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19話 元王妃、隣国王子側近の青年から魔法を習う。

デアーグはさらさらそうなストレートヘアをかきあげて、ため息をつく。


「やっぱりか……やっぱりそう見えないよなぁ、僕」


どうやらコンプレックスだったらしい。


「えっと、若いってことでいいんじゃないでしょうか」


私は苦し紛れに、ぎりぎりのフォローを入れる。

普通、こんなものでは慰めにもならないだろうと思っていたら……


「あれ、たしかに。これからまだ伸びるかもだしな」


意外と、そうでもなかった。

基本的に、ポジティブな人らしい。


主人が変わっているなら、その従者の方も同じらしい。


「それで、今日はなんのために書庫に?」


私は彼が一人でなにやら納得しようとしているうちに、話題をするっと差し替えてしまう。


「あぁ、アスタさんと話してみたくてさぁ」

「そのために来たのですか」

「そうそう。従者としては気になるんだよなぁ。主人が肩入れしている女性ってのは。しかも、恐ろしい噂ばっかのうちの主人にも怖気づかない」

「いろいろ誤解があると思いますけど」

「そうかなぁ」

「そうですよ。ただのビジネスパートナーです」

「それ、うちの主人も同じこと言ってたなぁ。やっぱり気が合うんじゃ?」


ぽんぽんと、次から次へ喋る陽気な人だった。話題が途切れても、いっさいの不自然さなく次の話題を持ち出してくる。


本来は静かにするべき書庫なのだが、他に人がいなかったこともあり、ついついお喋りに興じてしまった。


気付けば、積んでいた本をほとんど読まないまま、閉館の半刻前を迎えていた。



「わー、アスタさん!! まじでごめん!!」


これには、デアーグは両手をすり合わせて、平謝りだ。

まぁその謝り方も、数年来の友人でも貴族間ならなかなかない軽さである。


そのぶん受け取るのも楽であるから、


「じゃあ、お詫びに魔法の使い方講座してください。まったく分からなくて」


ついでに軽く、こんなことを頼んでしまう。


「お? それでいいなら全然いいけど。ってか、貴族出身?」

「末裔ってぐらいだと思いますけど、適正はあります。もっとも、もうしばらく親族には会っていませんから分かりませんが」

「なるほどね。それで使い方を学んでこなかったんだ。よし、そういうことなら任せてよ」


どうやら自信があるのか、彼はとんと一つ胸を叩く。

それから立ち上がると、私に見えやすいよう少し机から離れた。


そして、お腹の下あたりに手を当てる。


「このあたりに意識を集めるようにして、他の部分の身体の力を自然と抜いていくんだ。そうすると、自然と魔力がこのあたりに集まってきて――」


ここまでは、さすがに知っているが、やったことはほとんどない。

私も立ち上がり、彼と同じようにへそのすぐ下あたりに手を当てる。それから、続きの教えを請おうと、彼のほうを見上げてみれば……


「あとはこれをすーっと持ってきて、頭で発現する形をなんとなく考えて、……はい! こんな感じ!」


丁寧なのは最初だけで、最後の方はもはや大遠投だった。

あまりにも飛躍しすぎて、まったく参考にならない。


それで、もう一回説明を求めるのだけれど、結局行われた説明は、今見ていたものとまったく変わらなかった。



どうやら、デアーグは感覚型らしい。

私はといえば、基本的には実践の上で理論立てて覚えていく派だから、まったくもって違う。


結局、その場では魔法を使うに至らないまま、閉館時間になり、私は城を後にした。


「ほんとごめん!!」


と、デアーグは再び平謝りしていた。


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