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18話 お城の中の書庫で勉強を。


めったに手にすることのない大金を手に入れてすぐ。

私はその大半をそのまま商業ギルドに付随されていた銀行に預けた。


持っていてもしょうがないし、預けていれば少しは金利もつく。

それに、強盗などに狙われる危険性も回避できる。そのうえ、商取引をする上での信用度も上がる。


まさに一石三鳥だった。


そんなわけでかなり身軽になって、私が向かったのは家から少し歩いたところにある領主のお城だ。


その警備は、さすがに厳重なものだった。

周りには、深い水堀が張り巡らされており、城に渡れるのは各方角に一本ずつ架けられた橋だけ。そして、そこには屈強そうな衛兵が詰めている。


なかなか突破できそうにないわね……と、ついつい侵入する目線で考えてしまって、はっとした。



今回は、なにも突破する必要はないのだ。


「アスタ・アポテーケ様ですね。どうぞ、書庫は向かって右奥でございます」


ただ、衛兵に通行手形を見せるだけで、中に入ることができる。



私は言われたとおりに、門を通ってすぐ右奥へと進んでいく。


一応、すでに数回来たことはあったから、道は覚えていた。

私は本館とは切り離された別館の一部にある書庫に入ると、そこにいた司書の方に一つ頭を下げた。


「アスタ様、今日はどういった目的で?」

「薬学についてですよ。ポーションの作り方に関する書籍を読みたくて」

「あぁ。それでしたら、薬学書コーナーの番号五の棚がよいかと」

「ありがとうございます」


よく覚えているものだ、と毎回思う。

この書庫の蔵書は、かなりのものなのだ。民家にすれば、五軒分近く。


少なくとも、オルセン国の地方都市にあった書庫で、この規模はなかった。

それだけの規模があるなかで、細かいジャンルの本がどこにあるのか把握するのは至難の業だと思うのだが……


行ってみれば、これがぴしゃりと当たっていた。



私はそこから、いくつかポーションの生成に関する本などをいくつかを選びだすと、近場に会った机の上に何冊かを積んだ状態で、読み始める。


よりいいポーションを作るためには、それこそ上級や、特級を作るには、どうすればよかったのだろうか。それが、私には気にかかっていた。


そして、都度メモを取っていく。

そのなかで得た最低条件として必要なものは――


「……魔力がいる、かぁ。私にも使えるかしら」


魔法を使える薬師であるということ。それはもはや前提のように、研究所に書かれていた。


私は目の端にちらついていた朱色の髪を耳の後ろへとかけるため、一度顔を上げる。

ついで、ぐっと腕を引っ張って伸びをする。


そうして、再度本に目を落とそうとしたところ、


「魔法が使える人だったんだ?」


突然に声をかけられた。

見れば、いつのまにか目の前にオレンジの髪をした青年が座っている。


しかも、どういうわけか、やたら親しげな雰囲気で、にこにこの笑顔を向けてきていた。

誰だろうと正直に思って少し、遅れて思い当たった。


「たしか、ルベルト様の従者の方……」

「すごい、よく見てるなぁ。引っ越しの時にちょっと見たぐらいじゃないかな?」

「私、人の顔を覚えるのは得意な方なので」

「なるほどなぁ。まぁ、そんなところ。一応、僕も貴族なんだけどね」


彼はそう言うと、手のひらを上に向けて、そこに小さないかずちを発生させる。


「名前は、デアーグ・イステル。イステル伯爵家の嫡男なんだ。年齢は、二十三」

「え」

「……え? なんだよ、おかしいか?」


いや、まさか同い年とは思いもしなかった。

背があまり高くなく、私と同程度。


顔は小さくて目が丸いから、勝手に年下だろうとばかり思ってしまっていた。


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