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廃都と竜人の姫④


闇色の空が、まるで息を潜めるかのように沈黙をまとっていた。

風すら凪ぎ、音のない静寂が支配する世界。


空気は重く、どこかぬめりを帯びた邪気が肌に纏わりつく。


かつて繁栄を誇ったであろう街路は今、朽ちた石畳と崩れかけた建物が並ぶ無人の廃都と化し、その奥には──蠢く黒霧があった。


それは生き物のように脈打ち、這い、街の心臓部へと続く道を覆っていた。


その暗き街路を、四つの影が静かに進んでいく。


先頭に立つのは、異形の威光をまとう青年──クトゥル。


外見こそ若者の姿をしているが、その雰囲気はまるで神を思わせる不可侵の存在感を放っていた。


だが、彼の瞳はただまっすぐ前だけを見据えているわけではない。


視線の奥で、眼球だけが絶えず左右に動き、周囲を警戒している。


「この地が……エトゥル・ラーか…(気のせいか…空気が重い…ような気がするっ)」


クトゥルが発した低く威厳ある言葉に続いて、真紅の瞳がわずかに細められる。


「闇の気配が強まって来てますね…」


柔らかな声でそう呟いたのは、エリザベート。


漆黒と深紅が混じるローブが肩で揺れ、その立ち姿には真祖の吸血鬼としての凛とした威圧感が滲む。


その気配は、ただの警戒というより、狩人が獲物を見極める静かな殺意に近い。


彼女の視線は、決して曇りを知らぬまま、霧の奥を見つめていた。


「グル…死ノ匂イダ」


ルドラヴェールが、低い唸り声を漏らす。


その姿は虎に酷似した魔獣。厚みのある筋肉をまとった四肢で、しなやかに歩みながら、鼻先をひくつかせていた。


二本の牙が薄闇の中で光を放ち、鋭い眼光はまるで死の感触を捉えるかのように闇の奥を射抜いている。


光沢を帯びた長い尾が、ゆらゆらと左右に揺れ動いていた。


「ここに、村を呪った元凶がいるんですね…」


小さく、しかし凛とした声が静寂を破る。


ティファーだ。


いつでも抜けるように腰の剣へ手を添え、足取りを止めることなく歩き続ける姿には、戦場を幾度となく渡ってきた者の気迫があった。


瞳の奥には揺るがぬ信念──守るべきもののために刃を振るう覚悟が宿っている。


そして、誰よりも堂々と進み続けていたのは――


混沌の邪神と呼ばれし存在、クトゥルだった。


胸を張り、腕を組み、霧の向こうを見据える姿はまさに神秘の体現。


ただ歩いているだけで世界の理すら歪めるかのような威風堂々たる気配を放っていた。


……しかし、その内心はというと。


「(やば……トイレに行っとけば…って、俺って排尿機能なかったわ…)」


恐怖。


圧倒的恐怖。


黒霧が絡みつくようなこの地で、涼しい顔をして歩いているその裏側では、彼の心はすでに半泣き状態だった。


「(こ、こんな不気味な場所、普通行かないでしょ!?マジで怖いんだけど!?)」


表の仮面は完全無欠の邪神。


だがその実、心の声は叫び続ける中二病の高校生──それが、クトゥルだった。


無音の街路を進みながら、クトゥルは立ち止まり、わざとらしいまでに堂々とした足取りで前へ出た。


その目には虚勢とも取れる光が宿り、彼は自らを鼓舞するように、胸を張って口を開いた。


「ククク……この黒き霧、まさしく我の眠りを妨げんとする愚者どもの足掻きよ。忌まわしき者よ、今こそ現れるがいい……!」


まるで未来を見通す預言者のように、威風堂々と宣言する──その瞬間だった。


ギィ……ギィィ……


低く、重たく、どこか遠くから伝わってくる金属の軋み。


霧の奥、沈黙に沈んでいた黒煙の彼方から、その音は徐々に近づいてきた。


錆びついた鉄が擦れる、乾いた不吉な旋律。


そして、霧の帳が割れる。


そこに現れたのは、堂々たる鎧の戦士たち。


