第84話。土くれを越えて進む~曳き狩りと商人好みの儲け話
アルファ達は、元冒険者オーラス、ニックの手を借り、
ゲンコツダンジョン、10階ボスに戦いを挑んでいた。
ボスが先に続く扉を守り、あまり動かぬ事を利用して、
防御壁を使った中距離戦で、倒し切る計画である。
しかし、予想外にゴーレムは、
アルファ達に向かって、移動を始めたのであった。
俺は、予想外の動きに、少し戸惑って言った。
「ゴーレム、寄って来るっす」
オーラスさんが、掌に火の玉を作りながら答える。
「ああ、だが動きは遅い」
ニックさんも、大弓の矢を放って言った。
「こちらに届く前に、倒し切れるだずだ」
その間にも、俺達は攻撃の手を休めなかった。
ゴーレムに、次々と矢と投げ槍が刺さり、
石盾と炸裂弾が、ゴーレムの体の土を削り、
火の玉が、当たったところで砕け、纏わりつき燃える。
それでも、ゴーレムは怯む事無く、
矢や槍が刺さったボロボロの体で、こちらに接近し続けていた。
俺は、防御壁に、武器の補給をしながら言った。
「鑑定距離に入るっす」
ズシズシとこちらに向かう、ゴーレムの太い足が、
俺の魔力探知範囲の床を踏んだ。
2~3mこちらに向かって進まれたと言う事だ。
それでも、まだ、防御壁からゴーレムの距離は25m強ある。
俺は、鑑定をし言う。
「半分削れてるっす」
鑑定結果は、クレイゴーレム。
MAXHPが1700を超えていた・・・。
MAXMPは500ちょい。
100発以上、石つぶてを撃てるのか、魔力切れは無いな。
堅くは無いが、高いHPでタフ、力が強い。
あの重そうな腕に握った長い棍棒で、
突かれたり殴られるのは、ごめんだ。
ハチムが、石つぶてを叩き落して、
次の石つぶてまでの、間を利用して言う。
「近づかれてます、どうするんですか?!」
ダンザが、石盾を投げる動作に入りながら答える。
「このまま倒すだーな」
マメダも、半弓の矢を放ち、言った。
「あと、4割ってトコね」
俺は、炸裂弾を撃ち、次の炸裂弾の準備をしながら言った。
「倒し切れるけど、
一回、引くのを試したいっす」
実際、このままでも、敵が防御壁に達する前に、
クレイゴーレムを倒す事は出来そうだが、
この先、防御壁を設置した後、
一度引いて、防御壁を再設置する必要のある敵が、
現れるかも知れないと思った。
オーラスさんニックさんが、同意してくれる。
「良し、一度引くぞ!」
「前衛を残し、後衛は先に引け!」
攻撃を一時控え、ニックさんとマメダは、
防御壁を降りて、リリーと10mほど後退する。
それを見て、俺とオーラスさんも、
攻撃の手を止め、後退した。
残された、防御壁に張り付いた前衛、
ダンザとハチムは、言う。
「次の石つぶてで引くだぞ?」
「はい」
ダンザは、ゴーレムを挑発し、石つぶての攻撃を自分に誘い、
ハチムは、その石つぶてを、
ダンザの右横から手を伸ばし、投げ槍の柄で叩き落した。
ハチムと、ダンザは、ゴーレムの方を向き、盾を構え、
石つぶてを警戒したまま、早足で後退した。
20歩ほどで、後衛の俺達と合流する。
合流の瞬間、
俺は、前方10数mに置いて来た防御壁を、アイテム収納し、
続けざまにアイテム収納から、ダンザの前に出す。
防御壁は、突如、虚空に消え、
一瞬の間の後、小さな地響きを上げ、俺達の前に現れる。
右手に火の玉を準備していた、オーラスさんが、
攻撃をしながら言った。
「攻撃開始!」
ニックさんとマメダは、防御壁に駆け乗り、弓を引く。
矢が放たれる前に、
俺は、準備していた炸裂弾を、ボスに向けて撃った。
次々と俺達の攻撃が、クレイゴーレムに当たるが、
足は止まらない。
ダンザに石つぶてを放ちながら、
ズシズシと地響きを立て、こちらに向かって来る。
俺の鑑定は、切れていた。
鑑定出来る距離を一度離れたからだ。
そして、
そのボスを鑑定する事は、もう無かった。
俺の魔力探知範囲内に到達する前に、
クレイゴーレムは、動きを止め、
土で出来た体が、糸の切れた人形の様に崩れた。
ゴーレムが、崩れるのを見届けた、オーラスさんが言う。
「まぁ、こんな感じだよ。
ボスは格が違う、タフだろ?」
ニックさんが、それを受けるように言う。
「しかし、神の使いの前じゃ、ボッコボコだなw」
一番後ろのリリーが、嬉しそうにいいながら、手を組んで祈りった。
「無事倒せたわ!
