油断大敵
「……すごい」
思わずそう零していた。
目の前で繰り広げられている戦闘はアニメでしか見たことのない景色――
目で追えないほどの早い斬撃の応酬。
なにより、あの化け物にホークが一歩も引かないことが驚きだった。
『とんでもない魔族に襲われたら置いて逃げるかもな』ホークの言葉が頭をよぎった。
ジークフリートはとんでもない魔族なんじゃないかと思う。
それでも、ホークはアタシのために戦っている。
守って、と頼んだのはアタシだけど、律儀に守ってくれていることに素直に感動した。
アタシにもなにかできることは……そう思って足元の石を拾う。
これをアイツに投げつけて……と思ったが、二人の動きが速すぎて当たる気がしない。
第一、当たっとしてどれほどのダメージを与えられるか、疑問よね……
二人が距離をおいて睨み合う。
ホークは肩で息をしている。身体中傷だらけで幾筋もの血が見えた。
折れた左腕が力なくだらんと垂れ下がっている。
「もう終わりかな?」
ジークフリートが悪戯っぽい笑みでホークを誘っていた。
ホークと違ってジークフリートは余裕一杯。
ホークの必死の攻撃は掠りもしていない。
「はっ、まだまだ余裕だね」
ホークも鼻で笑って相手を挑発する。
全然余裕があるようには見えない。
ホークは折れた左腕を庇っているんだろう。剣を持つ右側を正面にして横向きにジークフリートに相対していた。
先にホークが動く。
何度か攻撃を受け止められた後、ホークは相手の右前に大きく飛び出す。
姿勢を低くし、渾身の突きを繰り出していた。
ジークフリートは余裕の表情で受け止める。
だが、次の瞬間、余裕の表情が歪んだ。
今、何が……?
「……油断大敵、だぜ」
ホークがそう言った瞬間、強烈な一撃を受けて吹っ飛んでいた。
バラバラと瓦礫が崩れる音があたりに響いた。




