再会と出会い
ある学校の教室に卒業生達が学校の休憩時間のように楽しく話していた。
「久しぶり!」
「今何してるの?」
「出版社に行ってるよ。」
「えーすごいなぁ~。私はITだよ」
それぞれ近況を話している。
集合の時間になったので会話していた内の二人が黒板の前に立つ。
「はーい!皆さんお静かに!」
女性が話し出した。
「打ち合わせ始めるぞ!」
男性もそれに続く。
「おぉ~ナツい。評議コンビじゃん!」
誰かが冷やかした。
「てか、今日は同窓会だと思ってきたんだけど~。どうして教室集合なんだよぉ~」
飲み会を楽しみに来ていた者もいた
「あ~、会場は後で言うからとりあえず出席確認していい?」
司会の仁が皆に聞く。
「じゃあ、確認していくね!」
もうひとりの司会の玲麗も出席番号順に声をかけに皆楽しそうに返事をしていく。
そして、名簿をチェックした後
「んー20人中15人が出席か。まずまずね」
「残りの5人は海外組だよ」
クラスの誰かが言った。
「教官は今日はいないの?」
その質問に仁が答える
「あー今日は来ないかな。声はかけたんだけどねぇ~」
残念そうな表情をした後、気を取り直して仁が説明を始める。
「えーっと、今回はわれらが母校にこうやって集合したけど、この同窓会をきっかけにみんなで会いですと教官に相談したら教官が在籍している施設を使用する許可をもらいました。でもセキュリティーが厳しいので身分証明書を作ったんだよ!ここに皆の手帳があるから後で配布するね。その時に両目の網膜をスキャンするのでよろしくね。この二つが施設に入るカギとなるので両方無くさないようにしてね」
「眼球無くすとかなくない?」
「ん~。分かんないじゃん。そんなの」仁はニコッと笑った。
仁の笑顔に元クラスの皆は無くなることがあるかもしれないと思った。
仁と玲羅の説明も終わり、元クラスメイトには先に同窓会の会場へと移動してもらう。
教室に残った二人は今日参加していない人たちの人数と手帳の数が合っているか確認する。
「私たちは、先に教官に会いに行くのよね?」」
「うん、教官に呼ばれているしね」
「仁はたしか高等部卒業して以来だよね。」
喜ぶ玲羅を見て仁も笑いながら
「そうだね。年取ってるのかな?」
「もうおじさんだよね」
「怒られるよ?」
と仁は言いながらそっと玲麗の手を握って
「さっさと教官に報告して僕たちも会場に合流しよう!」
「うん」
仁は急に玲麗の手をグイっと引っ張ると二人で走りながら教室を出た。
学校を出て10分ぐらい歩くと教官がいる建物についた。
異次元科学未来研究所(DDF Lab)
大型の工場の様な外観を見渡しゲートの守衛に今日会う予定の教官の氏名と面会予定時間を告げる
「久城教官に16時から面会予約入れているのですが…。」
仁は初めてこの施設に入るので少し緊張気味に伝える
隣でニヤニヤしながら緊張している仁を玲麗が見ている。
「は~い。ちょっと待ってね」
守衛がタブレットで確認した後、内線で久城に確認の連絡を取る。
「はい、はい。わかりました。えっと、懇談室ですね」
守衛は内線を切ると、仁に向かって。
「はい。確認できました。仁君と玲麗さんですね。さっきの内線聞こえてたと思うけど、懇談室に来てほしいそうです。場所はまた施設内に入ったら確認してください」
そう言いながら、守衛は人用のゲートを開ける
「はいどうぞ~。出るときもこのゲートを通って守衛に退出の報告をお願いしますね」
二人を見送りながら説明してくれたので仁と玲麗はお辞儀をして敷地内に入っていった。
広大な敷地にはいくつもの建物があった。小さい町ぐらい入りそうで実際に住んでいる人もいるという話を聞いたのは教官に会ってからだった。
「仁、さっき緊張してたでしょ?」
玲麗は思い出しニヤニヤをしながら話しかけた。
「玲麗は緊張しないの?こんな大きな場所でさぁ~」
「え~だって何度か来てるからね!」
「そうなんだ?」
仁はしばらく考えてから
「だったら、玲麗が受付してくれても良かっただろ!」
この緊張を返せよ!と少し怒りながら玲麗に訴えると。
「まあまあ、いい経験じゃない」
と笑って誤魔化された。
玲麗にからかわれていると目的の施設に辿り着く、中に入ると受付の女性が立ち上がる
「お待ちしておりました。早速ですが身元確認をさせていただきます」
と言いながら先ほどの手帳の確認と眼球のスキャンを行った。
それをタブレットで確認した後
「はい、玲麗様と仁様ですね。面会場所は、懇談室ですか…。久城教官は本館二階を予約しているみたいなのでそこへ移動をお願いします。」
