表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
捨てられた元王妃は国を逃れて、隣国王子に溺愛されながら、幸せ薬師ライフを送ります!  作者: たかたちひろ@『巻き込まれ転生幼女』2/28 発売!
二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/71

26話 元王妃は、隣国王子と薬草採取をする。


河辺では、さっそくヒダネという薬草の採集へと入る。

その見つけ方には少しコツがあった。


「見た目は雑草類と変わらないから、見つけるのは至難の業なのだけど、魔力を吸い込むと、きらりと光るんです」

「……ということは、ここ一帯に魔力を流せば、すぐに見つけられるな。ただ、かなりの魔力が必要になりそうだが」

「そこは大丈夫ですよ。これを持ってきましたから。どうぞ」


私はそう言うと、魔力回復ポーションを取りだして、彼に手渡す。

これは、魔力の回復量を一時的に速める効果のあるポーションで、この一週間の間にギルドからの依頼で作成をしていた。


今日のために、数本だけ自分用に多く作っていたのだ。


「準備がいいな」

「まぁ、薬師っていうのは、そういう職業ですから」


私はそう答えると、地面にしゃがみ、手元から魔力を地面に放出する。

が、どの雑草も光ってはくれない。それどころか、そもそも魔力の行き渡る範囲が狭い。


が、ルベルトは格が違った。


「……すごい」


と、思わず感心してしまう。


彼が魔力を宿した剣を地面へと突き刺せば、湖に石を投げ入れたときの波紋みたく、魔力は円状に一気に広がっていった。


すると、きらりと川べりに群生していた雑草のうち数本がたしかに光った。


私はすぐその場所まで駆け寄って、持参してきたスコップを取りだす。

そのうえで、始めたのは、土を掘り返す作業だ。



ヒダネは、根っこが薬に使うことのできる原料となる。

上から乱雑に引っこ抜いて、根が傷ついてしまったら、元も子もない。


ある程度までスコップで堀ったあとは、手を使って、掘り返していく。

当然、自然の環境だ。虫なども中からは出てくるのだが、私はそれを手で払いながら掘り続ける。


「……お前、本当にすごいな。尊敬する」


そして、ルベルトは、それを十分すぎるぐらい距離をとったところで、見ていた。

顔を歪めて、明らかに引いた顔だ。


少なくとも、尊敬する相手に向けるまなざしではない。

が、そんなことは気にせず、掘り進めて、私はやっと一本を手に入れる。


資料集などでは見ていたものの、手にするのははじめてのことだった。

まるっと膨らんだ根に、これが実物かと私が少しの感慨を覚えていたら、やっとルベルトが近寄ってくる。


「それが、ヒダネか」

「えぇ、はい。これがいくつか欲しいですね」

「では、もう一度やろう。……掘るのは手伝えないが」

「ふふ。そこは、任せてもって構わないですよ」


私たちは、一連の作業を何度か繰り返していく。

そのうち気づけば、水平線上にいた太陽は随分と高いところまで昇っていた。


少し昼休憩をとったあとは、続いて、別のものの採取に移る。


次に狙ったのは、マツホという丸い傘状のキノコだ。じめじめした場所に生えるキノコで、消化促進などの妙薬として用いられる。


私がそれを興奮気味に語れば、


「……キノコか」


まったく乗り気でない様子だ。苦虫をかみつぶしたような表情で、ため息を一つつく。


どうも彼は、キノコが苦手らしい。

変に部下と張り合ったり、ところどころ、子どもっぽいところがあるから面白い人だ。


「ツキヤという似た見た目の毒キノコもありますから、それには気をつけてください。斑点が多いものは、だいたいツキヤだと思ってもらっていいです」

「……分かった」

「とりあえず、二手に分かれましょうか」

「あまり遠くには行くなよ」

「分かってますよ」


こうして、マツホ探しが始まる。

すると、どうだ。意外なことに、ぽんぽんと見つかる。


本で読んでいた知識では、ツキヤのほうが数が多く、見つけるのが困難という話だったが……

どういうわけか、それはほとんど見つからない。

いや、正確には刈り取られた跡は、何か所か見つけたから、何者かが採取していったのかもしれない。


このぶんだと、間違ってではなく、故意に採取されている可能性もある。


ツキヤの毒は、即効性のあるものではないが、長期間服用していれば、身体の一部が漆黒の色になり、あらゆる機能に悪影響を及ぼすうえ、その毒に侵された人間の肌を触れれば、毒がうつるという、かなり面倒なものだ。


それで私は少し採取の手が緩むが、今考えても仕方がない。


「また食べているのか、それ」

「今回のは、ミントですね。口の中が爽やかになりますよ。どうです?」

「……貰っておこう」


途中で見つけた食べられるハーブ類を、自分の作り出した水で洗ってつまんだりしながらも、次々に採取を進める。


そうして、どんどんと川沿いを上流へと登って行った先で見つけたのは、切り立つ壁に空いた大きな穴だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