第87話。甘い話~麦芽糖作りと商人に丸投げ
10階ボスの先、11階でのリリーのレベル上げが始まった。
クレイゴーレムを倒すのも、ほぼ無傷でいける為、
シュンツも連れて行く事となった。
ポーションも薬草も未だ使わず。
ボスの先で、コボルト魔狼ゴブリンだけの部屋を避け、
アルファ達若手6人PTは、Lv上げを行っているのであった。
11階は、HPポーションを魔物が直接落とすので、
そこそこHPポーションが溜まる。
リリーのMPも余ってるので、
聖水と薬草でも、これまで同様儲かったのである。
そんな数日が過ぎると、大麦が発芽した。
麦芽糖作りの準備が整ったのである。
俺は、夕方前にゲンコツダンジョンから戻り、
集落のキッチンで、麦芽糖作りの実験を始めた。
アイテム師である、
ドラカンさん、シュンツ、オーラスさんも、実験に参加する。
ハチムは、火加減が得意&料理好きなので、参加だ。
リリーとレンダさん、女性アイテム師は勿論参加w
アイテム師以外の集落の女性陣も、実験を心待ちにしていた。
トンバーさんが、キッチンのかまどを一つ、
麦芽糖作り用に空けてくれて居るw
甘味に飢えているんだなw
あまり期待されても、失敗した時が怖いが。
まずは、俺がやってみる。
俺がTVで見た記憶では、
60度で、麦芽酵素とデンプンを反応させ続ければ、
半日程度で、お粥は水飴になるはずだ。
が、お粥の濃さや、麦芽の量、温度管理、出来上がるまでの時間等、
やってみなければ、判らない事が多すぎる。
記憶を頼りに、まずは、
デンプンを水で煮て、デンプン糊を作る。
始めは、下に溜まったデンプンと水だが、
かき混ぜながら火を通すと、
少し白濁した中華料理の餡、どろっとした糊が出来た。
リリーが、俺に言う。
「私達でも、デンプン糊は作れるわ。
この糊が、水飴になるのね?」
俺は、キッチンの周りで、
期待の目を俺に向ける女性陣に向かって言った。
「いや、初めてだから・・・。
時間も掛かるし、どうなるか判らんっすよ」
シュンツもハチムも言った。
「まぁ実験ですよね」
「初めから成功しないですよ」
俺には、糊の水分量や温度が良く判らない・・・。
入れるべき、麦芽をすり潰した物の量も判らない・・・。
そんな、期待されてもやり辛いわw
とりあえず、出来上がった糊が冷めるのを待ち、
60度位か?という所で、
麦芽をすり潰した物を、全体の10%ほど入れて混ぜてみる。
しばらくかき混ぜていると、
ドロドロの糊がさらっとしてきた。
俺は、期待の目で実験を見詰めるみんなに言った。
「たぶん、上手く行ってます。
これを60度程度に保って、
たまにかき混ぜてれば、半日ほどで水飴になるっす」
ドラカンさんが、俺に向かって言う。
「ふむ・・・案外簡単だーな」
オーラスさんも言う。
「麦のままじゃない、麦芽と言う所が、キモなのか?」
シュンツも、続けた。
「温度や時間も、秘密にされてたら、判らない事ですしね」
俺は、答えた。
「うーん・・・糊の濃さや、麦芽を入れる量も、判りませんし、
とりあえず、一回これで試して、
濃さや量は、探っていくしかないっすかね」
ハチムが、麦芽入りのデンプン糊を、
かき混ぜている、俺に向かって言う。
「後は、60度くらいで、かき混ぜ続ければいいんですね?
僕がやりますよ」
リリー達、女性陣も口々に言う。
「温度管理は、湯煎でやれば良いわ」
「濃さの違うデンプン糊も、作ってみましょう?」
「それに、麦芽を入れる量も換えて、
色々試して見るのが良いわね」
「ハチム、かき混ぜるのはいいわ。
かまどの火加減をやって頂戴」
「さらっとして来た糊、ちょっと味見して見ない?」
「もう、ちょっと甘いわよ?これ」
「ホント!
