ずの番で見守り、
時折、女子高生の病室に顔を出していたのが宗像雅樂。
この女子高生が、逢坂翠である。
昏睡状態から2日後、ようやく目が覚めた翠。母親と抱き合いながら。
けれども、その時に、運転していた父親を、
「父さんは…???母さん、父さん。運転してて。交差点で、いきなり前に車…。」
翠の、その言葉に母親は悲しく、そして首を振って。
その時、翠の顔が一変、
「へっ…。」
いきなり虚脱感。
「うそ…。うそ…。そんな…。うそ。」
そしていきなり鼓動が高鳴り、涙。そして、
「いや――――――――――――っ!!!!!」
その声に近くの看護師が駆け付けた。そして医師を呼び…。
やがて、
「お父さんは…、残念な事になった。私からは、これ以上の事は言えない。でも、君はこれから、お父さんの分まで、生きなきゃ。とにかく、助かって良かった。先生も、安心したよ。」
翠の目線で翠に話し掛ける医師。
ベッドの向こうの翠の母親は、ただただ涙を流して。
けれども、まだ翠は放心状態。
雅樂が時折病室に顔を出して、事故の事を保険会社と相談していた。
それから3日後、父親を失ったショック。そして、それが自分の責任と感じての翠。
放心状態のままで屋上に来ていた。
ずるずると引き摺るスリッパ。そして体がいきなり何かにぶつかって止まった。
屋上の手摺である。
そして何を考えたのか翠、その手摺を乗り越えようとしていた。
その時、いきなり、
「おい。何やってんだ、おまえ!!!」
そしてすぐに背中の病衣を引っ張られた。




