制度と推薦
こちらの元の1話目を削除する為に少しだけ投稿します。
続きはしらばくお待ちください。
ビルに備え付けの巨大スクリーンからニュースが流れる。
『未来こども教育省が、長期的中高等生活設計指導要項を発表しました。対象となる年齢の児童がいるご家庭は通学している初等部の…。』
このニュースを見ながら母親とみられる女性二人が会話を始める。
「あー今年だったんだぁ~。」
「そうね!うちは対象外だわ!」
「うちもよ。1年早かった!」
「残念ね。」
他愛のない会話が続く。
「長期的中高等生活指導要項」は数年に一度発表され、対象になった児童が指定された学校で6年間学ぶ制度だ。学習内容や進路実績は秘匿されている。どのような意図があるかは関連の教育機関しか知らされていない。ただ、入学者は成功者が多いと噂されている為、入学の希望は多い。学校に在籍している期間は寮生活で必要経費は国から捻出されている。保護者が支出するのは子どもが私用で使うお小遣い程度だった。
※※※
初等部の職員室、学校長と副校長と最終学年の主任の三人が休日出勤し学校長の部屋で秘密裡に会議をしている。
「今期もわが校から何人か推薦するように未来こども教育省から来ています」
学校長が重い口を開く
「非常に光栄なことなんですけどね」
副校長が感想を述べる。
「この…。推薦条件は何といっていいのか。僕は判断しかねますよ」
条件が記載されている用紙には赤文字で極秘と記載されている。学年主任の谷口は重い溜息をつく。
条件内容には、偏差値・運動神経・容姿・性格など事細かく記載されていた。
偏った条件に谷口は思わず上司に問いかけた。
「一体何をしたいのでしょうね」
「それは深く考えてはいけないよ」
「選ばれた子はきっと明るい未来が待っているんだから。我々はその背中を押してあげると考えてあげればいいんだよ。」
副校長は谷口に優しく説き伏せる。
学校長はそんな二人の会話を無視して生徒たちの情報が載っているタブレットを見る。
「まぁ~、条件が厳しい分振り分けはそこまで難しくはないと思いますがね」
そういいながら学校長は条件検索をかけていく。
谷口は、児童一人ひとりの顔写真を見ながらそれぞれとした会話や出来事を思い出す。
学校長や副学長とは違い授業や行事で密接に関わっている分、親近感がある。
天才的な賢さは求めず、従順的でできれば容姿端麗の方がいい…なんて
教師のカンがこの推薦は危険だと警鐘をならしている。
しかし、拒否できるわけもなく対象者となる児童を選ぶ。
指定された用紙に必要事項と写真を貼り学長と副校長のダブルチェックを受けた後満足そうに学長印を押す。
ドンッ
谷口にはそれがやけに重い音に感じた。
この物語はフィクションです。
実在する制度や人物や団体などは関係ありません。
最後までお読みいただきありがとうございました。