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捨てられた元王妃は国を逃れて、隣国王子に溺愛されながら、幸せ薬師ライフを送ります!  作者: たかたちひろ@『巻き込まれ転生幼女』2/28 発売!
二章

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13話 【side:ハンナ】姉・アストリッドがしていた大量の仕事に押しつぶされる


――その頃、オルセン国王都にて。



新しい王妃として、国内でのお披露目会を迎えたハンナ・カポリスは、心底からの喜びを噛みしめていた。


やっと、この日が来た。

ついに、自分は姉・アストリッドに勝ったのだ。

そう思えば、まだパーティーが始まっていないというのに、お酒が進んでしまう。


控室の中は、すっかりと酒臭くなっていた。


「あの、ハンナ様。そのあたりにしたほうが……」


それをこう使用人に咎められて、


「うるさい。あたしに指図できる身分じゃないでしょうに」


ハンナはきっとその使用人を睨みつける。

それで、使用人が委縮する姿を見ながら、また酒をあおった。



それくらい、姉に勝つというのは、ハンナにとって特別な意味があったのだ。



アストリッドのことは、昔からずっと妬ましく思っていた。


なにせ彼女は、できすぎるのだ。

それは、なににおいてもそう。


学問、政治、社交に至るまで。

姉・アストリッドは、ほとんどすべてにおいて完璧を誇っていた。

貴族学校でも成績学年一位は当たり前で、教師陣からの評判もよく、生徒代表を務めるほどで、欠点なんてほとんどない。


そして、ハンナはそんな姉と常に比べられてきた。

両親だけでなく、会う人会う人が、ハンナを見る際に、アストリッドの影を見ている。


そのせい、なにをやっても『期待外れ』『残念』なんて、そんなレッテルを貼られることが多かった。


かといって、どうにか追いつこうと努力をしてみても、アストリッドの領域は遠かった。

どれだけ勉学に励んでみても、姉の成績を越えられることはなかったし、ダンスや歌などにおいても、到底及ばない。


せめて容姿では――そう思って、ひたすら美容に励むのだけれど、姉は美しさすらも、異次元の領域だった。

ローレン王の妃となったお披露目会で見た純白のドレス姿は、絶対に勝てない。そう一目で思わされる。

誰もが、姉を称賛していた。かえって、自分はただの参加者の一人であり、顧みられることすらない。


そんな現実が、ハンナには受け入れがたかった。



どうにか、姉を打ち負かしたい。

そうして考えついたのが、略奪愛だった。



姉とローレンが、いわゆる政略結婚であることは分かっていた。

ならば、そこにつく隙があるかもしれない。そう思ったのだ。


どうすれば男の気を引けるか。

ハンナはひたすらにそれだけを考えて、容姿や服装、言動までもを変えていき、ローレンに近付く。

親族だけあって、その機会は他人より恵まれていたのだ。


そして、その作戦はうまくいった。



手紙のやり取りから始めて、仕事に忙しい姉を横目に秘密の逢瀬を重ねるようになり、身体を重ねる関係にまでなる。

もう完全に、ローレンの心は自分の手中に収めている。そんな確信が、ハンナにはあった。


だが、世間からの評価はどこまでいっても、自分は王妃の妹でしかない。


一家につき、王妃は一人。

そういう決まりがある以上、自分は側室にさえなれない。



ならば、とそこでローレンに持ち掛けたのだが、姉を失火に見せかけて殺すことだった。

ハンナはローレンに対して、姉の悪いところばかり強調し続けていた。


それが功を奏したのかもしれない。


「あたしと一緒になるためにお願い」


と、甘え声と上目遣いで頼み込んだところ、ローレンはそれを引き受けてくれた。

睡眠作用のある薬の入った酒を姉に飲ませて眠らせたうえで、その夜、放火が実行される。


姉が死んだかどうかの確証はなかった。

骨が見つからず一時期には騒動にもなったのだけれど、ハンナにとっては、いなくなってくれればどういう形でもよかった。


やっと、邪魔ものがいなくなった。目の上のたんこぶが消えた。

そう思っていた。


だから姉の葬儀に出たときには、悲しい顔をしなければならないのに、どうしても笑みがこぼれてしまって、こらえるのが大変だった。


だが、今日からはもうそんな必要もない。

新しい王妃として、堂々と笑顔で過ごせばいいのだ。


なにせあの姉に、自分は完全に勝利したのだから。

ハンナはさらに酒をあおる。


「そろそろ時間です、ハンナ様」


そこへこうお呼びがかかって、ハンナはふらふらと立ち上がり、お披露目会の壇上へとのぼった。


そこで全員の注目を浴びながら、ローレンとダンスを踊り、キスを交わす。


ここからは永久に幸せな時間が待っている。もうなんの我慢もすることはない。

そんなふうに確信していたハンナだったが……


現実はそう甘いものではなかった。





お披露目会が無事に終わり、一月もしないうちにハンナ・カポリスはさっそく、理想と現実の差に、うち当たることとなる。


「……どういうこと、仕事が多すぎる!」


ハンナを待っていたのは、忙殺される日々だった。


そもそも仕事量が多いのに加えて、アストリッドの死によって、政治の一部がストップしてしまっていたことも重なり、仕事は山積み状態になっていたのだ。



そして、そんな状況にも関わらず、夫であるローレンはまったく仕事に関わろうとしなかった。

それで苦言を呈したところ、全国へのあいさつ回りだと称して、遊興の旅へと出てしまった。


理想とはまったく違う状況に、苛々が募っていた。


「ハンナ様。こちらの事業への補助金の件は――」

「もう勝手にしてくれる? あたし、疲れたから。というか、それ、あたしのサインじゃ無理でしょ」

「し、しかし、アストリッド様は――」

「もう、姉の話はしないで。オルセン王が帰ってきたら、彼にやらせて。あたし、もう無理だから」


報告をしようとしてくる役人をこう追い返して、執務室で一人、ため息をつく。


そこへ、


「アストリッド様なら、すぐに対応してくれたのに」


なんて声が扉の奥から漏れ聞こえてきて、ハンナは苛立ちから、机に拳を振り落とした。

あたりに鈍い音が響き、握った手がじんじんと痛む。



ハンナはたまらず、机の中にしまっていた酒を取り出すと、そのまま呷る。

消しても消えない姉の幻影から逃げるように、いっそう酒浸りになっていくのであった。




次回は、クズ元旦那・ローレンの回になります。


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