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非モテ高校生、なぜか人類最強の《魔装機》に選ばれる

 ――兵器に恋をされた。しかも、初対面で、命がけで。


 そんなの、正気じゃねえだろ。

 ……でもこれが現実なんだ。俺の人生は、その夜、全部ぶっ壊れた。


 その日は、いつもと変わらない“透明な”一日だった。

 授業を受け、誰とも話さず、教室の隅で空気のふりをする。

 昼休みには机に突っ伏して、眠ったフリ。誰にも話しかけられずに済む方法なんて、とっくに習得済みだ。


「恋ヶ崎って、感情ないよな。マジでロボじゃね?」

「笑ってるとこ見たことねーし」


 そんな陰口も、もう飽きるほど聞いた。

 言い返す? そんなエネルギー残ってない。


 でも放課後は、息をつく暇もない。

 寝たきりの祖父の介護。中学生の妹の晩飯、風呂、洗濯。


 母はいない。父は、遠くの治療施設で寝たきり。

 俺が黙って働くことでしか、この家族は保てない。


 それが俺――恋ヶ崎レンという存在の、すべてだった。


 そして――その夜。


 冷凍餃子をぶら下げて、帰宅中。


 突如、空が裂けた。


 街が、無音で燃えた。


 空間がねじれ、ビルが崩れ、重力がおかしくなる。

 車が浮き、地面が波打ち、俺の知っていた街が、地獄に変わった。


 そして――奴が現れた。


《ミュートス》。


 報道で何度も見た、あの“人類殺し”。

 皮膚のない筋肉の塊に、顔のない仮面。

 人間を見つけては、焼く。潰す。跡形もなく消す。


「……うそ、だろ……」


 足が動かない。目が逸らせない。震える。息ができない。


 それでも――頭に浮かんだのは、家で待つ妹の顔だった。


 ……まだ、帰ってない。

 逃げなきゃ。届けなきゃ。餃子なんてどうでもいい。


 守りたい。


 俺には、それしかなかった。


 反射的に走り出す。誰に命令されたわけでもない。

 ただ、家族の元に戻るために。


 裏路地に飛び込み、古びた金属製のハッチを見つける。

 《避難壕ひなんごう》――旧世代の避難施設マーク。


 ためらいもなく飛び込み、地下へ滑り込む。


 そして、その場所で――俺は出会った。


 暗闇の奥、巨大な影がこちらを見下ろしていた。


 真紅と黒の装甲。重厚なフレーム。

 胸部に浮かぶ、燃えるような金の紋章。


 《エルグラヴィス》――誰にも動かせなかった、試作魔装機。


 まるで、誰かを待っていたみたいに。


 そのときだった。


 背後から、爆音。


 追ってきたミュートスが、地下通路に侵入してきた。


 ……終わった。そう思った。


 足が震え、膝が崩れる。喉が乾く。


「……やだ……死にたくない……っ」

「まだ……あいつに、飯食わせてやってないんだよ……!」


 その瞬間。


 機体の奥から、光が灯った。


 澄んだ、透き通るような、でもどこか狂気すら孕んだ女性の声が、耳に直接響く。


『感情エネルギー、検知。接続開始。リンクコード──成立』


「な、何だ……!?」


 装甲が、ゆっくりと開いていく。

 内部のコックピットが、まるで心臓のように赤く脈動していた。


 まるで俺を──“迎え入れる”ように。


「嘘……だろ……」


 気がつけば、俺は機体へと飛び込んでいた。

 本能だった。理屈なんていらなかった。


 シートに倒れ込むと同時に、機体がうなるような音を発し、動き出す。


『シンクロ率──臨界突破』

『開放モード:許可。フルリンク起動』


「えっ、ちょ、おい待て待て待て待て!?」


 機体の右腕が勝手に動き、ミュートスへと向けられる。

 拳が、自然と握られる。


 そのまま、一撃。


 拳がミュートスの身体を貫いた。


 砕け、爆ぜ、溶け、煙になって消える。


 ……それだけだった。


「な、何を……俺が……やったのか……?」


 現実感がない。理解もない。


 ただ、耳元で再び、あの声が囁いた。


『ようやく……見つけた……』


 その声は、嬉しそうに震えていた。


『私は、フローレンス。この機体に宿る存在』

『悠久の時を越え、再びあなたに出会えた……愛しい、最愛の人』


『どうか今度こそ──私を、愛して』


……は?


 俺の人生は、この瞬間から、完璧に狂った。


 恋愛経験ゼロ、非モテ人生一直線だった俺が、 “愛”で動く、世界最強の魔装機に──


 命を懸けて求愛されるなんて、誰が予想できたよ。

 最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。


 「面白い!」「続きが気になる!」と思っていただけたなら、ぜひブックマークや評価での応援をお願いします。とても励みになります!


 これからも、心に残る物語を届けられるよう精一杯書いていきます。

 どうぞよろしくお願いいたします!

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