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第十一話 レベル2



 レベル2 達成




 歓喜に湧くと同時に、鬼の死骸を前にして冷静さを取り戻した。

とりあえず処分のために売ると、1億コインに返還される。


「レベル2に上がったの?」


 メニュー画面で解放された新しい要素に目を奪われていると、所有地内から空乃が話しかけて来た。


 とりあえず鬼を売ったのだから、終わったという事は分かっている様だ。鬼がいた土地を買い取り、所有地にすると涼宮達も集まって来た。


「ああ。ちゃんとレベルアップして、【世界遊戯】もパワーアップしているな」


 空乃達に見える様にメニューを広げた。


 レベル2に上がって解放された機能はいくつもある。


 その中でも特筆すべきなのは……。


「魔道具が買える様になっているな」

「まどうぐ……?」


 聞き馴染みの無い言葉に女性陣は首を傾げた。


 確かに普段から漫画やラノベを読んでいないと、ぱっと来ない言葉だな。


 メニュー画面から購入できる魔道具を捲っていると、武器の欄。その中で剣を見付けたので、自然と空乃に話を振った。


「空乃。炎剣(ファイヤソード)いるか?」

「いやあ、今のところいらないかなあ……。というか、それって熱く無いの?」

「どうだろうな。まあ、斬るってより焼くに近いと思うけど」

「なら私は大丈夫よ。だって、薫から貰った剣(鬼丸国綱)があるし」

「……そっか」


 預かりっぱなしだった鬼丸国綱を手渡すと、空乃は大切そうに抱き締めた。


 その仕草も、声色も本当に大切にしてくれているんだな、と嬉しくなる。


 妙に生暖かい視線を向けて来る朝比奈がいるので、とりあえず


「とりあえず帰ってみんなで話し合おうか。1億コインの使い道も考えないといけないからな」

「そうね」


 俺の言葉に反対意見は出なかった。


 皆で家に戻ると心配そうな顔をした九井が出迎えてくれた。


 皆の身体に一つも怪我がないところを見て、ほっと息を吐いた。


「九井。これから会議をしよう。無事にレベル2に上がれたからな」

「そ、そうなんですね! すぐに飲み物の準備をします!」


 用意して貰ったお茶が食卓に並び、俺達は皆でメニュー画面を覗き込んだ。


「とりあえず大きく変わった事は、パーティメンバーにメニューを見る権限を与えられるようになったらしい」

「えっ。凄い」

「それぞれコインで買い物も出来るから、みんなにコインを分けて行くぞ」


 流石にコインは全額共有にはしなかった。


 小遣い制で、それぞれのメニューに振り込むことは出来たので金額を相談しながら振り込んで行く。


 涼宮、空乃、朝比奈、柊の四人は月に三万コイン。そして九井には100万コインだ。


「ええっ!? わ、わた、私が100万円も!?」


 九井は眼鏡がずり落ちそうになるほど、机から飛び跳ねて驚いた。


 だが九井が何を驚いているのかが分からない。


「当たり前だろ。九井は家事の責任者なんだ。経費も合わせたら、このぐらいあっても良いだろ」


 信頼してるから、任せたぞ。そう言うと九井はじんわりと瞳に涙を溜め、感激に肩を震わせた。


 そんな姿を見て、朝比奈も便乗して「美味しいご飯を頼むにゃあ!」と言う。嗚咽を零さないように両手で顔を覆っている九井の返事はただ頷くだけだった。


 メニュー画面を操作できる様になったと言っても、全部が自由自在というわけじゃない。


 購入できると言っても土地や魔道具は買えない。それに他人のスキルや物品の品質までは見られない様だ。


 だが、マップの情報を共有することは可能だった。マップにメモを書き込むことで、疑似遠隔会話が可能となったわけだ。


「花垣君、他に何か出来る様になったの?」

「いや、この二つだな。少し買えるものが増えた程度はあるけど」


 ただ、レベル2になって格段に便利になったのは確かだ。


 大きな買い物以外なら九井がやってくれるのは非常に楽で良い。


「さて。次は1億コインの使い道について話そうか」

「私は貯金で良いと思うな。今のところ困った事は無いし」

「私もだにゃあ」


 涼宮と朝比奈は貯金派、か。


 まあ二人とも物欲が無いし、朝比奈に至っては外で走るだけで満足ってタイプだからな。運動靴やハンモックなど、自分の小遣いで購入可能だからこその意見だろう。


「わ、私は冷蔵庫のような魔道具があれば便利かなあ、と思って……」


 九井の意見はごもっともだ。冷蔵庫があれば生活水準が数倍上がると言っても過言じゃない。オレンジジュースなどを購入して保存しておけば、一々メニューを開いて購入しなくてもいつでも飲めるんだ。


「よし、後で買っておこう」

「あ、ありがとうございます!」


 一緒に暮らし始めて気付いたが、九井の料理の腕前はかなり高い。プロとは少し違うが、温かみを感じさせる家庭料理を良く作ってくれる。


 みんな九井の料理を気に入っているし、九井が必要と言うならば文句ないだろう。


「柊は……」

「…………」


 いつもの様に柊の返事は無く無言だ。


 もう一週間経つが柊が喋っているところを見たことが無い。


 いつも何を考えているのか、窓から遠くを眺めている気がする。


 孤高のギャルとの共同生活は思ったよりも大変だ。


「それじゃあ今日の会議は終わりだな」

「オーガの気配に怯えて魔物は罠に掛からないし、暇だね」

「……せっかくの1億コインだし、外でバーベキューでもしようか」

「本当かにゃあっ!?」

「ああ。九井、食材の準備を任せても良いか?」

「勿論です!」


 なら俺はバーベキュー用品を買って、炭を焚こう。


 勝利の宴だ。




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