第43話 元王妃、怪しい依頼を持ちかけてきた奴らの出自に気づく
宿の前の道が比較的開けていることもあった。
おかげで見失うことなく、物陰に隠れながらついていく。
すると、その女性は路地裏を何本か入っていき、周りをきょろきょろと見渡したあと、近くにあった小さな民家の一つへと入った、
ただ帰っただけ、というふうには見えなかった。
そもそも、ここはまったく田畑がある場所ではない。都市の真ん中にある住宅地だ。
私は気配を殺して、その家屋の壁際へと近づいていく。
すると、さっきの女性が再びその家の中から出てきて、私は壁に身を隠す。その手には、大金が握られていて、女性は逃げるようにどこかへと走っていった。
さっきの話が嘘だったのは、これでほぼ間違いない。
さっきの女性は、金をもらうために、農民のふりをして毒薬の生成依頼をしてきたのだ。
そして、そうなると、毒薬の利用目的が魔熊退治以外のところにあるのもたしかだろう。
気になった私は、しばらくそこで聞き耳を立てることにする。
すると、中からは少しだけ男たちの会話が聞こえてきた。
「――様の命令だ。とにかく急いで、毒薬を――」
「――もうそろそろ戻らなければ、時間が――」
その内容は、途切れ途切れではっきりとは聞こえなかった。
得られたのは断片的な情報だけで、つなぎ合わせてみても、なにか確信を得られるようなものじゃない。
が、しかし。一つだけはっきりと、分かったことがあった。
彼らの話す言葉は、私にとって耳馴染みのある喋り方――つまり、西側特有のものだ。
ミュラ王国の人々が話す言葉のイントネーションに慣れてきた今だからこそ、確信を持てる。
どうやら彼らは、オルセン王国側の人間らしい。
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登校時間、遅れまして失礼しました。
区切りの関係で今日は少し短めになりますが、引き続き当作をよろしくお願い申し上げます。




