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捨てられた元王妃は国を逃れて、隣国王子に溺愛されながら、幸せ薬師ライフを送ります!  作者: たかたちひろ@『巻き込まれ転生幼女』2/28 発売!
三章

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第59話 王城潜入のために女装?





王城内に入り、裏庭まで行って、ギーナを摘んでくる。


言葉にすれば簡単だが、隣国の一薬師となった今、その任務はかなり難しいものになっていた。


城の出入りはかなり厳しく管理されているし、中に入れば当然、行動は把握される。

そんななか、裏庭の薬草を採取するのは、かなり難しいものがあった。


それに、そもそもあの裏庭が取り潰されている可能性だってありうるのだ。

だが、それでも、確かめもせずには諦められない。


エーギル先生のもとを訪ねた翌日、私はさっそく一つの作戦を練っていた。


ただし、それは一人でできるようなものじゃない。

だから私はまず朝食の席でルベルトに相談して協力を求める。


だが、しばらくは会議が続くらしく、身動きが取れないようだった。


「……先日の復讐のつもりかもしれないな」と呟いていたから、ローレンが恣意的にルベルトを忙殺しているらしい。


なんとも器が小さい王様だ。

が、そんなんでも権力があるのはたしかで、対外的には断ることは難しいようだ。


そこで代わりに、協力を申し出てくれたのが……


「おー、使用人たちの部屋ってこんな感じなんだ。なかなかいいじゃん。これくらいあれば十分すぎるよなぁ」


デアーグだった。

今日は、ルベルトだけが参加する会議が多く、時間があるらしい。


私の部屋をくるりと見渡して、嫌味なく、こんな感想を述べる。

それから扉に背中を預けて、


「で、王城に入るための作戦って? なんか立ててるって聞いたけど」


極めてラフにこう聞く。


一応、椅子は用意していたのだが、座るつもりはないらしい。

だから、私も立ち上がり、返事をする。


「はい、簡単に言えば、デアーグ様には陽動役をお願いしたいですね」

「陽動ねぇ。そりゃまぁ、僕にかかれば大概のことはできるけど」

「ふふ、頼もしいです。では、まずはこれに着替えてください」


私はそこで事前に袋に詰めていた服を、彼に手渡す。


ルベルトの協力を得られなくなった以上、もうこれしかない。私がそう考えたのが、その袋の中身だった。


「着替え? まぁいいけど」


彼はろくに中身も確認せずに、それを手にして、外へと出ていく。


そうして戻ってきたときには――


「な、なんだよ、これ」

「とってもお似合いですよ。私よりもぴったりかもしれません」

「……あのなぁ。一つも嬉しくないぞ、それ。袋開けた瞬間に、スカート出てきて、まじでびびった」


「それでも着てきてくれたんですね」

「……そりゃあ、着替えてくるって言ったし。……入っちゃったし」


最後ぼそりと、小さな声で言う。


デアーグに着てもらったのは、私が持ってきていた服だ。


身長がほとんど変らないうえ、体格も似ているから、サイズはほとんどジャストだ。


「くそ、なんだよ、この飾り……」


できるだけ女性らしいものを選んで、彼には着てもらっていた。

上は袖にフリルがついているし、スカートも、レースつきの花柄だ。


遠目に見れば、もはや女の子にしか見えない。


「で、なに。アスタさんは、その格好? 仮装パーティーでもやるのかよ」

「違いますよ」


私は私で、ルベルトの使用人の方から、使用人服を借りて着込んでいた。

こちらはややサイズが小さいが、ぎりぎり違和感はない。


これならば、問題なく実行できるはずだ。


「じゃあ、そろそろ王城に行きましょうか」

「え。おいおいおいおい、こ、これで外出!? しかも、王城に!?」

「そうしていただかないと、陽動になりません。その格好で、少しだけ門番と揉めてほしいんです。ちょうど目を誤魔化せる感じで」

「……け、けどなぁ、これはさすがに僕にも恥じらいというものが――」

「どうかお願いします」


断りたい気持ちもよく分かる。

分かるけれど、この解毒薬が作れるかどうかは、ルベルトの命に関わる話でもあるのだ。


私は真剣みを持って、彼に頼み込む。

すると彼は目を横へと逸らしたあと、かなり大きなため息をつく。


「……くそ、そんなまじな感じで頼まれたら断れなくなるじゃねぇか」


そして、こんな愚痴を呟きながらも外へと出てくれた。


デアーグには先に王城へと向かってもらい、私はその少し後ろをついていく。

そうしてデアーグが城門の前についたところで、


「な、何者だ!? お、男!? なんだその格好は」


門番たちから向けられるのは、うろんな疑いの目だ。


「いいから入れてくれよ。僕は、デアーグ・イステル。ミュラ王国の伯爵貴族だ」

「し、しかし、いったいなぜ、そのような珍妙な装いを……」

「僕がどのような服を着ていようが関係ないだろう」


「そ、そうですが、今の状態だと本人だかどうか。それに、どういったご用件で? 要件がない場合は、お入れすることは――」

「忘れ物しただけだって。あと、あんまりこの格好のこと馬鹿にしてると、こっちも実力行使に出るけど? 国同士の揉め事にしたくないだろう?」

「お、お待ちください!」


女装の似合い具合といい、騒ぎの具合といい、すべてが完璧だった。

厄介な客人そのものである。


おかげで、門番たちは全員がデアーグにかかりきりになっていた。


これならば、もしくはいけるかもしれない。

私はその隙に、なんの気ないふりで門へと近づいていき、門番の横を頭を下げながら通り抜ける。


デアーグのおかげか、ほとんど誰もこちらを気にしていない。

使用人が、城回りの掃除を終えて帰ってきた――。それくらいにしか思われていないようだ。


おかげで無事に、通り抜けることに成功する。


いつか、この恩はしっかり返そう。

そう思いながら私は、まだ揉める演技をしているデアーグから目を切って、城内を移動し始めた。

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