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私にだって救える世界がある!  作者: 小鳥遊葵
第一章 聖都ヴェストファーレン
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懇願

 こいつは一体どういうことだ。


 目の前が暗く、右頬に冷たい地面を感じる。

 だが、左側は柔らかい。しかも、生暖かいときてる。

 暗闇に目が慣れてきたのか、それともその暗闇が、布を被せられていただけだからなのか、自分の置かれた状況が次第に理解できてきた。

 左頬の感触は、少し前に感じた覚えがある。

 横目で見上げると、そこにはプリッとした肉付きの良い尻と、清潔感のある白い下着が見える。どうやらこの暗闇は……スカートの中か――


 「おい、早くその重いケツを――」

 「変態っ!!」

 言い終わるより先にそれは素早く立ち上がると、俺の頭を踏みつけた。

 「変態っ!!変態っ!!変態っ!!」

 何度も、何度も、踏みつけられる。何故だ――納得できない。


 ひとしきり踏みつけると気が済んだのか、裾の埃を払い、身だしなみを整えている。

 目の前には先程俺を僧兵どもに売った少女が仁王立ちしていた。

 「一日に二度もアタシのお尻に頬ずりして、気持ち悪いっ!」


 こんなに理不尽なことはない……


 「ちょっと待て!俺が悪いのか!?俺が何したんだ!?さっきも今も、お前が俺の上に降ってきたんだろ!!」

 猛然と抗議したが、後ろ手に縛られており、なんとも無様な吠えっぷりだ。

 俺を縛りつけていた柱は建物と一緒に倒壊したが、手は縛られたままだった。

 どうやら、彼女は俺より上の階にいたようだ。建物が倒壊した際に落ちてきたらしい。しかし、一度ならず二度までも尻に敷くとは……何て女だ。


 「悪いわよ!」

 頬をぷっくりと膨らませると言い放った。

 「こういう時はお姫様抱っこで受け止めるものでしょ!そしてこう言うの、『親方、空から女の子が!』って。」

 「……なんの話だ……」

 親方って誰だよ……そもそも、縛られてて抱きとめれねーよ。

 「そして、空賊と一緒に空飛ぶ城を探しに行くのよっ!」

 意味がわからないよ。


 「……盛り上がってるところ申し訳ないんだが、この縄を解いちゃくれないか?」

 俺は腹ばいで少女を見上げて懇願した。

 「……。それが人にものを頼む態度かしら?」

 この女――俺が哀れな蓑虫状態で這いつくばっているのを見て、自分が上位に立っていると確信したのだろう。随分と居丈高に言いやがる。

 「……解いてください、お願いします。」

 俺は精一杯の作り笑いで応じた。

 「クリス様、どうかこの哀れな私の縄を解いてください、ね。」

 このクソガキ、クリスという名前なのか……一体何様のつもりなのか。

 腹は立つが、ここは自由になるのが優先だ。

 「……クリス様、どうかこの哀れな私の縄を解いてください」

 「ダメ、ダメ。やっぱ、謙虚さが足りないわね。アタシの靴にキスするの。そして、『何でも!!何でもいうこと聞くから!!』って言うの。」

 大げさな身振りを加え、クリスは俺に服従を要求した。


 このガキ……。


 這いつくばって見上げる先には白いフリルスカート。それが弱い風にそよそよと泳いでいる。ガキが俺に近づきすぎたためか、時折、白い布が――

 「お前、見せてるのか、そのお子様パン――」

 言い終わる前に視界が暗くなる。

 図らずも俺は少女の靴にキスをした。

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