第95話。聖地に下る神罰~待ち伏せ
領主バップは、この神聖国ライツを支配する血族の一員であり。
親族には、ライツ教中央部とつながりを持つ者が多数居る。
そのライツ教中央部から、
領地に獣神が生まれたと言う噂と共に、
領地換えの噂が舞い込んできたのだ。
バップは、苦境に立たされていた。
ライツ教の主戦派閥と、穏健派中央部との権力争いが領地で起こり。
自分の地位を脅かす形で、話が進んでいるのである。
バップは、過去にも荒事に何度か使っていた、
騎士団分隊長ターハイに事の収拾を命じた。
そして今、バップは、ターハイ率いる騎士団と共に、
現地イーハンに赴き、獣神を生んだ集落を襲い。
ダンジョンをスタンピートさせようと、村より出立した所であった。
獣人集落とダンジョンは、
この先、2時間ほど進んだ山中にある湖の、
湖畔にあると言う情報であるが、正確な場所は判らない。
日の暮れぬ前に湖畔近くまで行き、
斥候を出し集落とダンジョンの位置を探る。
夜がふけるのを待ち、
獣人集落の寝込みを、痺れ毒を用いて襲う。
その後、ダンジョンに獣人達を閉じ込め、
ダンジョンの入り口を爆薬で破壊し、
スタンピートを起こす計画である。
領主バップとターハイ率いる騎士団は、山中の森の中、
獣道かと思われるほど劣悪な山道を、荷車を曳き登っていく。
日は傾き始め、木々の間から見える空は、
オレンジ色に染まりつつあった。
騎士団員ゴロンが、森の中で荷車を押しながら言った。
「くそが!
こんな山の中に住み着きやがって」
荷を運ぶ同僚の騎士団員が、口々に言う。
「まったくだ、獣人共が!」
「しかも、我らが神聖なるライツの地に、獣神を生むとはな」
「くっそ!・・・こんな道で荷車を運ぶなんぞ」
「っち、気をつけろよ。
爆薬が詰まった樽が載ってるんだからな」
先を行く騎士団分隊長ターハイが振り返り、
荷を運ぶ騎士団員に向かって言う。
「まぁ、そうグチるんじゃねーよ。
これを成し遂げれば、お前らにも出世の芽があるんだ。
役得もあるってもんだしなw」
荷車を押しながらゴロンが、にやけた表情で言った。
「へっ、女っすかw
まぁ、あのタヌキのトコには、
何人かいい女が居るのを見たなw」
同僚達も、荷車を運びながら言う。
「ああ、俺も見た事あるぜ」
「あれは、いい女だったなw」
「クソが!それにしても重いぜ」
「はっお前。
鎧だのなんだの着て、山登りするよりマシってもんだ」
「それにしても、お前、全員分の鎧だの武器だの・・・」
「バカお前、前に聞こえるぞ?」
先頭をターハイが連れて来た騎士団が進み、
その後ろに領主バップとターハイが続く。
元々、イーハンに派遣されていた騎士団員が、
最後尾で荷車を3つ運ばされていた。
ターハイは、心の中で思っていた。
まぁ、荷車を運ばせ、集落を襲い終われば、お前らは用済み。
最後に夢を見せ、楽しませてもやるさw
頑張って働きな。
ダンジョンに置き去りにされるとも知らずになw
口封じも済んで、俺達は一石なん鳥なんだかなww
日は落ち、オレンジの光がまだ仄かに西の空に残ってはいたが、
夜の闇が森を包んだ頃。
領主バップ、ターハイ率いる騎士団は、
森を抜け小さな草原に出た。
先を行く騎士団員が、後方のターハイに言った。
「隊長、情報通りっす。
たぶん、この草原の先に湖が。
右が集落、左がダンジョンっす」
ターハイが、前方の騎士団員に答える。
「おう。お前ら、2人ずつ組んで探って来い。
見つかってもなんだ、明かりは使うなよ。
集落もダンジョンも、もう近いはずだ」
4人の騎士団員が、前方の湖に向かって早足で進んだ。
ターハイは続けて、横に居る領主バップに向かって言った。
「バップ様、ここで待機とします。
斥候が戻るのを待ち、頃合を見て集落に向かいます」
バップは無言で頷き、騎士団に先導され草原を進む。
先導する騎士団は、ターハイに指示されて、
草原の中ほどで足を止め、
携帯してきた小さな椅子を草原に置いた。
バップは、その椅子に座り休憩を取る。
後ろから続く騎士団員も、草原の中ほどに到着し、
