第89話。聖女の力と異世界の知恵~スタングレネード
アルファは、その朝、詰め所で目覚める。
ドラカン集落では、詰め所での夜の見張りをすると、
朝食の支度が整うまで起されないのが、
夜の番をする者の特権であった。
アルファは、前日の夜中、
動物系の魔物に対する、新しい手段を考え出した。
その案を、詰め所に居た元冒険者、ドラカン達に説明し、
アルファは、翌日に試すための準備を行い、
そのまま詰め所で眠ったのだった。
俺は、ドラカンさんに起された。
くそぅ・・・詰め所で寝たって言うのに、
なんで、リリーに起されないで、
とっつぁんに起されねばらなんのかw
まぁいい・・・。
昨晩は、動物系の魔物に食らわす手を、考え付いたんだ。
昨日のうちに、試作品は出来上がっている。
朝飯を食ったら、ダンジョンに行く前に地下で試そう。
・・・地下3階まで行けばいいだろう。
アルファは、集落の皆に、
新兵器の話をしながら、朝食を済ます。
新兵器についての皆の反応は、まちまちであった。
ドラカン、ダンザ、リリー、ハチム、マメダは、
動物系の魔物に食らわすには、良いアイディアだと言い。
オーラス、ニック、レンダ、シュンツは、半信半疑な様子である。
朝食が終わると、アルファは、
今日もダンジョンに行く、若手6人とPTを組み、
元冒険者、ドラカン、オーラス、ニック、レンダを連れ、
地下に向かい、新兵器を試してみる事となった。
集落の皆の安全を考慮し、
地下3階の、一番奥の部屋で試す事とする。
俺は、昨日の夜、多めに作っておいた新兵器。
炸裂弾を、リリーに渡しながら言う。
「コレ、炸裂弾。
黒曜石の石つぶてに穴空けて、魔石を埋め込んだヤツね」
リリーは、炸裂弾を受け取りながら言った。
「ええ、中の魔石にライトの魔法を、思い切り掛ければいいのね?」
マメダが、言う。
「思い切りって・・・手の上で暴発しちゃうんじゃないの?」
ハチムも、心配そうに言う。
「暴発したら危ないですよ」
ドラカンさんが、片手にポーションを準備しながら言う。
「暴発しても、大丈夫だー。
リリー、それでも、顔や体から離してライトを掛けるだぞ?」
ハチムは、鉄の盾を装備し、
リリーの手の平の上にある炸裂弾と、リリーの顔の間に入れながら言う。
「これで、目は守られますけど、思い切りは危ないですよ」
ダンザも、リリーの手のひらの上の、
炸裂弾に向かって盾を構えて言う。
「あれは、経験してないと判らないだーなw」
マメダは、俺の後ろに回りこんで、
俺ごと盾にしながら言った。
「みんな、後ろに回ったほうが良いわ。
ホント凄いんだから」
俺も、新兵器実験を見に来た、元冒険者達に言う。
「ホント、隠れたほうがいいっす。
暴発もありえますから。
俺達は、リリーの防御魔法、シガラキの笠で守られてるっすけど、
PTに入って無い人は、目を瞑って、耳も塞いだほうがいいっすよ」
リリーのライトによる、魔石の暴発を経験していない、
オーラスさん、ニックさん、レンダさん、シュンツは、
まだ半信半疑なのか、あまり新兵器の恐ろしさを、
理解できない様子だった。
ドラカンさんは、そんな4人を非難する様にうながした。
4人は、部屋の扉の前に居る、俺達若手PTから離れ、
新兵器実験の準備は整った。
俺は、PTメンバーに向かって、声に出して言う。
「リリーが、炸裂弾にライト掛けたら、
ダンザ、扉をちょっとだけ開けてくれ。
隙間から、ライトの掛かった魔石を、俺が部屋の中に撃ち込むから。
・・・出来ればすぐ扉閉めて」
ダンザが、扉に手を掛けたまま答える。
「おう」
俺の後ろで、マメダが呟く。
「暴発しないでしょうね・・・」
リリーの横で、鉄の小盾でリリーの顔を守るハチムも、
炸裂弾から顔を背け、心配そうな声で言った。
「思い切りは、ヤメましょうよ」
リリーは、炸裂弾から顔を背け、俺の方を向いて笑顔で言った。
「本当に、思い切り魔石にライト掛けるわ?
それでいいのね?」
俺は、魔石が暴発した時、
ポーションをリリーにかける準備をしながら答えた。
「うん、思い切り」
リリーは、俺に頷き、掛けますと周りに宣言してから、
ライトと、小さな声で唱えた。
リリーの掌の上の、魔石を仕込んだ黒曜石に、
聖女の思い切り、全力のライトの魔法が掛かる。
・・・。
魔石は、暴発しなかった。
リリーの手の平の上で、魔石を包んだ黒曜石。
真っ黒な天然ガラスが、
中に仕込んだ魔石の放つ光で、どす黒く光っていた。
俺は、リリーの手の平から、
ライトの魔法が掛かった炸裂弾を取り、全員に言った。
「暴発しないっすね・・・ここまでは成功っす。
これを、俺が部屋の中に撃ち込んで、魔石を砕くっす。
目と耳を守って下さい。
ダンザ、撃ち込んだら、すぐ扉閉めてくれ」
ダンザは、両扉に手を掛け、閉める準備をしながら言う。
「いつでも良いだな」
俺は、撃ちますと宣言してから、
ダンザの開いた扉の隙間から、部屋の中、
奥の壁に向かって、聖女のライトの掛かった炸裂弾を撃つ。
「石つぶて」
ヒュ!