甘いわ!!」
俺は、キッチンのかまどの前から、
女性陣に、弾き出された。
あああ・・・やかましいw
女性陣の、この甘味に対する、情熱、執念は恐ろしい物があるなw
麦芽糖の実験、お任せしますww
でも、
晩飯作り、忘れないで下さい・・・。
俺は、麦芽をすり潰す係りとなり、
すり鉢と棒を使って、根と芽が出た大麦をすり潰す。
俺は、なんとなく、すり潰した麦芽を鑑定して見た。
相変わらず、細かい鑑定だw
・・・麦芽、デンプンを糖化する酵素、
α-アミラーゼ、β-アミラーゼ、ジアスターゼを含む・・・。
ビール作りにも・・・。
ん?
麦芽酵素の名前?
俺、どっかで聞きかじった事があったのか?
神の目の知識じゃないよな?
科学的な知識、俺の世界の知識、俺の頭の片隅にあったのか。
『小上がり』みたいなもんかw
俺が意識して無くても、忘れてても、使って無くても、
俺が知ってる事もあるもんだなw
俺は、ちょっと興味が湧いて、かまどの方に向かい、
湯煎でかき混ぜられている、デンプン糊も鑑定する。
ごちゃごちゃと、細かい鑑定結果が、俺の視界のウインドウに映った。
・・・デンプン糊・・・。
麦芽酵素、α-アミラーゼ、β-アミラーゼ、ジアスターゼ・・・
糖化中・・・。
俺は、誰に言うでもなく、ぼそっと言った。
「上手く行ってるみたいっす。
鑑定してみたら、麦芽酵素が、糖化中とあるっす」
デンプン糊をかき混ぜるシュンツが、興味を示した。
「麦芽酵素?」
俺は、シュンツに向かって答えた。
「うん、鑑定してみたら、そう出たんだ」
シュンツが、手を止め、少し考えながら言う。
「アルファさんの世界の知識ですよね?
・・・アルファさん、その『麦芽酵素』ってのが、
デンプン糊を、水飴に変えるんですね?」
俺は、デンプン糊の鑑定結果を眺めながら答える。
「うーん、科学的な事は詳しくは判らないけど、
デンプンは、長く繋がってる物らしいんだ。
それを、酵素で細かく切ると、糖?
水飴になる、そういう仕組みらしいよ」
トンバーさんの命で、晩御飯の準備をさせられている、
オーラスさんとドラカンさんが言った。
「ふむ、麦芽酵素か・・・それだけ取り出せば、
作業が捗るかも?か」
「まぁ、麦芽なんていくらでも作れるだー。
アイテム師として、『麦芽酵素』を取り出しても、
大して良い事は無いだー」
まぁ、そうねw
麦芽酵素の科学的な話は、どうでもいい。
ようは、デンプン糊から麦芽で水飴が作れれば良いんだから。
キッチンには、甘い匂いが立ち込め、
女性陣とおチビ達が、キャッキャと声をあげ、
明るい空気に包まれていた。
犬達も、そんな雰囲気に釣られ、はしゃいでいる。
麦芽糖作りから、晩飯作りに途中からシフトした、
ドラカンさん、オーラスさん、俺を含め、男性陣は、
そんな、おチビ達と女性陣の様子を、
肩をすくめながらも、楽しそうに眺めていた。
晩御飯の時間となり、
一旦、麦芽糖作りは置いておいて、食事を取る事になった。
まぁ、かき混ぜて無くても、焦がす事は無いし。
酵素がデンプンと、反応する時間を待てば良いわけだ。
デンプン糊が、大体60度くらいをキープしてれば良いっぽいな。
リリーの祈りは、いつにも増して、
俺をこの集落に送り込んでくれた事を、二神様に感謝しているww
男性陣の作った晩御飯は、あまり美味しくないし、品数も少ないが、
それでも、みんなの顔に笑みが溢れていた。
食事が終り、麦芽糖作りに女性陣は戻る。
俺達男性陣は、食事の片付けと、おチビ達の世話。
詰め所で、HPポーションや虫毒ポーション、投げ槍などの補修に入った。
俺は、詰め所で、黒曜石や大きな石を削り、
槍先や石盾を作っていた。
そこに、ハチムが走って来て言う。
「出来ましたよ!」
俺は、ハチムを詰め所に残し、キッチンに向かう。
キッチンでは、女性陣とおチビ達が、
出来上がった水飴を舐めていたw
俺は、キッチンに入って言う。
「出来たみたいっすね」
リリーが、水飴を付けたスプーンを舐めながら、嬉しそうに言う。
「ええ、入れた麦芽が少なかった物意外は、水飴になったわ」
トンバーさんが、かまどで、水飴を煮詰めながら言う。
「これも、もう少し煮詰めれば、出来上がりだよ」
俺は、かまどに向かい、煮詰めてる水飴を見ながら言う。
「たぶん、もっと煮詰めて、
水分を飛ばせば、べっ甲飴になると思うっす」
マメダも、水飴を舐めながら言う。
「それは、判ってるわよ」
俺は、マメダに向かって言う。
「お前、いつもキッチンに寄り付かないのに、
水飴作りだけは手伝ったな」
マメダは、無言で水飴を舐めていた。
キッチンに笑いが起こる。
俺は、出来上がった水飴を鑑定しながら言う。
「水飴っすね、鑑定でもそう出ます。
黄色っぽいのは、麦芽をそのまま入れたからかな?」
レンダさんが、水飴を舐めながら答える。
「そうね、
麦芽を潰して、汁だけでも良いのかしら?」
俺は、少し考えながら言った。
「どうなんすかね?