しかしその輝きはとうに失われ、甲冑の継ぎ目には苔が生え、鎖帷子は風化していた。

彼らの兜の奥に見える双眸は赤く濁り、もはや理性のかけらもない。


闇に支配された亡者──それは騎士の姿を借りた、ただの殺戮の器。


「ふっ…来たか(本当に来なくていいからっ!?)」


クトゥルの口元には勝ち誇った笑みが浮かぶが、その内心は冷や汗の嵐。

予想通りというか、予言が本当に成就したことに内心で動揺を隠せない。

だが、その葛藤は決して表には出さない──彼は見た目は邪神なのだから。


「……闇に呑まれた騎士ども、か」


ティファーの声が静かに空気を震わせる。


剣の柄に添えた手にはすでに力が込められており、抜刀は一瞬のうちに可能な構え。


彼女の瞳には、敵の数や動き、その配置すら読み取る冷静な戦士の視線が宿っていた。


「殺気、アリ……ヤルカ?」


ルドラヴェールが鼻先を持ち上げ、低く唸る。


その虎のような逞しい肢体が身構え、地面に張りつくように重心を落とす。


尾がゆらりと揺れ、獲物を狩る準備は万全だった。


「そうね…大したことないし、放置しても良いかもしれないけど…」


エリザベートはまるで面倒事に関わるのを躊躇うように、わずかに肩をすくめた。


彼女の混沌のローブが風にそよぎ、その裾が灰に染まった石畳を優しく撫でる。


真紅の瞳がふと下がり、冷ややかな視線が亡者の騎士たちを見下ろした。


「…邪魔ね…早めに駆除しましょう」


その一言が引き金となった。


ギィ、ともう一度、騎士の一人が足を踏み出す音が鳴る。


彼らはゆっくりと剣を抜いた。黒く鈍い刃に、霧の闇がまとわりつく。


その動きには人間らしさの欠片もなく、命じられるままに敵を滅する――それだけに最適化された、死の人形。


沈黙と闇が支配する、崩れた石畳と風化した建造物に囲まれた廃都の一角。


空は雲に覆われ、月光さえも差し込まず、世界はまるで息を潜めているかのようだった。


風は止まり、音は失われ、ただ重く淀んだ空気だけが漂っていた。

その静寂の中心に、黒の騎士たちは佇んでいた。


かつての栄光の残滓を纏う漆黒の甲冑は、時の流れに抗うかのように輝きを残し、その全身からは冷たい殺気が溢れていた。


背に負った大剣は、まるで世界そのものを断ち切るような存在感を放ち、赤く濁った瞳が闇の中で淡く光る。


その眼前で、ルドラヴェールが唸りを上げた。


巨大な獣の体躯。


風にそよぐ深紅の体毛は、血潮を思わせる妖しい艶を放ち、脚から尾にかけてのしなやかな筋肉は、見る者に畏怖を刻む。


瞳は冷えた翡翠のように澄み、迷いも怯えも一切見せることなく、騎士の存在を正面から捉えていた。


「――来イ」


獣の喉奥から絞り出されるような低音が響く。


誰に向けたものでもない、だが確かに挑戦の意を含んだその一言とともに、ルドラヴェールは大地を鳴らすように一歩を踏み出した。


その瞬間――


黒の騎士が動いた。


ギィ、と錆びついた音を立て、黒き鎧が躍る。


剣が振り上げられ、次の瞬間には矢のような速度で突進してくる。


硬質な靴音が廃都の空気を裂き、迫り来る剣閃は夜の帳すらも切り裂かんと煌めいた。


だが。


「グゥオォォ――ッ!!」


ルドラヴェールの咆哮が天地を震わせる。


咄嗟に身を沈めたその姿は、まるで稲妻の如く地を駆ける。


巨体とは思えぬ軽やかさで横へと滑り込む。


黒の騎士の剣がルドラヴェールの肩を掠めようとしたが、深紅の毛並みはただの飾りではない。

魔獣としての進化がもたらした防御の結晶、それは鋼すらも拒絶する。


刃が触れた瞬間、火花が弾けた。


金属を金床へ叩きつけたような音が鳴り響き、黒の騎士の剣が逸れる。


「……フン!」


低く吐き捨てるような声とともに、ルドラヴェールは跳躍した。


脚力を活かして一気に間合いを詰め、開いた胸部へと牙を突き立てる。


ギギギィ――!