受付の女性に施設の地図に印を付けてもらいそれを渡された。
「誠に申し訳ございませんが、機密上その地図は久城教官に返却してくださいね」
ニコリと微笑みながら受付の女性に言われた。
「はい。分かりました」
仁は素直に答えた。
目的地には迷わずに着き目の前の大きなドアをノックすると間延びした声で
「どうぞ〜」
と懐かしい声が聞こえてくる。
仁と玲麗は目を合わせて少しクスりと笑ってから
「失礼します~」
と言いながら入室した。
教室の半分ぐらいの広さの場所には小さなホワイトボードと長机とイスのセットがいくつか置かれていた。
そこには懐かしい人が施設の制服らしきものに身を包み綺麗な姿勢で座っていた。
仁達は思わず声を掛けようとしたがその隣に見慣れない男女のカップルが座っている。
女の子の方はソワソワしながらこちらを見つめ、男性の方はつまらなさそうにソワソワしている女の子の方を見ていた。
「玲麗さん、仁くんいらっしゃい!さあこちらに座りましょうか」
久城が指定してきた場所は、そのカップルの向かい側に位置する場所だった。
二人とももう一度小さく「失礼します」と言うと席に着いた。
久城は4人を見た後、仁と玲麗の方を見ながら
「ちょっと訳があってこの二人の面倒を僕が見ることになったんだよ。君たちにも顔合わせがしたくて今日はちょうど良い機会だったから紹介させてね」
そう言って、女の子の方をみて
「僕の教え子達です。担任だったから後18人いるよ。この二人は代表も兼ねているので先に紹介させてね」
「は~い」
女の子は元気よく返事をした。男性の方は反応がない。
玲麗が仁を見てから
「えっと、じゃあ私から自己紹介するね。名前は玲麗です。苗字も一応あるけどここではあまり意味がないから名前でしか呼ばないの。よろしくね」
優等生の玲麗はそつなく自己紹介を終える。
仁はそんな玲麗を少しうらやましく思いながら
「僕は、仁です。玲麗と一緒に評議をやっていました?今はもう学校に在籍していなから過去形でいいんだよね?」
仁は不安になったので久城と玲麗に確認をとる。
「え~、まだ評議でいいじゃん!」
「僕は、少し寂しいですねぇ~」
玲麗と久城は仁をからかうように返事をした。
そんなやりとりをしていると女の子が笑いながら
「皆さん仲がいいんですね。では、次は私ですね。高橋いちなといいます。多分18歳ぐらいかな?一応高校は卒業しています。」
と一通り自己紹介した後、隣の男性の方を見ながら
「この人はルークです。えっルークって幾つなの?」
いちなは思い出したようにルークと呼んでいる男性に年齢を聞き始めた。
ルークはそんなことも知らなかったのかと言いたげに眉間に皺をよせると
「…20才だ」と相変わらず不愛想に答えた。
それを苦笑いしながら
「だそうです。ほらっルークも自己紹介しなよ?」
といちなが肘で突っつきながらルークを急かした。
ルークは仁と玲麗をパット見た後
「ルークだ。」
と一言だけ話す。
玲麗はしみじみと
「いちなちゃんとルー君ね」
と二人の名前を呼び返した。
いちは、玲麗のルー君呼びにはまったらしく、小さく肩を震わせた。
「ルー君だって…。フフ、フフフ。私もこっちではそう呼んでもいい?」
嬉しそうにルークに向かって許可を求めるいちなにルークは反対の方をプイっと向きながら
「…。まぁ~イチナがそう呼びたければ呼ぶがいい」
と目を合わさずに許可を出した。
そんな二人のやりとりを見ながら仁は思わず
「なんか、ルー君って王子様みたいだねぇ~」
と感心しながら呟いた。
いちなの外見は普通の女子高校生みたいな雰囲気だが、ルークに関しては金髪にスカイブルーの瞳とかなり第一印象が美人さんだったが、口調は本当に王子様のようだった。
ただし、それは気心がしれているいちなに対してだけだったが。
仁に発言にルークの肩が一瞬ビクっとしたがすぐに元に戻り
「そのような…高貴なものではないから案ずるな」
とフォローになっていないお言葉をもらっていたのだった。
そんな会話を見ていた久城が
「いやぁ~こんな短期間で仲良くなるなんてみんなすごくいい子だねぇ~」
と感心しながら眺めていた。
『仲良くなってるわけではない!』
と四人それぞれ思っていたが表情には出さずに愛想笑いをしていた。
DDF LaB
Different dimension future laboratoryの略 直訳っす。
更新頻度は遅いです。すみません。
最後までお読みいただきありがとうございました。