第92話。騎士団殺し~対領主、イーハン連合会議
冒険者ギルド職員、イーハンを守る自警団の要でもあるトーシは、
若き自警団員が探ってきた、
領主バップと騎士団による、ゲンコツダンジョン爆破計画を、
冒険者ギルド長バイロンと、その妻ダフリーに明かした。
バイロン夫妻は、ダフリーが頭脳である。
牛族の獣人、冒険者ギルド長バイロンは、
良く言えばおおらか、悪く言えば大雑把な男である。
入り組んだ細やかな話には、向かないのであった。
その妻、ダフリーは、猫族の獣人であった。
老いたとは言え、元高レベル冒険者。
夫バイロン、ターク神父と共にPTを組み、
南方の深きダンジョンに潜った猛者である。
ショートソードを扱い、前衛を勤め、
ゼンツ教の神職として、
自身やPTメンバーの、身体能力と攻撃力を上げる実力者であった。
話を聞いたダフリーは、
バイロンとトーシを、先にターク神父の居る教会に向かわせ、
自身は、ハーネ商会ハーネと、孫娘ラリーサを連れて教会に向かう。
今日中か、明日の朝一番で、
行動を起さないと間に合わないと、ダフリーは焦っていた。
ダフリーは、ドラカン集落と関係の深い、
ハーネを呼ぶべきと判断した。
また、シガラキ教と関係を結ぼうと、イーハンに呼び寄せて居た、
孫娘ラリーサも、今回の件で使うつもりである。
実際、今回の件は、時間も無ければ、人手も足りない。
動けるのは自分達だけ、領主を相手に、冒険者も自警団も巻き込めない。
明日の昼には、騎士団はドラカン集落に向けて出発し、
その夜に集落を襲い、
翌朝には、ダンジョンの入り口を爆破すると言うのだ。
孫娘ラリーサは、ゼンツ教神職に就いており、
双剣使いの冒険者とは言え、まだまだ駆け出し冒険者、
つい最近10階ボスをクリアした程度、Lv20に達しても居ない。
まだ少女と言える、17歳の猫族の獣人である。
それでも、ダフリーはラリーサを、この話に巻き込む事を即断した。
夕方前、教会に一同は、人目を避けて集結した。
バップ領主の作戦を阻止せんと集められたのは、たった6人であった。
ライツ教実力派閥、ターク神父。
冒険者ギルド長、バイロン。
その妻、ゼンツ教高位神職、ダフリー。
バイロン、ダフリーの孫娘、ゼンツ教神職、若き冒険者、ラリーサ。
ハーネ商会、ドラカン集落と関係の深い、元冒険者、ハーネ。
冒険者ギルド職員、イーハンを守る自警団の要、トーシ。
領主バップの計画を、既に6人は承知している。
人払いをした教会の応接室で、
ダンジョン爆破計画を、阻止する相談が始まった。
自警団の要、トーシが口火を切る。
「私達にも秘密裏に、東山にダンジョンがあるとは・・・。
ターク神父、これはどう言う事ですか?」
ターク神父は、静かに答え、頭を下げた。
「申し訳ない。
これは、我が派閥のした事であり、
ライツの為を思っての事とは言え、済まなかった」
ハーネが、口添えをする。
「トーシさん、済みません、私も知っていました。
ですが、今はその事を責めても仕方がありません。
集落が襲われ、ダンジョンが爆破されるのを阻止しなければ」
ダフリーも、言った。
「悪かったね、トーシ。
ダンジョンを植え付けたのは、アタシらじゃないが、
そのお陰、監視と言う裏の名目で、ここに冒険者ギルドも出来て、
タークとアタシらが、イーハンに常駐する事になったんだ。
勘弁しておくれ」
バイロンも、珍しく小声で言う。
「ドラカン達も、近くに住まわせたし、
逆にここらは、安全になったんだ、そう怒るな」
トーシは、初めから諦めて居た様に言う。
「ええ、判っていますよ。
しかし、話を始める前に、町を代表して、
言っておかねば、ならなかったのです」
ターク神父が、深く頷き、事情説明を始めた。
「トーシにも伝えて置くべき事がある。
東山に、ダンジョンがあり、その近くにドラカン達を住まわせた。
それによって、東山の土地神が、
タヌキ族を守護する神として光臨なさった。
タヌキ姿の獣神で、名をシガラキ様と言う」
トーシは、ターク神父の言葉を静かに聴いていた。
ターク神父が続ける。
「ライツ教としては、そのシガラキ様と、友好的な関係が築きたいのだ。
ライツ様より導きがあり、私にまで、直接の導きがあったほどだ」
トーシは、タークが直接神の声を聞いた事に、
驚いた表情をしたが、声は出さずに言葉の先を待った。
ダフリーが、話を引き継ぐ。
「こっちも同じさ、
ゼンツ教もシガラキ教と、友好的に行きたいって事だよ。
生まれたばかりの神とは言え、
聖女と、異世界からの神の使いが、居るらしいからね」
ターク神父が、トーシに言う。
「それでな、シガラキ教の事は、しばらく内々にして、
イーハンより東を、ライツ教会直轄地にする工作と、
バップの首を、我が派閥の者に挿げ替える工作が、
ライツ教内部で、極秘に進んでいたのだよ」
トーシは、納得がいった様に言った。
「それが、バップの耳に入って、今回の事に繋がったと」
ハーネが答えた。
「たぶん、そうね」
バイロンが、少し大きめの声で言った。
「ところで、何が問題なんだ?
