ジークフリート(2)
「――――見ぃ~つけたっ!」
少年の声が壁に穴が空いて風通しのよくなった部屋に響き渡る。
ガチャガチャとうるさい音を鎧から出しながら、五人の兵士がクリスを取り囲んでいた。
兵士の肌の色は褐色……というよりは赤黒い紫といった様な感じ。
いかにも”魔族”という雰囲気。
これってヤバい状況……よね?
「な、何よアナタ達っ!?」
精一杯、勇気を振り絞って目の前の少年を睨みつける。
「これはこれは、お姫様は元気がいいみたいだね。」
少年がパチパチと手を叩きながら近づいてくる。すらりと背が高く、色が白い。白いというか、青白かった。切れ長の目に妖しく紫色の瞳が光っている。柄の部分だけでも身長の二倍はありそうな大鎌を軽々と持っている。背中には龍と同じ、鱗のついた翼が生えていた。
何よ、この中二病全開な出で立ちは……どこで拗らせちゃったのかしら……
「自分の名前くらいは覚えているよね?キミ、名前は?」
「……人に名前を尋ねる時は自分から名乗るものよ。」
目の前の少年をまっすぐに見据えて応えた。怖くて手が小刻みに震える。
大丈夫、怖くない……怖くない……自分に言い聞かせた。
少年は、おやおや、という身振りをすると――
「ボクの名前はジークフリート。ジークって呼んでね――」
一瞬のまばたきのうちにジークフリートはアタシの目の前に移動していた。
そして、アタシの顎をつまんで問いかける。力を込められているのか自然と爪先立ちになってしまう。
「もう一度聞くよ。君の名前は――?」
「――クリスよ。」
真っ直ぐに見据えたまま答える。
怖い。吸い込まれるような怪しげな瞳……。
瞳の奥には残虐さをはっきりと感じさせるものがある。
「……まぁ、いいや。君を連れて行けばボクも大公に褒めてもらえるからね。」
そういって手を放す。両腕を甲冑に身を固めた屈強な兵士に掴まれ、自由を奪われた。
「言っておくけど、抵抗しない方がいいよ?ボクは君を殺して持って帰っても全然構わないんだ。」
「――むしろ、ここで抵抗して死んでくれるとボク楽なんだけど……。でも、覚醒前に死なれると大公に怒られちゃうんだよね」
そう言い終わらないうちに固く閉ざされていた扉を突き破って何かが目の前を横切った。
首のなくなった兵士が音もなく崩れ落ちる。ジークフリートはいつの間にか崩れ落ちた窓のそばまで下がっていた。
何が起こっているのか……正直頭がついていかない……。
「へぇ、面白くなってきた。」
ジークフリートは楽しそうに嗤っていた。
長すぎたので分割しました。




