4 悪魔のはね
悪魔のはね
さちこに数学の勉強を教えてもらうようになって、(ふくろうはさちこに褒めてもらいたいから、とってもとっても頑張りました)だんだんとふくろうは算数、数学が好きになってきました。
それは問題が今までよりもちゃんと解けるようになったり、算数のテストの点数が百点になったりしたこともあったけど、もっと、普通に、数学が面白いと思うようになりました。(あるいは、もしかしたらふくろうにはもともと数学を面白いと感じられるような才能が眠っていたのかもしれません)
数学とは空間の広がりを持つのだと教えてもらって、そのイメージをつかむことができました。
(いろんな現象を、とても抽象的に数学的に空想することができるようになったのです)
そのことをさちこにいうと、さちこはにっこりと笑って、「きみは私の魔法にかかったんだね。もうわたし(数学)から逃げられないよ」とくっくっくっと、とっても楽しそうな顔で笑われてしまいました。
そして、それから数日後に、ふくろうとさちこはデートをすることになったのでした。(遊びにおいでよ、と誘ってくれたのは、さちこでした)
初めてのデートの行先はさちこのお家でした。
ふくろうはおしゃれをして(さちこはお坊ちゃん服のふくろうを見て、可愛いと言ってくれました)さちこのお家にお邪魔をしました。(さちこのお家はとても普通の、どこにでもあるような二階建てのお家でした)
「いらっしゃい。悪魔の家にようこそ」と言ってお出迎えをしてくれたさちこの背中には小さな悪魔の(作りものの)はねが生えていました。
「まあ、いらっしゃい。あなたが噂の天使ね。どうぞゆっくりしていって」
とびっくりするくらいに綺麗なさちこのお母さんがそう言って、ふくろうの頭を優しく撫でてくれました。
ふくろうはとても緊張してしまって、楽しかったのだけど、あんまりよくその日のことは覚えていませんでした。(さちこの楽しそうな笑顔だけが、ふくろうの中にはありました)
でも、(さちこの笑顔のほかに)数学をしたことと、その時間が、とても楽しかったことは覚えていました。
その日から、ふくろうとさちこはお互いのことを、ふくちゃん、さっちゃん、って呼ぶようになりました。
おやつにはさちこのお母さんが用意してくれていていた、あつあつのたい焼きを二人で一個ずつ食べました。
たい焼きはふくろうの大好物でした。(そのことをさちこに話したことがあって、さちこはそのことをちゃんと覚えていてくれたのでした)
「ふくちゃんはコスプレをしていなくても、本物の天使みたいだね」
と、さちこは美味しそうにたい焼きを頬張るふくろうの顔を見て、にっこりと笑ってそう言いました。(ふくろうはその白い顔を真っ赤に染めました)