騎士団など2~30人程度なんだろう?」
ダフリーが、眉をひそめて言う。
「アンタ、声が大きいよ。
問題はね、今は、領主や騎士団と直接ぶつかっちゃいけない事と、
相手が、痺れ毒と爆薬を持ってる事だね」
孫娘、ラリーサも首を傾げ言う。
「おばぁちゃん・・・宗教?政治?
難しそうなのね。
私も良く判らないわ」
ダフリーが、孫娘に注意する。
「すまないね、お前も巻き込んでしまって、
ラリーサは、黙ってアタシらの言う通りにしてくれれば、
それで良いよ」
ラリーサは、祖父であるバイロンと目を合わせ、
一緒に、首をすくめて居た。
ターク神父が、本題に入る。
「さて、そこでどうするか、だが・・・。
何か案はあるかね?」
ハーネが、口を開く。
「とにかく、この事をドラカン達に伝えないと。
私が今からでも行って、伝えようと思います」
ダフリーが、一段と声を落として言った。
「それもあるが、アタシらが、片付けるって手もあるよ。
全員とっ捕まえて、ダンジョンの奥に捨てちまうかい?」
ターク神父が、恐ろしい事をさらっと答えた。
「ああ、それを考えて居たんだが、
やはり問題は、痺れ毒と爆薬だ。
痺れ毒が、こちらにもあれば良いんだが」
ハーネが、言う。
「たぶん、この町には無いわ。
今から調達するのは無理よ」
バイロンが、小声で言う。
「痺れ毒は、まぁどうとでもなるが、爆薬はどうだろうな?
あんなもん、戦闘で使えるもんか?」
ダフリーが、バイロンに向かって言う。
「使えるかどうかは判らないけど、
アンタだって、直撃を食えば、ただじゃ済まないよ」
トーシは、元高レベル冒険者達の会話を聞いて、舌を巻いていた。
騎士団を、何とも思っていないのだ。
痺れ毒や爆薬さえなければ、殺さずに全員捕まえる事等、
簡単な事の様に話し、捕まえた騎士団員を、
ダンジョンの奥に置き去りにすると、平然と言う。
それはそうか・・・俺でさえ、
騎士団員を倒すのは難しい事ではない。
あいつらは、冒険者の目から見れば、
10階ボスを倒した者が数名居る程度、
20階ボスは、誰も顔さえ拝んでいまい。
一対一ならば、俺の方がレベルが高く、負けるとは思えない。
しかし、こちらは6人。
相手は2~30人・・・。
トーシは、重い口を開いた。
「もう少し人手があれば・・・、
集落の元冒険者と一緒に戦うならば、
騎士団を全員、生け捕りに出来ますか?」
ダフリーは答えた。
「生け捕りってのがねぇ・・・どうかねぇ。
爆薬の使われ方にも寄るが、まぁ負ける事は無いね」
ハーネが、思い詰めた様に言う。
「生け捕りに出来ないなら・・・。
私が・・・ドラカン達、集落を守る者が・・・。
騎士団を殺してでも、あの子達を守るわ」
ターク神父が、ハーネに向かって言った。
「それは、俺の役目だ・・・。
この町で、痺れ薬や爆薬を、どうにか出来そうも無いのだから、
騎士団が、集落に向かう所を襲うしか手は無いだろう」
トーシが、ターク神父に確認する。
「神父とバップ領主の会合で、
どうにかなると言う線は、ありませんか?」
ターク神父は、答えた。
「うむ・・・一日程度の時間稼ぎにはなるだろうが、
バップを引かすのは無理だろう。
時が経てば、バップは失脚するのが判っている・・・」
バップ領主のダンジョン爆破作戦を阻止せんとする、
6人の会合は終わった。
出来る事は、集落に向かう山中の騎士団を襲い、
騎士団と領主を闇に葬る、これしか、手は見当たらなかった。
ハーネ、ラリーサは、今からイーハンを出て、
ドラカン集落に向かい、この事を伝える。
トーシは、町に残り、
自警団と共に、領主バップと騎士団の情報収集にあたり、
翌朝、ターク神父達と合流する。
ターク神父、冒険者ギルド長バイロンと、
その妻、ゼンツ教高位聖職者ダフリーは、トーシと合流し、
早朝、騎士団が町を出る前に、先にドラカン集落に向かう。
ドラカン集落で集落の者とも合流し、
騎士団を迎え撃つ手はずを整える事となった。
時刻は夕刻。
領主が不意に訪れ、ダンジョンがあると言う報を受け、
ざわつく宿場町イーハンを背に、
ドラカン集落に向かって、山道を早足で進むハーネとラリーサ。
2人を、不吉にも思える、オレンジ色の光が包んで居た。
さらっと、斜め読みでも、読んで貰って有り難いっす。
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星5やらw頂きたいっす。
反応無いと、便所の落書きだものねw
騎士団殺しってなんだっけ?
まぁ、読んでないけど、こんな話でしょ?
たぶんw