金属を裂く、耳をつんざく音。

黒の甲冑がひしゃげ、中から瘴気を帯びた蒼黒い液体が噴き出す。


中身が人か、あるいはすでに人ではないのか。そんな疑問を飲み込むように、ルドラヴェールは躊躇なく牙をさらに深く突き刺した。


黒の騎士が膝をついた。鎧の肩当てが砕け散り、ぶくぶくと泡立つ瘴気がその場に溢れ始める。


だが、ルドラヴェールは追撃を止めなかった。


前足の爪で大地を強く踏み込み、押し出すように牙の根元までをねじ込む。


その巨体が持つ膂力と牙の貫通力が、甲冑の奥に潜む存在すらも容赦なく引き裂いていく。


それはまるで――神話の中に語られる魔獣が、神の使徒を喰らうかのような光景だった。


そして、ついに。


「……邪魔者、排除完了。」


低く、重い声が空気を貫いた。


紅い毛並みが風に揺れ、散った黒の甲冑が音もなく崩れ落ちる。血と瘴気と静寂が、再び廃都を包み込んでいく。


ルドラヴェールの瞳は、なおも前を睨み据えていた。


戦いは、まだ終わってはいないと告げるかのように――。


破壊された石柱と瓦礫の間を、冷たい風が吹き抜け、彼女のポニーテールをふわりと揺らす。


わずかにプラチナブロンドの髪が煌めきを放った。


その瞳には、躊躇のない鋭さが宿っている。

――戦う覚悟を、彼女はすでに決めていた。


「……行くぞっ」


短く息を吐きながら、ティファーは腰に携えた愛剣の柄に手をかけた。


長年の戦いを共にしたそれは、細身ながら精緻な造りをしており、鍔には幾多の戦闘の痕跡が刻まれていた。


月の欠片のような光が刃に触れ、銀色の弧を描く。


彼女は静かに構えを取った。

片足を軽く引き、剣の切っ先でわずかに空気を切り裂くように動かす。


視線の先には黒の騎士―。

石のように硬質な外殻を持つそれは、鈍重な足取りでティファーへと近づいてくる。


闇に染まったその姿には、かつての人間性は微塵も感じられない。


「『――オーバークレスト』ッ!」


彼女の声が静寂を切り裂いた刹那、足元に淡い碧光が広がった。


魔法陣が煌き、ティファーの身体に活力が宿る。


筋肉の軋む音すら感じさせず、彼女は風のような軽やかさで一歩を踏み出す。


間合いは一瞬で詰まった。

そのまま、指先から解き放たれる風――


「『ウィンドカッター!』」


空気が刃となって駆け抜ける。


斬撃のように真っ直ぐ飛んだ風は、黒の騎士の胸甲の隙間を正確に穿ち、内部を貫いた。


騎士の動きが一瞬鈍る。


その一拍の間こそが、ティファーの真骨頂だった。


「――はあぁっ!!」


跳ねるように踏み込み、剣閃が一条の光を描く。

まずは右足――刹那、敵の重心が崩れた。


そこを見逃さず、斜め下から斬り上げる一撃が装甲を裂き、錆びた金属音が周囲に響いた。

その動きには、流れるような美しさがあった。


だが、その美しさに見惚れている暇はない。ティファーはすでに次の一撃へと動いていた。


連撃。


斬撃が舞う。まるで戦場に咲く風の花のように。


その一振りごとに、騎士の外殻が割れ、奥に潜んだ黒い肉体が露わになっていく。


彼女の動きは、ただの小柄な少女のものではなかった。

そこには明確な戦闘技術と、戦い続ける者だけが持つ覚悟があった。


「……まだまだっっ」


自らを奮い立たせるような小さな声と共に、ティファーは再び剣を振るう。


剣先に巻き起こる風が、地を薙ぎ、次の一撃の胎動を告げる。

