表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
捨てられた元王妃は国を逃れて、隣国王子に溺愛されながら、幸せ薬師ライフを送ります!  作者: たかたちひろ@『巻き込まれ転生幼女』2/28 発売!
三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

66/71

第66話 倒れる元旦那と妹


彼女は私をのぞき込むようにして、平謝りをしてくる。


眉を落として、いかにも心配するような顔をしていた。


だが、間違いなくわざとだ。

そう分かるくらい、はっきりと悪意を感じる行動だった。


この光景を見て、くすくすと笑う令嬢もいる。


本当に面倒くさい世界だ、私は心の中で改めて思うと同時、苛立ちが湧きおこってくる。

だが、一国の王子の婚約者を演じている以上は、取り乱すわけにもいかない。


「いえ、お気になさらず。主役はお忙しいでしょうから次にいかれてください」

「でも、あたし……」

「そこまで濡れてませんから」


私はこう言い切って、白々しく悲しげな表情を作るハンナから距離を取る。

ルベルトはそんな私を心配そうにのぞき込んだ。


「大丈夫か、アスタ」

「えぇ。羽織りのおかげで、直接はかかりませんでしたから」

「……外で服を変えてくるといい。俺もついていこうか?」


しかしまぁ、優しい王子だ。


冷酷だなんて噂されているが、むしろこの会場にいる連中のほうがよほどひどい。


その気遣いはありがたかったのだけれど、しかし。

ルベルトはそのそばから、オルセン王国の重鎮である御年七十の御仁・ベラビス公爵に声をかけられて、捕まってしまう。



隣を離れてもいいのだろうか。

彼に毒が盛られる可能性をも考えると、うかつには判断ができない。

私がどうしようかと迷っていたら、


「行ってよ。その間は、僕がどうにかするから」


そこへそれまでにこやかに別国の要人たちと談笑をしていたデアーグが、助けに入ってくれた。


「……ありがとうございます」

「いいから、いいから」


頼もしい側近だ。

彼が見張っていてくれれば、少なくとも毒を盛られる心配はない。


私はそう考えて、少しの間だけと、会場の外へと出る。

そして控室まで戻り、濡れた羽織を脱いだところで、ふと違和感に気づいた。


「……この匂い」


肩口から漂ってくる白ワインの甘い香り。

さっきまでは、食べ物やら香水やらの匂いに混ざって、分からなくなっていたらしいが、そのなかにたしかに、つんと棘のある刺激臭が混ざっていた。


私はそれを最近嗅いだことがある。

そう、イチイの種から生成した毒薬と同じ匂いだ。


つまりハンナに、誰かが毒を盛ったということになる。


私は慌てて、会場まで走って戻る。

するとそこでは、もうすでに騒ぎが起きていた。


会場の中心にできた人だかりを掻き分けて、中心まで行けば、そこでは、ハンナだけではなく、ローレンまでもが倒れている。


どちらも滝のような汗を浮かべて、泡を吹いていた。

王家直属の医者が容態を確認しているが、それを待つまでもない。エーギル先生の言っていたとおりの症状だ。


典型的な、イチイの毒症状だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