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捨てられた元王妃は国を逃れて、隣国王子に溺愛されながら、幸せ薬師ライフを送ります!  作者: たかたちひろ@『巻き込まれ転生幼女』2/28 発売!
二章

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28/71

28話 元王妃は、隣国王子に身を挺して守られる


「な、なに!? わ、私のせい?」

「……違う原因だとは思うが。とりあえず、掴まっていろ」


ルベルトはそう言うと、私のほうにそのたくましい腕を伸ばしてくる。

今回ばかりは、躊躇していられない。


それに、しがみつくようにして揺れが収まるのを待つのだが、まったく収まらない。

そればかりか、揺れはどんどんと強くなっていく。


そして、だ。


「魔大蛇……。なぜ、こんな魔物がここに」


どうやら最悪の事態が発生してしまったらしい。


入口のほうへと向かう道を塞ぐようにして、姿を現したのは、人の何倍も大きい蛇型の魔物だ。その尻尾が激しく地面と天井を揺らしていたせいで、この揺れが作り出されていたらしい。


その大蛇は、大きく咆哮をあげる。

同時、むき出しになった牙からは毒液がぽたぽたと垂れた。明らかに、聞いていた話とは違う魔物だ。


「弱い魔物しか出ないって話じゃなかったんですか」

「……分からない。もしかしたら、誰かに差し向けられた可能性もあるな。ただ、いずれにしても戦うしか逃げ道は作れなさそうだな」


そう、ここは洞窟の最奥にあたる場所だ。

この蛇をどうにかしなければ、逃げ道は作れない。


本当なら、いろいろと策を練りたいところだったが、そんな人間側の都合を魔物が待ってくれるわけもない。


蛇型の魔物は、その巨体を縮めたのち、バネのように伸ばして噛みつきにくる。

それをルベルトが剣を抜いて、受け止めた。


これまで深く被っていたフードも取って、戦闘態勢だ。

その瞳には、強い敵意が宿っている。


「アスタ、下がっていろ」


力負けはしていなかった。

そのうえ、かなり冷静さを保っている。


それで私は足手まといにならぬように、ぎりぎりまで後ろへと後退する。


一応、護身用のナイフは今回も持ち歩いていたが、これでどうにかできる相手でもない。

おとなしく見守っているのが、一番いい。そう思っていたのだけれど、どうにも落ち着いていられない。


「厄介な奴だな。頭以外は、まともに剣が入らない」


戦況は、互角……いや、少しルベルトが押されていた。


斬りつけても、斬りつけても、その表皮は固いらしく、剣の刃がはじき返されてしまう。

多少血が噴き出ても、それだけで、大蛇はまったくひるまず、こちらへの攻撃の手を止めない。


この前と違って、魔力を十全に扱えているにも関わらず、これだ。

戦意はまったく落ちていないが、すでに息が切れ始めていた。


そろそろまずいかもしれない。

そう思って固唾を飲んで見守っていると、そのときだ。ルベルトの腕に、その大蛇が噛みついた。


その腕から、真っ赤な血が噴き出る。


「……ル、ルベルト様!」


それを目にするや、私は思わず声を上げるが、ルベルトはひるまない。

その隙に、蛇の口元を上から剣で突いて、貫く。


「……先に行け。今なら抑えられる」


それに対する返事がこれだった。



要するに、自分が犠牲になるから今のうちに逃げろ、と。ルベルトは言っているのだ。


「……そんなことできるわけないでしょう」


思わず、私は本音を呟く。


だいたい、犠牲になるなら普通は逆だ。

王子を救うために私が犠牲になるべき場面であって、私のために彼が死ぬなんて、どう考えてもおかしい。


元旦那であるローレンなら間違いなく、私を切り捨てている。


「いいから行け」


だのに、ルベルトは自分の身をいっさい顧みもしない。

私を守るためだけに戦ってくれている。


冷徹なんて大嘘で、なんなら心優しすぎる。そんな人間を見捨てられるほど、私は冷徹な人間ではなかった。


そんなふうにして生き延びたって、なんの意味もない。

それは、胸元に下げたこのネックレスが、ジールがそう思わせる。


それに、この状況なら、まだやりようがあった。



私は薬箱を取りだすと、そこから一本の瓶を取りだして、蓋を開けると、蛇の口元へと注ぎ込む。


すると、大蛇は途端に苦しみだした。

ルベルトの手に籠もる力も弱っていたのだろう大蛇は、頭に剣が刺さったまま、後ろへ後退しながら、のたうち回る。


一方のルベルトは、かくっと片膝をつくから、私は支えに入る。


「……なにをした」

「神経毒です。ねずみ退治グッズにつかっていた痺れ毒です。毒蛇でも、効くみたいですね」

「そんなものがあるのか」

「えぇ。人が飲んでも、ほんの少量で身体が麻痺する強力なものですから。あれだけ飲ませれば、あの身体の大きさでも、しばらくは苦しむことでしょう。それより、傷口を貸してください。毒を落としますよ」


私はそう言うと、水の魔法を発動して、その傷口を洗ってやる。


「……しみるな」

「少し我慢してください。今から焼きますが構いませんか」

「……あぁ、やりたいようにやってくれ」


了承を得て、私は自分のナイフを抜くと、その刀身を魔法で灯した火で炙る。


そのうえで、彼の腕に強く押し当てた。


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