先導していた騎士団のそばに荷車を止め、自分達も休憩に入った。
荷車を押してきた騎士団員ゴロンが言う。
「はぁ~キツかったっす」
ターハイは、荷を運んで来た騎士団員達をねぎらう様に言った。
「まぁ、そう言うな。
事を起すまで、たっぷり時間はあるんだ。
一眠りしてもいいし、ここなら湖から見えはしない。
水を配ってくれ、火を起してもいいぞ?」
領主バップとターハイ率いる騎士団は、斥候が戻り、
夜が更け行動を起すまで、湖近くの草原で待機に入った。
待機から30分ほど経つと、集落を偵察に行った斥候2人が戻り、
集落の場所と、集落の周りに異常が見られない、
感づかれては居ない事をターハイに報告する。
そこから、また30分ほどで、
ダンジョンを偵察に行った斥候2人が、草原に戻って来る。
斥候2人は、真っ暗な草原を、焚き火に向かって進み、
待機する騎士団と合流した。
斥候の一人が、ターハイにダンジョンの報告をしようとしたその時、
突然のショックに襲われた。
斥候は、何が起きたのか理解できなかった。
その斥候は、突然の事に意識的に反応出来なかった。
しかし、斥候の体は反応していた、本能的な反射だ。
下を向き目を瞑り、両手で頭を抱え、
すくんだ様に中腰となっていたのだ。
しかし、時既に遅かった。
何が起きたのか判らない。
目が潰れるほどの閃光。
鼓膜が破れるほどの轟音。
目を瞑っても既に目は焼け、
頭を抱えても、轟音が耳を襲い終わっていた。
斥候は、その場にへたり込んだ。
・・・閃光と轟音は過ぎ去ったようだが、
自分が、目をつぶっているのか、
開いているのかさえ判らない。
キーンと言う耳鳴りが、痛む耳を襲い続け、
それ以外は何も聞こえなかった。
自分がどうなったのか判らない。
生きているのか、死んでしまったのか。
ただただ、目が眩み、耳鳴りがし、足元が揺らぐ。
平衡感覚を失い、
天と地がぐらぐらと、自分の周りを回っていた。
4発のスタングレネードであった。
ほぼ同時に、騎士団達の至近距離で、
4発のスタングレネードが炸裂し、
草原に待機していた騎士団を襲い、視覚と聴覚を奪った。
草原のその場に居た全員が、
へたり込み、頭を抱えて耳を覆って居た。
草原で待機していた騎士団は、
一瞬で戦闘能力を失ったのである。
・・・そこで、起きた事は、
閃光と大轟音だけではなかった。
草原にあった荷車が全て、何の痕跡も残さず、
煙のように消え去って居たのである。
草原に集結していた領主と、騎士団達に残されたのは、
目も眩む夜の暗闇と、
耳鳴りが鳴り止まぬ、山深い森の静寂であった。
数分が経ち、
スタングレネードのダメージから回復し始めた斥候の前に、
いつの間にか、ターク神父と、冒険者ギルド長夫妻、
バイロンとダフリーが立っていた。
ターク神父は、領主バップの襟首を掴み、引き立てながら言った。
「神の怒りに触れたな」
領主バップは、まだスタンのダメージから抜けられずに居る。
ただ、頭を抱えうめくばかりだ。
冒険者ギルド長、バイロンが大声で言った。
「おい!
聞こえてるか?!」
妻のダフリーも、ターク神父に捕らわれたバップ領主に向かって言う。
「神罰を受けた気分はどうだい?」
それでも、領主バップは、頭を抱えたままだった。
その間、続々と騎士団員は、
スタンのダメージから抜け出し始めていた。
フラフラと、立ち上がる者。
座り込んだまま、頭を振る者。
ターク神父は、立ち上がった騎士団分隊長、ターハイに向かって言う。
「どうするね?」
バイロンは、ターハイに聞こえるように、大声で言った。
「ダハハ!!
やるかい?!」
ダフリーは、バイロンに向かって言う
「もう、何も出来やしないよw
手足を折って、まとめてダンジョンに捨てちまおう」
さらっと、斜め読みでも、読んで貰って有り難いっす。
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星5やらw頂きたいっす。
反応無いと、便所の落書きだものねw
ドラカン集落に迫る危機。
いや、まぁ先に避難してるけどw




