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第十話 復讐鬼3

 異世界生活 十六日目。


「涼宮、本当に大丈夫か?」

「うん。こうなったのは私のせいでもあるから」


 ボウガンを持つ涼宮が頷いた。背負っている矢筒には大量の矢が入っている。


 まともに槍も投げられない涼宮が鬼に攻撃するにはこういう手段しかないからな。


 今日までにボウガンの扱い方はしっかりと覚え、的に当たるようになった。


 その眼には迷い一つ無く、鬼を殺す。そう覚悟している様だ。


「…………」


 あれから空乃は涼宮と一言も話していない。


 決して罵り合いをしたわけじゃない。寝る時も隣だし、食事の際に軽い会話くらいはする。ただ気まずいんだと思う。


 涼宮の頑固なところも、空乃の正しさも良く分かっているつもりだ。


 何かきっかけがあれば、二人ともまた話せる様になるだろう。


 俺が五十キログラムの牛肉を買い、たっぷりの毒を振りかけて鬼の眼前に放り投げた。


「食え」

「グル……」


 最初、鬼は訝しんでいたが、空腹に耐えきれなくなったのか一気に喰らいついた。あっという間に牛肉が消えると、鬼は震え出す。


 毒の種類は良く知らないが、あの量の毒を摂取すると致死量を超えるらしい。人外の怪物である鬼であっても、身体を侵されるのは時間の問題だ。


「作戦実行だ」

「はい」

「うん」

「にゃあ」


 それぞれ、荷物を持ち四方に回った。


 俺と空乃が持つのは槍。涼宮はボウガン。

扱うのが難しいが、運動神経が良い朝比奈ならば使いこなせると思い、刃が付いたブーメランを選んでいた。


 そして息を揃え、一斉掃射する。



――――オオオオオオオオッッ!!――――



 断末魔の叫びとはこういうものなのだろうか。


 鋼鉄を思わせる鬼の皮膚と買った情報から得ていたが、弱った鬼の皮膚は人間と同様の脆さを持っていた。


 鉄の槍でその身は切り裂かれ、ボウガンから放たれる矢は皮膚を貫き穿つ。


 何本もの槍や矢が突き刺さり、まるでウニの様な姿となっていた。


 涼宮は終始、辛そうな顔をしていた。ただでさえ、人の善意を疑わないような優しい人間だ。例え大山を殺した張本人であっても、無抵抗のまま嬲るのは辛いのだろう。


 空乃は歯を食いしばって耐えていた。剣士としての矜持(プライド)が傷付いても、それでも槍を投げた。


 そして。


「よし、もういいぞ!」


 一声かけると、皆が攻撃をやめた。


 もう鬼は死ぬ寸前、息も絶え絶えだった。


 レベルアップの条件はおそらく、魔物を倒す事だ。


 逃亡中の空乃は何度か魔物を絞め殺したらしい。


 話を聞く限り、他には何も無かったと言っていた。


「空乃。借りるぞ」

「うん。気を付けて」


 俺は空乃から鬼丸国綱を借りて、所有地の外へ出た。


 ほとんど動けない鬼の前に立つ。


「グ」


 鬼は何も喋らない。


 だが、その眼は訴えていた。


 助けてくれ、と。やめろ、と。


「まさか非人道的だ、なんて言わないよな」


 ここは異世界だ。護るべき法律も、モラルも存在しない。


「じゃあな、オーガ」

「ガ、ァ」


 鬼丸国綱を振り下ろす。


 その一刀は鬼の頭を割り、血が噴き出る。


 少しの間、ピクピクと動いていたが、数分もしない内に動かなくなった。



レベル2 達成



メニュー画面が突然開き、その文字が現れた。




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