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捨てられた元王妃は国を逃れて、隣国王子に溺愛されながら、幸せ薬師ライフを送ります!  作者: たかたちひろ@『巻き込まれ転生幼女』2/28 発売!
三章

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第64話 始まる夜会




ルベルトとデアーグとともに、いよいよ会場に入る。


会場となった場所は、屋敷を焼かれた夜に出た夜会と同じ大ホールで、食事は立食形式だった。


国を挙げて他国を招いての式典だから当然のことだが、周りを見渡せば、その時の参加者たちもたくさんいる。


地方の辺境領主から、公爵クラスまで。

大勢の貴族が勢ぞろいで、会が始まるのを待って、雑談に興じている。


そんななかデアーグはといえば、持ち前の気さくさで、その輪の中に加わっていく。

一方、ルベルトはといえば、自分から話しかけることもなければ、話しかけてくる者も、ほとんどいない。


決められた円卓から動かず、そこにはほとんど近づいてくるものはいない。


「これはこれは、ルベルト王子。いつも大変お世話になって……ひっ、し、失礼いたしました」


たまに喋りかけられても、これだ。

番犬が家の前を通る通行人全員を睨みつけるがごとく、ルベルトは眉をしかめており、すぐに退散していく。


その視線の威力はかなりのものらしい。

近寄ってこようとする女性は数人いるのだけれど、みんなが牽制しあっているように見えた。


そしてたぶん、その全員が私のことを「誰」と思っていることだろう。顔を隠しているから、なおさらだ。


実際、「ルベルト様があんな女に?」なんて声も聞こえてきていた。

だが、それでも近寄っては来ない。


「……私がいなくても人除けになっているのでは?」


私は素直な疑問をルベルトに小声で伝える。

それに彼は単純に、首を横に振った。


「いや、昨日までならこれでも話しかけられていた。アスタのおかげだ」

「ならいいのですが」

「酒と食事を取りに行こうか。先によそっている分には、問題ないらしい」


私はルベルトに導かれるまま、給仕人に料理をいくつかよそってもらい、白ワインをグラスに注いでもらう。


あのときは、ここに薬を盛られていた。

少しの不安が胸によぎって、私は違和感がないか確かめる。


だが、とくに匂いや色も変わったところはない。

単に、質のいいワインだった。


円卓まで戻ってきたところで、二人だけの乾杯をする。


なんてしていたら、ふっと会場についていた魔導等の明かりが消えた。



どうやら、いよいよあの憎き二人が出てくるらしい。


前方にある大階段の周りだけが、ぼんやりと照らされる。

そこへまず現れたのは、ローレンだ。


彼は階段を降りきるとその場で一礼をして、主役の席につく。

それから次に出てきたのは、ハンナだ。


その両脇には、私の両親もいる。



その顔を見るのも、もちろん半年以上ぶりだ。


だが、なんの感慨も湧いてはこない。

彼らと接する機会は子供の頃からごくごく限られていたし、私はほとんどジールら使用人に育てられてきたと言っていい。


二人にとって、私が単なる政略の道具だったのは昔から明白なことだった。


息子を設けられなかった以上、娘は品よく育って、王妃の座を射止めてくれれば、それでいい。きっとそう思っていたのだろう。


それが私だろうが、ハンナだろうが、二人にとってはどちらでもよかった。

だから今も、あんなふうに笑顔を湛えて、手を振っている。



だから、彼らの顔を見ても、特段心が揺れることもない。

たぶんすぐ近くで顔を見られても、二人に私だと気づかれることはないだろうとも、私は確信していた。


「では、これより対外お披露目会を始めさせていただきます」


司会を務める方の開会宣言があり、いよいよパーティーが始まる。



「姉が亡くなったのはとても悲しいことです。あたし、もう悲しくて、本当に涙を流す日々を送っていました。そんなときに、同じ傷を負った彼が、支えになってくれました。これからは、あたしが彼をサポートして、尊敬していた姉の代わりとなり、このオルセン王国をささえてまいります。どうぞご支援を賜りますようお願い申し上げます」


「今、ハンナが言ったように、とても悲しいことがあった。だが、だからこそ、私たちはそれを乗り越えて前に進みたい。そう思っております。ハンナはとてもいい妻です。きっとこれからも、そうでしょう。二人で、この国を盛り立ててまいりたい所存でございます」


挨拶の時間は、実に退屈な時間だった。

焼き殺されかけた側としては「嘘つきどもめ」と心の中で毒づくほかない。


そして、それは意外なことにそれは他の貴族たちも同じらしい。

すぐ近くにいた辺境伯家の方々からは、「元から浮気していたくせに」なんて声も漏れ聞こえてきた。


挨拶が終わると、いよいよパーティーが始まる。

聞かされていなかったが、ルベルトもその対象だったらしい。


彼は前に出ていくと、ローレンとハンナの前で、


「このたびは、まことにおめでとうございます」


心のこもっていないのがすぐに分かる形ばかりの祝辞を述べる。

それに私が苦笑いしていたら、


「今回は私の婚約者も連れてきております。どうぞお見知りおきを」


こんなふうに紹介されてしまった。


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