麦芽酵素が入ればいいんすから、
それでも良いんじゃないすかね?」
5時間ほどで、麦芽糖作りは、だいたい成功。
これから、色々試して、透明な水飴を作れば良いし、
別に、透明じゃなくたって、かまやしないしな。
トンバーさんが、水飴を煮詰めながら、俺に向かって言う。
「まぁ、明日試せばいいのさ。
勿体無いから、麦芽が少なかったヤツも、
明日、麦芽を足してやってみるかい?」
俺は、女性陣、全員に向かって言う。
「もう、麦芽糖作りは、お任せしますよw
好きにやって下さいww」
シュンツが、割とマジな顔で、女性陣に言う。
「それなんですけどね。
作り方は、もうみんな知ってしまったけど、これは極秘です。
外に漏らしたらいけませんよ?」
キッチンの女性陣達は、水飴を舐めながら頷く。
シュンツは、続けた。
「ここで作った物を、ここで食べるのも良いでしょう。
でも、売るとなると、分け前を決めないといけません」
ふむ、麦芽糖の製法を隠すのは、まぁ普通か。
分け前っても、集落の儲けって事で良いんじゃないの?
シュンツが、俺の方を向いて言う。
「水飴を売るのは、僕に任せて下さい。
甘味シンジケートとの関係も、どうにでもなると思います。
値崩れを起さない様にすれば、いいんでしょうから」
俺は、シュンツを見て頷く。
シュンツは、続けた。
「後は、儲けをどう分配するかなんですが、
アルファさん、どのくらいの比率にしましょうか?」
俺は、首を傾げながら言う。
「俺に言われても、判らないよ。
俺は、この集落に世話になってる立場だし、
タヌキ族が栄えれば、俺はそれで良い訳だし・・・」
シュンツは、笑顔で俺に言った。
「そうだろうと思ってました。
水飴の作り方を、みんなに見せてしまうのですからw
シガラキ教の儲け、集落の儲け、売り捌くハーネ商会の儲け。
配分は、僕に任せてはくれませんか?」
俺は、シュンツを見返して言った。
「お願いできる?
俺、そういうの不得意だと思うし、
シガラキ教の金庫番に、お任せしちゃっていい?」
シュンツは、商人の顔をして言った。
「僕もこれで、正真正銘、
聖女の商人と、アルファさんに認められました。
商売の事、お金の事は、任せて下さい」
俺は、商人の顔をしたシュンツに、笑顔で言った。
「頼りにしてます」
レンダさんが、俺に向かって言う。
「アルファ。
この子達、集落の子達も、大きくなったら、
水飴を作って売っていいかい?」
俺は、女性陣に向かって言う。
「もちろんっす。
俺は、タヌキ族、ドラカン集落が栄える様に、
二神様に送り込まれたんすから、
おチビ達の将来、おチビ達の食い扶持が出来るのは、良い事っす」
俺は、シュンツにうながされ、
詰め所に居るドラカンさんの所へ向かった。
ドラカンさん、オーラスさんは、
シュンツと、麦芽糖の分け前について相談をするが、
2人とも、即答でシュンツに任せると言うw
俺と同じかい!w
まぁ、商才持ちのシュンツを、全面的に信用して丸無げだww
シュンツが、悪さをしたら俺達は大変だが、もう、丸無げwww!!
さらっと、斜め読みでも、読んで貰って有り難いっす。
いいねやら、感想やら、ブックマークやら、レビューやら、
星5やらw頂きたいっす。
反応無いと、便所の落書きだものねw
甘い話に気を付けろ。
気を付けるどころか、人任せってのは、あまりに危険だがw