シガラキ様の御加護・・・感謝いたします」
ダンザとハチム、前衛も言う。
「ハッ!何でも無いだーな。
結局、始めの一発を、盾で受けただけだーな」
「上手い事、石つぶて、叩き落せました」
マメダが、少し放心した様に言った。
「ほぼ無傷で、ボスを倒した・・・?」
俺も、気が抜けた様な声で言った。
「そうだ・・・ね」
リリーが、微笑みながら俺に言う。
「それが出来るのは、投げる武器を大量に持ち運べる、
神の使いが居てくれるからよ?」
珍しく、ダンザが俺を褒めた。
「そうだーな、
石盾が無限にあるのは、いいだーぞ」
ニックさんが、防御壁を降りながら言う。
「ああ、凄いな、ダンザの石盾は、
ボスの体が、見る間に削れてたな」
ハチムが、嬉しそうに言う。
「僕達は、アルファさんの鑑定が効いてる間、
ボスのHPの減りが見えたんですが、
凄かったですよ、石盾」
リリーが、続けた。
「石盾が一番、炸裂弾とオーラスさんの魔法が2番目で、
3番は、ハチムの槍と、ニックさんの大弓、そんな感じだったわ」
そうだったな。
与えたダメージはそんなもんだった。
石盾が100弱。
俺とオーラスさんの魔法は、60前後。
投げ槍と大弓が、30~40くらいだった。
ボスの1700を超えるHPを、無傷で削り切ったか・・・。
マメダが、放心状態から立ち直り、防御壁を降りながら言う。
「アタシは、手返しが早いから、手数でダメージ稼げたはずよ」
オーラスさんが、少し笑いながら言った。
「しかし、石盾は、俺の魔法の一撃を越えてたのかw
思ったより、ボスを速く倒せたのは、そう言う訳だったかw」
ニックさんは、少しあきれた様に言う。
「それもあるが、やはり防御壁さ。
前衛への、誤射の心配が無い。
後衛の手数も、増える訳だ」
ハチムが、笑顔で答える。
「僕達前衛も、後衛みたいなものですしね。
無限にある、石盾と投げ槍の分、
攻撃力も上がってるんですよね?」
マメダが、ぼーっとしている、俺に向かって言った。
「アンタ、
とっくに土くれは、ダンジョンに飲まれたわよ?」
俺は、とっさに言い返した。
「わ、判ってるよ。
散らかった武器を、回収すればいいんだろ?」
みんな、そのやり取りを見て、笑って居た。
俺は、防御壁に武器を補充し、アイテム収納したあと、
投げられた、石盾、黒曜石の槍、
大弓の矢、半弓の矢を回収に向かう。
俺は、クレイゴーレムが崩れた辺りに、
魔力探知で新しいものを見つけた。
鑑定しながら言う。
「あ、中級HPポーションっす。
回復量50・・・大した事無いっすね。
後は、魔石だけか・・・」
オーラスさんが、言う。
「ああ、クレイゴーレムはお世辞にも、
美味い獲物とは言えないな」
ニックさんも言う。
「中級ポーションは、リリーが持って置けばいい。
溜まるなら、売れば良いが、大した値では無いしな」
俺は、散らかった武器の回収を続けながら尋ねた。
「低級ポーションの、何倍くらいが相場っすか?」
オーラスさんが即答する。
「5倍と言った所だ、大した値はつかない。
大きなダメージを受けた時用に、自分達で使うのがいいだろう」
俺は、呟いた。
「保険に持っとくのが、いいんすね」
オーラスさんが、聞き返す。
「なんだね?
保険?」
俺に続いて、ボス部屋、奥の扉に向かって歩いている、
みんなが、口々に言う。
「なんだーな?」
「保険?・・・」
「ハチム判る?」
「何でしょうね?」
「何よアンタ、説明しなさいよ」
あー・・・この世界、保険無いか・・・。
シュンツ、いや、聖女の商人様。
儲け話、見っけたかもっすw
保険の始まりは・・・。
船乗りが、酒場で始めたんだったっけか。
酒場の客の船乗りが、店を利用するたび、小銭を出し店に貯めて置き、
船が沈んで死んだら、遺族にそのお金を渡す。
俺は、後ろに続くみんなに言った。
「保険は、帰ってシュンツも居る所で説明するっす。
今は、この先、帰り道?抜け穴?を見る事と、
11階の魔物と、防御壁戦法で一戦やってみるっすよ?」
オーラスさんが、言った。
「ああ、ダンジョンの背骨とも言われてるが、
まぁ抜け道だな」
ニックさんが、続けた。
「ダンジョンが、侵入者を倒すのをあきらめ、
排除する為の道って話もあるな」
アルファ達は、10階ボス、クレイゴーレムを倒し、
11階に続く、階段に向かって進む。
さらっと、斜め読みでも、読んで貰って有り難いっす。
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星5やらw頂きたいっす。
反応無いと、便所の落書きだものねw
やってやりますよ。
ボッコボコですよ。
タコ殴りですよ。
でも、気を付けて、保険に入っておきましょうw