背中を撫でる風が、そっと彼女の決意を称えるように吹き抜けた。


そしてついに、黒の騎士が崩れ落ちる。


粉塵が舞い、瓦礫の隙間にその亡骸が沈んだとき――

ティファーはひとつ、深く息を吐き、静かに剣を鞘へと納めた。


赤黒のローブが冷たい風にそよぎ、そのたびに仄かな魔の波動が空間を揺らす。


――エリザベート=ド=アビスローゼ。


その立ち姿は、戦場にあってなお絵画のように優雅だった。

月光の代わりに、廃墟の裂け目から差し込む青白い光が彼女の顔立ちを照らし、妖艶な陰影を刻む。


そのローブは、まるで意志を持つかのように緩やかにうねり、彼女の白磁のような肌を柔らかく撫でていた。


そして、ふいに。


「……ふふ」


口元に浮かべた微笑と共に、衣の質感が変わった。


それは静かな変化だったが、見る者の心を確実に捉える。


赤と黒の絹が交錯し、彼女の身体を流れるように包み込み、ローブは戦いのためのドレスへと変貌を遂げる。


深紅と漆黒が織り成す布は、肩から流れ、腰を抱くように揺れる。


布の動きには、まるで人の肉のような生々しさがあり、彼女の一挙手一投足を引き立てるかのようだった。


それはもはや衣ではない。彼女の意志を体現する魔の羽衣だった。


廃都の空気が張り詰める。


エリザベートは一歩も動かず、ただ静かに右手を上げる。


その指先が、目の前の敵――鋼鉄の甲冑に身を包んだ闇の騎士を、冷ややかに指し示した。


「――『サンダーボルト』」


声は低く、しかし揺るがぬ意思を宿していた。


刹那、空が引き裂かれた。


指先から放たれた雷撃が閃光となって直線を描き、地響きと共に闇の騎士の頭上を打ち抜いた。


雷の槍が鋼を穿ち、閃光が兜の奥を白く染める。

その瞬間、衝撃に耐えきれず、黒の騎士は膝をついた。


稲妻の痕跡が焦げた鉄に刻まれ、煙がくすぶる。


それでも、エリザベートは一歩も動かない。


赤い瞳は舞台の主のように堂々と敵を見下ろし、その佇まいからは一切の焦燥も、激情も感じられなかった。


まるで全てを予定された演目のひとつとして受け止めているかのように。


そんな中――


やや離れた崩れた石段の上で、腕を組みながら立つ影があった。

風に揺れる黒衣と、仮面のような表情。


「……うむ。我の従者たちよ……よき戦いぶりだ」


その男、クトゥルはあくまで余裕たっぷりの口調で戦況を眺めていた。


赤黒のドレスを纏い雷を操るエリザベート、

そしてその背後では、猛虎の如き威容の獣――ルドラヴェールが咆哮を上げ、もう一体の騎士に飛びかかっている。


その牙は鋼をも砕き、振り下ろす前脚は地を裂く。


さらに、風と剣を駆使して騎士を切り裂くティファー。


彼女の動きには、若さと未熟さの奥に秘められた確固たる意志があり、戦場に風を呼び込んでいた。


その三者三様の戦いぶりは、まさに華麗で、そして苛烈だった。


「(……うんうん、みんな強い……助かるっ!……)」


クトゥルは内心で安堵しきっていた。


どうやら今回も、自分が前線に出る必要はなさそうだ。

唯一の攻撃方法である「トリニティー・ディザスター」の出番もない――これは喜ばしいことだった。




―――



エリザベート、ルドラヴェール、ティファーは次々と黒の騎士を屠っていく。


だが、倒しても倒しても、終わりが見えなかった。


