翠と橙(みどりとゆず) vol.002 「多分、びっくりすると思うんだけど…。」
隣の部屋から出て、自分の席に向かうひとりの女性。
アパレルメーカー、株式会社アンジェリーナ。
そのブランドのひとつ、「ジェシカ」のブランドリーダー、矢萩呉羽。
自分の後ろを見て、にこにこと笑顔で…。
凡そ20名ほどのスタッフのフロア。男女の比率は8対2。圧倒的…女性優位…。
薄いカーディガンを羽織って、サラリと掛けたパーマのヘアを少しだけ揺らした感じで…。
ロングのオールプリーツのスカートも、呉羽が立ち止まると…、サラリと揺れる。
「みんな、おはよ~~。」
両手を叩いて、
「はいはい。」
スタッフたちが、呉羽の左隣の女性に一気に視線を…。
「いきなりでごめんね~~。」
その言葉にスタッフ一同、
「…???」
「多分、びっくりすると思うんだけど…。」
そう言いながら呉羽、隣の女性に向けて、両手を…。
「ジェシカに新しいメンバー。誕生~~。」
その瞬間スタッフ連、
「え~~~。」
「はっ…???」
「お~~っと~~。」
「早っ。」
「もぅ~決まった~~???速攻だね~~。」
「や~るな~~。」
万美。
「や~るな~~って…、万美、あんた…。」
翠。
「ふん。なんとなく…予想はね~~。」
「ささささ。」
そう言いながら、自分と同じ身長のその女性の両肩に両手を掛けて、
「紹介します。木葉橙さん。若干、22歳。」
スタッフたち、
「わお。」
「平均年齢…、下がった…。かかかか。」
「イェ~~イ。」
「このは…ゆず…???」
腕組みしながら翠。
「ふん。」
「八重樫ちゃんが…。壽退社しちゃったから…。その欠員で…、彼女が…。と、言う訳~~。」
その女性を見ながらスタッフたち。
呉羽、
「ねね、自己紹介…いいかな~~。」
そんな声に橙、
「木葉橙と言います。よろしくお願いします。」
ペコリとお辞儀をして。
「ありがと。…と言う事で…。」
呉羽、すぐに、まっすぐ翠を見て、
「みど、木葉さん、お願い。」
その一言で万美、
「ぷっ。」
呉羽、
「彼女が、ここの…、フロアチーフ。分からない事は…彼女、逢坂翠に聞いて。」
思わず唇を尖らせて翠、
「ひとことも…、聞いてないんだけど…。」
にっこりと笑顔で橙を翠の方に向かわせる呉羽。
何故かしら、右手を振って。
万美、
「コバちゃんに手を振られりゃ、しゃあないかぁ~~、みど~~。かかかか。」
翠、
「た~~っく。一言くらい、話してくれても、いいだろうよ~~。」
静かな足取りで翠の傍に、橙。
「このはゆずです。お願い…します。」
翠、困ったような顔をして、
「よろしく…。」
万美、
「顔…引き攣ってないかい…???かかかかか。」
「うるさい。」
休憩ラウンジで、翠、
「え―――――――――っ!!!!」
「声、おっきぃって。あんたはもぅ~~。」
呉羽。
そして万美、
「ふ~~ん。」




