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ー第0話:終焉ー

 2XXX年、第三次世界大戦はその幕を下ろそうとしていた。


 空を裂き、咆哮を上げながら海を越えて飛来する通常ミサイルや核ミサイル。その一発が日本の本土に炸裂するたび、大地が揺れ、空が赤く染まる。



ーー日本諜報機関・八咫烏本部


 巨大な鉄の円卓を囲むように、十一人の人影が鉄の椅子に身を預けていた。四つ星(よつぼし)大黒天星(おおぐろてんぼし)箒星(ほうきぼし)室星(むろぼし)影星(かげぼし)諸星(もろぼし)佐田星(さたぼし)迷い星(まよいぼし)壱ノ星(いちのぼし)菊乃星(きくのぼし)赤星(せきぼし)ーー


いずれも天星者と呼ばれる、かつて神に最も近い力を宿した者たち。


「.....我々天星者(てんせいしゃ)も残りはこれだけか」


 影星の低く沈んだ声が、本部の重苦しい空気をさらに深くする。だが誰も応えない。応える言葉が、もう残されていないのだ。


 まもなく政府からの緊急通信が届いた。内容は、絶望的なものであった。敵国からの大規模な攻勢により、日本国家はもはや存続不可能ーーゆえに保有する全核兵器、およそ六千発を、敵対国家へ発射したというのだ。そのうち五百発の超小型核は、国内にも向けられた。本土を蹂躙する敵兵を討つために。


 日本は長らく核を忌み、持つことを拒んできた。しかし、核攻撃、物資の遮断、飢餓、そして侵略によって、その信念は崩れ去った。


 核の代わりの戦力と言われた、天星者は、一人で敵兵三十万に匹敵するが、十一人の天星者では本土全てを防衛することはできず、今や戦場を離れ、本部に集うのみ。


「六千発、ですか。地球は、もう終わりましたな」


 箒星がかすれた声で呟く。その言葉にも、誰も動揺を見せない。敗北の事実が、心を沈黙させていた。


 次々と本土に落ちるミサイル。その爆音に、八咫烏本部が軋みを上げる。


 その瞬間、四つ星が静かに自らの天星剣、玲瓏(れいろう)の天星剣の刃を腹へと向ける。


「...四つ星、切腹はやめておけ」


 鋭い眼差しを向けて、大黒天星が言う。


「なぜですか。我々は民を守れなかった......責任は果たすべきです」


「お前の命は貴重だ。虹のオーラ、そしてその美しい姿、国宝級だ。それに、天星剣に選ばれた数少ない特別な人間の血を絶やしてはならん。悪いがお前にはカプセルに入ってもらう。.....我々も、共にな」


うなずく四つ星。誰も異を唱えなかった。


カプセル、それは長期睡眠タイムカプセル。人間を睡眠状態にして保存する装置だ。現在、カプセルは国家機密シェルターにあり、すでに生き残った全ての国民が入っている。このカプセルは提供者不明のものであり日本だけではなく世界各国に提供されている。


「八咫烏のメンバーよ、残念な結果にはなってしまったが我々日本は必ず復活する。.....では......各自、天星剣との契約を切り、封印せよ。我々もシェルターへ向かおう」(大黒天星)


天星者十一人の天星剣の形状は日本刀であったが、契約解除後は洋剣の形状となり、元の形となった。天星剣は八咫烏本部の奥深くへと封印され、天星者たちは国家機密シェルターに向かって静かに歩みを進める。


やがて本部は、敵国の通常ミサイルによって完全に破壊された。


人類が放った核、世界で合計13100発。その代償はあまりに大きく、地球は氷に覆われ核の冬へと突入し、文明は音もなく崩壊した。

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