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捨てられた元王妃は国を逃れて、隣国王子に溺愛されながら、幸せ薬師ライフを送ります!  作者: たかたちひろ@『巻き込まれ転生幼女』2/28 発売!
一章

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2話 ご愁傷様。


久しぶりの再会だった。

王家特有の、ブロンドの髪に、エメラルド色の瞳、高い鼻立ち。その容姿は、改めて見ても、なかなかに美しい。


はじめは見とれてしまうこともあったが、今はもう、視線を合わせたくもなかった。


私たちの関係は、北の海に浮かぶ氷塊くらいには、冷え切っている。


だから無言で会釈だけ交わして、主催者席に並んで座り、夜会の幕が切って落とされるのを待つ。


進行に関して、事前の打ち合わせなどはしていなかった。

だが、こういう派手な場所だけは得意なのが、彼だ。


「この度は我が国においでいただき、誠にありがとうございます。ぜひ本日はぜひお楽しみください」


主催者挨拶を立派にやり遂げて、拍手を一身に浴びる。

これには、


「若いのに立派なもんだ」


なんて声も一部からは聞こえてきていた。

そう、こういうところだけを切り抜けば、彼は本当に優秀な王なのだ。


「ありがとう」


挨拶が終わったのち、私は一応の礼儀として、彼のほうへとグラスを傾ける。

最近は、これを無視されることも多かった。だが、来賓の手前、体裁を気にしたのか彼は、軽くグラスをぶつけて、それに応えてくれた。


互いのグラスにワインを注ぎ足して、そこからは挨拶回りへと出る。


とまぁ、ここまではよかったのだけれど。

要人にだけ挨拶を済ませると、


「あとはよろしく頼む。僕は少し用がある」


彼は会場の端の方へとしけ込んでいく。


それを目で追ってみれば、彼が向かったのは、顔を覆わんくらいボリュームのある長い髪をした女性、私の妹・ハンナの元だ。


変装をしているようだったが、私と同じ緋色の瞳が見えたから間違いない。


こんな場にまで連れ込んでいたらしい。


ふと、ハンナと視線が合う。

すると彼女は軽く頬を綻ばせて、軽く会釈をしてきた。それから、違う方向を振り向いた際、その唇はたしかにこう動いた。


『ご愁傷様』


と。


昔なら、言い返していたところだ。私とハンナとは、歳が三つしか離れておらず、仲良くしていた頃もあったのだ。


その頃のハンナは、なんでも私の真似をしていた。服も髪型もアクセサリーも、とにかく全部お揃いにしてくる。


その頃はそれが可愛かったけれど、それが行き過ぎた結果、次は男だというなら、笑える話じゃない。


「あの男のどこが気に入るんだか」


私はつい、こう独り言ちる。


そこへ、横手から隣国の要人に話しかけられて、私は気持ちを切り替えた。

くだらないことを考えていてもしょうがない。


王があの調子で、私が王妃である以上、とりあえずは目の前の仕事をしっかりやるしかないのだ。


私は挨拶回りを徹底して行う。

そうしているうち夜は深まっていき、夜会は十の刻には終了となった。


日頃の蓄積か、ひどく身体が疲れていた。

ややもすれば歩いたまま、瞼を閉じてしまいかねないくらいで、酒も相まって、最悪の調子だった。


私は王城から少し離れたところにある自屋敷に帰るなり、ベッドに崩れ落ちるようにして、眠りにつく。



――そして、目を覚ましたら、部屋が燃やされていた。





短くなったので、夜も投稿します。

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