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第六話 仮面を脱ぎ捨てた一人の少女1

 異世界生活 八日目。


 朝、目が覚めるとすでに神楽坂達の姿は無く、ベッドが綺麗にメイキングされていた。俺も自分のベッドを整えてからリビングに出れば、すでに朝食の準備がされていた。


「あっ、おはようございます」


 最初に俺の事に気が付き、挨拶をしてくれたのはエプロン姿の九井だった。彼女は家事全般、その中でも特に料理と裁縫が得意らしく、自ら立候補したのだ。


「花垣君。早く顔洗って来てね」

「ん」


 九井と同じくエプロン姿の涼宮に促され、洗面所に向かった。顔を洗ってタオルを洗濯籠に放り入れて、もうタオルの補充が無い事に気が付く。


 やはり人数が増えた分、消費が激しい様だ。


 洗濯しても乾くまで時間がかかるし、新たに棚いっぱいにタオルを追加しておいた。


「にゃあ~っ、疲れてても朝の運動は気持ち良いにゃあ」

「そうね。強いて言えば木刀があれば嬉しかったけど」


 リビングに戻ると外で運動をしていたのか、汗をタオルで拭う神楽坂と朝比奈の姿があった。


 ふむ、木刀か。後で買い足して置こう。


「「「「「「いただきます」」」」」」


 朝食が並んだ食卓を囲み、食べ出す。


 やはり昨日の会議で役割分担をして正解だったと思えた。


 家に残り作業をするのは九井と涼宮、柊の三人だ。


 そして魔物を討伐して魔物を討伐するのは元々、武術を習っていた神楽坂。それと戦闘向きのスキルを持っていた朝比奈の両名だ。そこに俺が加わり、ちょうど三対三になる。


「そうだ、神楽坂。これやる」

「えっ? わっ。これって、刀……?」


 朝食を摂った後。乱雑に放り投げた一振りの刀を神楽坂が受け取る。


 深紅に燃ゆる造り、鞘から抜けば露わとなるのが美しく輝く白金色の刀身。一目で超一級品の刀だと、神楽坂は剣士の本能で察した。


「銘は鬼丸国綱だ」

「それって、天下五剣の!?」

「異世界版ってやつだな。切れ味が凄いし、素人の俺が持つよりも神楽坂が使った方が良いだろ」

「っ、あ、ありがとう……」


 神楽坂は鬼丸国綱を大切そうに抱きかかえながら、微笑んだ。


 妙に照れ臭いのでその笑顔から目を逸らし、俺は家を先に出ると二人も付いて来る。


「いってらっしゃい」

「ああ。昼までには戻って来るよ」


 罠にかかった魔物を殺し、コインに変えるだけならそう時間はかからない。


 だが今日は神楽坂と朝比奈にスキルの使い方を知ってもらうための日でもある。



神楽坂空乃 人間 女 17歳

レベル2

スキル 【絶対切断】、【神楽一刀流】、【神楽無刀流】、無想没我


【絶対切断】  ・・・万物を切り裂く、無情の権利

【神楽一刀流】 ・・・神楽坂一族秘伝の剣術。数々の流派が統合された、剣の集大成。

【神楽無刀流】 ・・・家具坂一族秘伝の体術。空手、柔術、合気道を織り交ぜた型がある。

無想没我   ・・・無心になる事で今までの鍛錬により培われた己の真価が発揮される。



朝比奈愛依 人間 女 17歳

レベル1

スキル 【変身(トランスフォーム)】、疾走


変身(トランスフォーム)】 ・・・己の身体の一部を相対した事がある生物のものに変化させられる。そして、その性質を受け継ぐ。

疾走 ・・・1分間走り続けるとその度に1,2倍、走力が上昇する。その上限は無い。



 どちらも強力なスキルだ。


 しかし使おうと思って使わないと、スキルはその効力を発揮しない。


 流派がスキルにまでなっている神楽坂ならば、何も考えずにスキルを使えていたかもしれないが、剣を持っていなければ意味が無い。


 しかしレベルが上がっているのだから、魔物は倒しているのだろう。


 逃亡中に何があったのかは、いまだに聞けずにいた。


 それは彼女達が意図的にその話を避けている様に思えるからだ。


 まあいずれ、話してくれる時まで待つとしよう。


「自分達が罠にかからないように気を付けてくれ。それと潜んでいるかもしれない魔物に気を付けてな」


 罠エリアに近付き、注意を告げる。


 パーティに入ったおかげで俺が開いているメニュー画面が見れる様になったので、当然マップも見る事が出来る。だが念のためだ。


 魔物の情報についても、ひとまず「所有地周辺に生息する低級の魔物の情報」を購入し、二人には読ませておいた。魔物に対する対応は大丈夫だろう。


 最初に見つけたのは、ゴブリンだ。足を罠に絡めとられ、その場から逃げ出せずにいた。だがまだ元気はある様で、俺達を見るやいなや飛びかかり、殺そうとして来た狂暴な魔物だ。


「神楽坂、やってみろ」

「うん」


 まずは神楽坂だ。


 先に魔物を殺す事になる、と告げていたおかげで覚悟はすでに出来ていたらしい。


 腰に差していた鬼丸国綱に手をかけ、集中する。


 緊張状態が高まり、瞬間。


「神楽一刀流 “三滴一閃”」


 抜刀。


 目にも止まらぬ神速の刃が、ゴブリンを四切れに両断した。


「ふぅ」

「おお」

「凄いにゃあ、空乃っち」


 キン、と鞘に戻した神楽坂に拍手を送る。


 本人は少し照れ臭そうに「……どうも」と頬を掻いて返事をするが、本当に凄い技だ。


 これだけの領域に達するのに、一体どれだけの鍛錬を積んだのか、想像も付かない。


 だが神楽坂が強いのと、生き物を殺しても大丈夫かは別問題だ。


「どうだ?」

「うん……、凄く良い感じかも。今までに無いくらい綺麗に型が決まったし、この刀の切れ味も凄いよ……」


 そういう事を聞いたわけじゃなかったんだが……。


 まあ、こういう返答が出来るなら神楽坂も大丈夫そうだ。

夢想没我は使おうと思っても使えるものじゃないし、極限状態ならば集中力が高まって発動するかもしれない。


 【神楽坂無刀流】は魔物相手には危険だと思い、一人で型の確認をして貰った。恐らく発動しているであろう、との事だ。


 そして【絶対切断】。このスキルに関しては使用禁止させて貰った。理由は危険すぎるからだ。

何故なら、万物を切り裂くという一文通り、このスキルは俺の【世界遊戯】ですら両断しかねない。そうなればこの安全な生活はなくなり、再び魔物から逃げ惑う生活に逆戻りしてしまうだろう。


 そう説明すると神楽坂は了承してくれた。


「次は朝比奈だな」

「にゃあ!」


 元気よく返事する朝比奈は、やる気満々な様子でスキルを発動した。


 今度の相手も罠に足を絡めとられ、動けないゴブリンだ。


「【変身(トランスフォーム)】!」


 【変身】は想像力によって上下するスキルだ。


 一度見た事がある動物ならば大抵何でも変身出来る。


「にゃ!」


 朝比奈が選んだ動物は、狼。


 その鋭い爪を再現し、ゴブリンの喉笛を掻き切った。


 大量の鮮血が舞う。


 問題無いようだ。


 その後はひたすらに実験を繰り返した。


 スキルを使いこなせる様に魔物を倒し、時には俺がやっていた様に投げ槍の練習もした。昨晩に罠の数を増やしていたおかげもあって、70万コインも稼ぎが出来たのは成功だっただろう。




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