ガシャ!!
・・・
ッ・・・ゴバーーーーーーーン!!!!!
ダンザは、俺が石つぶてを放つと、直ぐに扉を閉めた。
が、
扉が閉め切られる寸前に、部屋の中から、
恐ろしい閃光と爆音が、俺達の居る通路に漏れ轟いた。
リリーが聖女になって居た、
シガラキ様が、タヌキ族の守護神になっていると気が付いた、
あの時を上回る、大轟音と閃光。
目を瞑っても、瞼を透過して眩しく感じる閃光。
耳を塞いでも、耳の奥が痛い轟音が、
扉の隙間から俺達を襲った。
成功だ!
俺は、新兵器の見学に来た、
元冒険者とシュンツに向かって振り返り言った。
「どうっすか?
いきなりコレ喰らえば、目と耳がやられて、動けやしないっしょ?
ゴブリン魔狼コボルト、アイツら、失神するんじゃないすか?」
ドラカンさんが、目を開け、耳を塞いだ手を外しながら言った。
「前より、恐ろしい事になっただー。
これなら、魔物も無事では済まないだーな」
ダンザ、リリー、ハチム、マメダも、口を揃えて言った。
「だから、凄い光と音だって、言っただーな」
「ホント、気絶するって言ったでしょ?」
「思い切りは酷いです。前より凄くなってますよ」
「前の暴発だって、失神し掛けたわよ」
ゲンコツダンジョンでの、
一度目の魔石の暴発を経験していない見学者達は、
信じられない顔つきで言った。
「馬鹿な・・・耳を塞いでも、耳が痛い」
「ああ、耳が聞こえ辛い・・・」
「目を瞑っても、異常な明るさな事が、
判るほど明るいなんて・・・」
アルファの作った物は、スタングレネードであった。
フラッシュバンとも、閃光発音筒とも呼ばれるものである。
アルファの世界で、人質の居る部屋に強襲を掛ける時に、
軍や警察が使うものだ。
閃光発音筒は、殺傷能力がほぼ無い。
通常の榴弾の様に、火炎や破片での殺傷を目的としていないのだ。
瞬間的に発する閃光と轟音により、
室内に居る者の視覚と聴覚を、一時的に奪う為の手榴弾である。
閃光発音筒を、不意に仕掛けられた者は、
視覚と聴覚を奪われ、方向感覚を失い、
急激なショックで失神する事もあるのである。
アルファの作ったスタングレネードは、
アルファの世界の物より、閃光が強かった。
リリーの掛けたライトの魔石は、魔石が砕ける時に、
一瞬にして、ライトの魔法とし、魔石のMPが使われ、
MPのまま魔石の欠片に残るロスが、少なかったであった。
アルファ達は、もう一度、スタングレネードを試した。
見学者達は、耳鳴りのする痛んだ耳を押さえ、
一回目よりも相当な距離をとって、
2度目のスタングレネードを見守る。
2度目の閃光爆音弾も、
リリーの手の上で、魔石が暴発する事無く、無事成功した。
俺は、PTメンバーと見学者に声を出して言った。
「おkっす。
暴発はしなかったっすね。
やっぱ、魔石が砕ける時に、一気に光って爆音が鳴るんすね」
遠くから、耳を塞いだままのオーラスさんが言う。
「ああ、耳が痛い・・・。
お前ら、良く平気だな」
俺達は、爆発するのが判っているし、
扉の裏に居るし、目を庇うし、案外平気だ。
爆音には、シガラキの笠が結構効く様だな。
魔狼の衝撃波だって、大した事なかったしな、
耳にだって、防御力が増されてるんだ。
ダンザが、見学者のほうに向かって言う。
「なんだーな、だらしないだな」
ハチムも言う。
「目を瞑って、耳を塞いでいれば、大した事無いですよ」
俺の後ろから、マメダとシュンツも言う。
「凄い音だけど、確かに何でも無いわね」
「シガラキ様の笠のお陰でしょうか?」
俺は、シュンツに答え、リリーに向かって言う。
「たぶん、防御力アップ、笠の効果だと思う。
聖女のライトと、シガラキの笠。
これがあれば、動物系の魔物に、苦労する事が無くなるかもなw」
リリーは、笑顔で答えた。
「シガラキ様の御加護と、アルファの世界の知恵ね」
さらっと、斜め読みでも、読んで貰って有り難いっす。
いいねやら、感想やら、ブックマークやら、レビューやら、
星5やらw頂きたいっす。
反応無いと、便所の落書きだものねw
素人戦術~




