約束
「じゃぁ、約束しなさい。アナタ、私を守るの。いい?」
スカートの裾を必死に抑えながら、目の前で這いつくばっている男に約束させる。
油断も隙もない。やっぱりこの男は変態なんだ。好きあらばアタシのパンツを覗こうとする。
「アタシはえらいえら〜いお姫様なのよ。だから、よくわかんない魔物から狙われてるの。アナタを私の騎士にしてあげるわ。だから、私を守りなさい」
偉いのかどうかはわからないけど、ガブリエルはアタシを”姫”と呼んでいた。
きっとアタシはこの世界にお姫様として転生したに違いない。
またいつ同じ目に合うかわからないのだから、味方は作っておかなくっちゃね。
「分かった、分かった。守ってやるよ、だから解いてくれ」
「守ってやる?」
「守らせていただきます!私めは貴方の騎士になります!!」
とりあえず、下僕二号をゲットね。一号はあのいけ好かないガブリエルだけど。
「アナタ、名前は?」
縛られた縄を解きながら問いかける。
「ホークだ。一応、現役で騎士なんだが……」
「あ、た、し、の、騎士にしてあげるって言ってるの!」
「……へいへい。貴方様の騎士ね。まだ解けないのか?」
きつく縛ってあってなかなか結び目が解けない。
どしん……、どしん……
周囲に重低音の足音。それに合わせて地面が揺れている。
「な、何!?アレ??巨人!??」
目の前に七〜八メートルはあろうかという緑色で半裸の巨人が歩いていた。
目は一つ目……さっきジークフリートが言っていたギガンテスってやつかしら……
手には大木と言っていいほどの大きさの棍棒を持っている。
あんなの振り下ろされたらぺちゃんこになっちゃうわね……
「ヤバい状況だって分かったろ?早く解いてくれ」
「分かってるわよ、やってるでしょ!?」
また怖くて手が震えだした。
それを抑えて一生懸命解こうとするのだが、焦ってしまってうまく縄が緩まない。
チラチラと巨人を見ながら、作業をしていると……
あ……目が合った。
ギガンテスの1つ目と目が合った。
あちらもこちらに気づいたみたいで、踵を返してこちらに近づいてくる。
ずしん、ずしん
「ば、バカ、気づかれたぞ!!早くしろよ!!」
「バカとは何よ!!」
「いいから早く解け!!」
なによ、この無神経な男。アタシだって一生懸命やってるわよ!!
わたわたと慌てて手を動かす。解けてきた。もう少し……
「外れた!」
声を上げると、ホークがアタシに抱きついてきた。
「ちょ、ちょ、ちょ……!?何するのよっ!?」
そのまま抱きかかえられると、ホークは地面を蹴り、大きく跳躍した。
同時に、ギガンテスが大きな棍棒を振り下ろすのが見えた。
ドーン!と轟音が響き渡る。
衝撃で吹き飛ばされ、地面に転がった。
「怪我はないか……?」
気がつくとアタシはホークに抱きしめられていた。
地面に落下する瞬間に彼は体を捻ってアタシを身体の上に乗せかばってくれたみたいだった。
怖い……
アタシは彼の腕の中で小さく縮こまって震えることしかできなかった。
「だ、大丈夫よ!」
声だけは振り絞って気丈に答えた。
むき出しの殺意が目の前に迫っている……アタシはどうなるんだろう……
「嘘つけ。唇切ってるぞ。」
ホークはアタシの頭を軽く撫でて、優しげに微笑んだ。
どくん、と胸の鼓動が早くなるのを感じた。
「な、な、何よ……、早くどきなさい……よ。」
ホークが上半身を起こし振り返る。地面が深くえぐられ、棍棒の頭半分ほどが埋まっていた。
あれにつぶされていたら……、背筋に寒いものが走る。
「アタシを守ってくれる……のよね……?」
ホークへ問いかける。ホークはちらっと振り返るとにっこりと笑って見せた。




