2 大好きな(苦手な)数学の世界にようこそ。
大好きな(苦手な)数学の世界にようこそ。
悪魔の女の子の名前は、さちこ(幸子)と言いました。
さちこは数学の天才でした。
お父さんが大学で数学を研究している数学者さんらしいのですが、そのお父さんからもさちこは数学の天才だと言われているみたいでした。
さちこは嬉しそうな顔で、そんなことを(ふくろうの前の椅子に、荷物をもって、座り直してから)ふくろうにお話ししてくれました。どうやら、ふくろうがさちこのことを本物の悪魔だと思ってくれたことが本当に嬉しかったみたいですね。
年齢はふくろうと同い年の小学四年生でした。数学以外の教科もさちこはよくできましたが、数学はずば抜けていました。
さちこは今、お父さんにお家で数学を教えてもらいながら、大学の数学を面白そうにお勉強していました。(高校数学までは、もう理解していたのです。すごいですね)
ふくろうも小学校の勉強はできるほうでしたが、さちこには全然かないませんでした。(そもそも、数学については、ふくろうは『算数のお勉強』をしていて、数学のお勉強はしたことすらありませんでした)
二人はお互いのいろんなことをお話ししながら、お友達になりました。
その日のお別れの時間のことです。
(あっという間の時間でした)
「これ、がんばって解いてみて」
と言って、さちこは自分のとても可愛らしい桃色のノートに算数の問題をかいて、そのページをとって、ふくろうに渡しました。
「うん。頑張る」と嬉しそうな顔で言って、ふくろうはさちこのノートの一枚を受け取りました。
それから二人は図書館の入り口の扉を出たところで、さようならをしました。
その日の夜。
ふくろうはさちこの算数の問題をがんばって解きました。
大変だったけど、さちこが喜んでくれる顔を想っていると、全然、いつものように算数の宿題をするみたいに、苦手だとは思いませんでした。
なんとか、(すごく疲れたようですが)問題を解くことはできました。
さちこがふくろうの数学の実力に合わせた、問題を出してくれたみたいでした。
ふくろうは満足して明かりを消して、眠りにつくと、その眠りの中で、さちこに、えらいね、って言って、褒めてもらえる夢を見ました。