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この手紙を読む頃には、僕はこの世にいないことでしょう。
僕は今から木島咲良さんを殺害し、自殺します。
そう考え至った経緯を書き記します。
僕が運転していた車が事故を起こしてしまい、それが原因で咲良さんは左足が不自由になりました。
僕は咲良さんに許して欲しくてなんでもすると伝えたところ、僕にも足をなくせと言ってきたため、言われた通りにしました。
それでも咲良さんは僕を許してくれませんでした。
咲良さんは終始「それでも私の足は戻らない」と言っていました。
足を無くしてわかりましたが、大変不便な生活になりました。
僕はそれを自分で望んでやりました。
しかし彼女は違います。僕のせいで不自由になったのです。
僕はこの不自由さに耐えかねて、もう死んでしまいたいと思ったのです。
そして、きっと咲良さんも同じことを思っている。
そうに違いないと思います。
だから、僕が彼女を殺してあげれば良いと思いました。
だから、僕が彼女を殺害し、その後僕は自殺します。
これは、彼女の世界を地獄に変えてしまった僕の負うべき責任です。
でも、本当は、僕はただ警察官になりたくて勉強してて、それで、たまたま好きになった人には好きな人がいて、毎日一生懸命に生きていただけなのに、なんで報われないんだろうって思います。
すみません、私情が混ざってしまいました。
彼女はきっと、嫌がるでしょう。
自分だって嫌なのだから、仕方ない。
でも、これはもうしかたがないのです。
わかってもらうしかない。
僕は、自分のしたことの責任を取るだけです。
これが僕なりの正義です。
最後になりますが、
みなさん、お世話になりました。
応援ありがとうございました。
「…」
「…」
「よくこんなに長い文章を書いたものだね。」
「なんで音読したんですか。」
「救いようがない後輩をはずかしめてやろうかと思ってね。」
「そうですか。」
結局僕は、彼女を殺すことができなかった。
ナイフをとり、彼女の部屋に入り、彼女に跨ったところまでは良かったものの、その後に勇気は出ず、僕はなにもできなかった。それでは僕だけでも。と思ったが、それも怖くてできなかった。
自分は世界一の意気地無しだ。そう思った。
「なー、はじめくんさ、バスの中で、正義がどうとか言ってなかったっけ。そんなに一生懸命だった君がどうしてこんなことしちゃったの。」
「覚えていたんですね。」
「うん、思い出したよ。」
「僕は、彼女を殺害することが自分に課せられた責任だと思っていました。でも、踏みとどまりました。わかりません、もしかしたらただ意気地無しなだけかもしれない。でも、結果として、僕は彼女を殺害しませんでした。これは、僕の中にほんのちょっとだけ残っていた正義だったんだと思うんです。」