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捨てられた元王妃は国を逃れて、隣国王子に溺愛されながら、幸せ薬師ライフを送ります!  作者: たかたちひろ@『巻き込まれ転生幼女』2/28 発売!
三章

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第56話 元王妃は、母国で追跡を逃れる。





夜は、しっかりと眠ることができた。


むしろ、夜中に起きていた分、少し長く寝すぎてしまったくらいだ。

私はルベルトの使用人に起こしてもらい、朝食の会場へと向かう。


その場所は、今日もルベルトたちと同じだ。


「毎回遅いぞー。夜更かしでもしてたのか? 酒飲みすぎなんじゃね?」


食堂の扉を開けるとすぐ、デアーグがあきれ顔で指摘してくる。

一方で、その向かい側にいるルベルトは、あくびをしていた。


いつもは、そんな抜けた姿をほとんど見せないのだから、彼も少し寝足りなかったのだろう。


目の下には、クマもできている。

それで私はくすりと笑ってしまい、それにつられてかルベルトも口端を上げていた。


「え、なに、なに。面白いことあった、今?」


デアーグは不思議そうにしていたが、昨日の件は、秘密ということになっている。


「いいえ、なにもありませんよ」


だから、こうとだけ返事をして、私は席に着く。


「それより、デアーグ様はかなりお酒がお強いのですね」

「あぁ、まぁな。飲むとかなり酔うんだけど、寝たら、いつもぴんぴん! ですよね、旦那。僕の取柄の一つ!」

「……たしかにそうだな。厄介な酒飲みとも言えるが」

「そりゃあ、ひどすぎるって」


こうして賑やかな会話のうちに、朝食は始まり、そしてあっという間のうちに終わった。



どうやらルベルトたちは、オルセン王国の貴族らとの打ち合わせがあったようで、食べ終えるや、すぐに王城へと入っていく。


一方、そうした予定の一切なかった一介の薬師である私はといえば、貰ったお金を手にして、薬箱や着替えを詰めたカバンを背負いこんで屋敷の外へと出た。


ルベルトに頼んで外出許可申請をしてもらい、無事に受理されたのだ。


外出理由はといえば、解毒薬の材料を集めるためである。

万が一の際、ルベルトを守るためにも、なにかが起こる可能性の高いパーティー当日までには必ず完成させたかった。


といっても、現在分かっているのは、今持ち合わせている材料だけでは、作れないということだけだ。

なにが必要になるかも、現状調べる手段を持ち合わせていない。


だが、分かるかもしれない人の当てならすでにあった。


私は街中へと出て、その人のいる店を訪ねようとする。

が、そのときだ。


後ろからついてくる者の存在に、私は気づいた。


「……まぁ、野放しにはしてくれないわよね」


これくらいは、予想の範囲内だ。


他国の人間が領内で怪しい行動をとらないか、見張りをつける。

それは私が王妃だった頃も、外出を許可する際には、やっていた。


全員が全員、危険な思想を持っているわけではないが、場合によっては国防にも関わるからだ。


このまま後ろをつけられて、解毒薬としていることが知られてしまってはまずいこともあるかもしれない。


なにせ、オルセン王国の人間の誰かが、あの毒薬づくりを指示したことはほぼ間違いない。


もし私がその解毒薬を手にしようとするなら、確実に阻んでくるだろう。


ならば、もう秘策をやるしかなかった。



つけられることは考慮していたから、対策はすでに考えてあったのだ。


私は、王都の中心街まで歩いていく。


昼前の時間帯ということもあり、かなりの人通りだった。

その賑わいは、半年前とあまり変わっていない。


「今日のニュースは、ヒリル公爵別邸に出入りする謎の占い師についてです! 見ていってください! 銅貨一枚! かなり安いよ! そして面白い! 時代を作り、真実を見抜く大衆新聞です!」


そして、これも健在だ。

昨日も見かけた『王都新聞』によるニュースペーパー配りだ。


今日も今日とて、センセーショナルなニュースを扱っている。そして、その内容が正しいか否かに関わらず、結構な人気を集めている。


私は彼らから、配っていた一枚をもらう。


「ありがとう」


代わりに、羽織っていたローブの懐のポケットに入れていた一枚の紙を銅貨一枚とともに、ひっそりと手渡した。


そのうえで、そのまま人ごみの奥へと通り抜けていく。


作戦の結果はといえば、背後で上がったざわつきで、すぐに分かった。


「お、おいおい! ローレン王子とハンナ様の第一子が生まれるらしい!!」

「どうせ、嘘だろ、そんなの」

「いや、見ろ。この紋! 間違いなく、オルセン王家のものだろ!! きっと俺たちを信用して、情報を渡してきたんだ!

「ちょっと、その紙、俺にも見せてくれ!!」

「私も、私も!!」


ただでさえ、ごった返していた人が、『王都新聞』の新聞売りのもとへと、さらに集まり寄ってくる。


私が握らせたのは、とんだフェイクニュースだ。

いっさいの根拠なく、屋敷から出てくる前に適当に考えた、人が集まり寄ってきそうな内容のものである。


そして、それに信ぴょう性を持たせるために、ローレンのサインを記した。


そう、私は仕事をしない元夫・ローレンのかわりに、彼になりすまして、数多の書類にサインをしてきた。


その結果、ほぼ完ぺきにトレースすることができるようになっていたのだ。



騒ぎは、かなりの規模のものになっていた。

私はその隙に、王都の裏路地へと入っていく。


そうして、しばらく歩いてみて、ほっと息をつく。

背後に常に感じていた、尾行の気配はすっかりとなくなっていた。


そこで私は持ってきていた別のローブに着替えて、目的の店を目指す。


さすがに自分が治めていた街のことだ。

多少変わっていても迷うことはなく、すぐに到着することができた。



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