ツンデレ…なのか?
「……バカ。死んじゃえ」
命の恩人に言うセリフかよ。まったくーーなんてガキだ。
こんなお荷物はとっとと城に避難させて団長たちと合流しなくちゃな。
「とにかく、城に向かう。他の住民も避難しているだろうからな」
剣を腰に挿してクリスに右手を差し出す。
何事か躊躇しながらも、クリスは手を握ってきた。
その手はひんやりと冷たかった。
「大丈夫さ、俺が守ってやるって言ってるだろ?」
そう言って微笑みかけた。
正直、左腕がズキズキ傷んでそれどころじゃない。
「うっさい、バカ。早く連れていきなさいよ」
……俺の笑顔、引きつってたかな?
クリスの手を引いて城門に向けて歩き出す。
彼女はうつむき加減で黙っているが、しっかりと手を握ってついてくる。
教会群を抜けて城の西門から入ろう。
正門は民衆でごった返しているだろう。
俺たちが歩いてきた方向へバタバタと僧兵が駆け出している。
監禁された時に聖王騎士団の身分を示すものを奪われている。そのせいか素通りさせてくれた。
僧兵全員がクリスの顔を見知っている訳でもないようだ。
「ちょっと待って!」
不意にクリスが大声を出して立ち止まる。
「どうした?」
クリスは無言で目の前の瓦礫の山から一本の棒きれを拾う。
「……左腕、出して」
「お?おう……」
ビリビリと既にボロボロになったスカートの裾を裂くと、拾った棒きれを添え木にし、俺の左腕を固定する。
「少しはマシでしょ?アタシを守ってこんな風になったんだから……何もしないのは○☓△」
こちらに目線をくれず、うつむき加減にボソボソと言う。最後の方は何を言っているのか聞き取れなかった。
少しは感謝されている……のか?
「ありがとな。意外と気が利くんだな」
礼を言ってクリスの頭を撫でる。背は俺の肩くらいまでしかない。150センチくらいだろうか。
うつむいたまま顔をあげず、そのまま歩みを進める。数メートル歩いた時だった。
「べ、別にアンタのためじゃないんだから!アンタが戦えなくなったら誰がアタシを守るのよ!!」
顔を真赤にしながらこちらに猛抗議してきた。
「馴れ馴れしく撫でないでよ!痴漢!変態っ!!」
「おいおい……またそれかよ……。
兵隊も一杯いる中で止めてくれないか……」
騒ぎになってはマズい。クリスを掴んで口を押さえようとすると……
「お・ま・わ・り・さーん!!」
「こ、こら、止めろ!」
「おい、お前たち!」
案の定、僧兵が数名近づいてきた。
「フン、ざまぁないわね」
「お前なぁ……お前もあいつらに捕まってたんじゃないのかよ」
「……あっ!」
自分で呼んでおいて、今更気づいたらしい。
「お嬢さん、大丈夫ですか?」
僧兵が二人、長い錫杖を構えている。錫杖と言っても先には細長い刃が付いており、槍として使用もできるものだ。
「ちょっと、何とかしなさいよ」
当のクリスは俺の背中に身を隠し、小声で命令してきた。素早い……
「いや、なんでもない。ただの痴話喧嘩さ。なぁ?」
「……(コクコク)」
クリスは他人の背中に隠れて無言で頷いている。
「この一大事に下らないことで騒ぎを起こすな」
「……まったく」
僧兵二人は迷惑そうな顔をすると踵を返す。
「危なかった……」
そう、俺が一息ついたときだった――
キラッ
空で何かが光ったように見えた。
次の瞬間、大きな地響きとともに、甲冑を着込んだ男が地面に叩きつけられるのが見えた。