廃都の広場に満ちる闇はなおも濃く、闇の鎧に身を包んだ騎士たちは、まるで地の底から無限に湧き出るかのように現れ続けていた。


黒の巨躯が軋み、剣戟の音が空気を裂く中――


「(全然減らないなっ!?)」


心の中で叫ぶクトゥルの背後から、憂いを帯びた声が届いた。


「クトゥル様…どうしいたしましょう…?」


エリザベート=ド=アビスローゼが静かに問いかけてくる。


その赤い瞳は、あくまで冷静だが――そこには一抹の困惑と、そして一縷の希望が宿っていた。


騎士たちは虫のように湧き、空を覆うほどの数で押し寄せてくる。


そんな異様な光景を前にしても、彼女はただ一人、救世の一手をクトゥルに期待していた。


「…え、俺が何かしないとダメ…!?)」


(なんで俺のほう見るの!?)という心の声を押し殺しながら、クトゥルはゆっくりと周囲を見回す。


ティファーも、ルドラヴェールも、そしてエリザベートも――皆が、信仰にも似た眼差しで彼を見つめていた。


「(とりあえず……ハッタリだっ!)」


決意を固め、クトゥルは一歩前へと進み出る。その足取りは重く、しかし堂々と――まさに神の威光を体現するかのように。


次の瞬間、彼の人間の姿が揺らめき始めた。


肉体は球体のように滑らかに変質し、表面を脈打つようなうねりが走る。


やがてその身体のあちこちに、血のように赤い眼が無数に開き、何本もの異形の触手が這い出した。


禍々しい、邪神の降臨――まさにそのものだった。


「クク……我が威光の前には塵に等しい。我が言葉に耳を傾け、この場から消えるが良い(神様っ!お願いっ!俺の言うこと聞いてくれっ!)」


表情は不敵、言葉も堂々。


だがその心は、まるでテスト勉強をサボった学生のような悲鳴に満ちていた。

――それでも。


黒の騎士たちが、ピタリと動きを止めた。


ギィ、と軋む音を最後に、すべての騎士が剣を下げ、ゆっくりと首を垂れる。


「……騎士たちが止まった…?」


「グル…」


「流石、クトゥル様っ…これこそ、神の威光ですっ!」


ティファーが驚きに目を見開き、虎のような巨大な魔獣――ルドラヴェールが、低く唸るように鼻を鳴らす。


そして、エリザベートが恍惚とした声で讃えた。


「(な、何か良く分からないけど、通じたっ!)」


戸惑いと安堵の入り混じった感情に包まれながら、クトゥルは自身の変貌した姿を保ったまま、前方を見据える。


静まり返る戦場のただなか――

黒き騎士たちは、まるで神の啓示に従う者のように、左右へと分かれた。

その間に道ができる。まっすぐに伸びるその先に、重厚な祭壇が姿を現した。


古代の神殿を思わせるその祭壇は、半ば朽ちた石材で作られていたが、円周には幾何学的な魔法陣が刻まれており、光を淡く放っていた。


そして、その中心に――ひとりの少女が立っていた。


風に舞う灰青の髪。


腰から伸びる竜の尾が、しなやかに揺れる。


黒の騎士に囲まれながらも、彼女の表情は穏やかで、どこか懐かしい微笑みをたたえていた。


「ようこそ、混沌の邪神よ…わっちは、アーヴァ=ンシュタウンフェンじゃ。」


その声は静かに、だが確かにこの場を支配する力を持って響いた。


そして、この運命の出会いが、

世界を揺るがす、大いなる誤解の幕開けとなることを――

この時、まだ誰も知らなかった。



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