第81話。垣間見るボスの姿~防御訓練とハチムの覚醒
ダンザは、10階ボス部屋の扉を少し開いた。
肩幅ほどに開かれた扉の隙間から、
アルファ達は、ダンザの後ろや、扉を盾にして、
石つぶてを警戒していた。
俺達は、石つぶてを警戒しながらも、
リリーのライトに照らし出された大部屋を、
恐る恐る覗く・・・。
見えた。
大部屋の一番奥、
扉の前に、ボスが見える。
土で出来た、4足に上半身が付いてるゴーレムだ。
ケンタウロス型とでも言おうか。
でかい・・・扉と比べて、
3m近い身長がありそうだ。
・・・鑑定は出来ない、距離が遠いのだ。
ゴーレムは、ドラカンさん達の話の通り、
奥の扉の前で動かずに、扉の前を守っていた。
暫く見ていると、石つぶてが飛んで来る。
石つぶては、見える!
と思った一瞬後に、ダンザの盾が音を立てた。
ゴン!
俺は、視界のPTステータスで、ダンザのHPを確認する。
少し、喰らっていた。
盾で防いでも、シガラキの笠が掛かっていても、
少しHPが減ったのだ。
今やダンザのHPは170近い。
ここに来るまで、ほぼ喰らって居ないから、
160越えのHPが残っていたが、
一撃で5減った・・・。
ダンザが声を上げる。
「はっ!大した事無いだーな。
こんな小石何でもないだーな。
このまま、何発か受けてみるだーな」
ハチムが言う。
「一発って言ったじゃないですか!」
俺はリリーに言った。
「ダンザのHP100切るようなら、
ポーション使って」
そのままダンザは、盾でゴーレムの石つぶてを、
数発、受け続ける。
ダンザの言うとおり・・・大した事は無いな。
俺が頭に喰らったら、そりゃ大惨事だろうが、
シガラキの笠が掛かったダンザが、
盾で防御してるなら、大した事は無い。
俺と同じだ、
親指の先程度の石を飛ばすのが、石つぶて。
ボスとは言え、石つぶてには、
準備と精神集中が要るんだ。
石つぶてを機関銃のように、連射出来る訳じゃない様だ。
・・・タイミングも、見えてきた。
石つぶてのタイミングを掴んだ、
ダンザが、ハチムに言う。
「良し、ハチム。
お前も受けて見るだーな」
扉の影に身を隠したまま、顔だけを出し、
ボス部屋の中を見ていたハチムが、
首を少し振り、嫌そうな顔をして言った。
「そう言うと思ってましたよ・・・。
だから、イヤだったんですよ」
マメダが、逆側の扉の影から言う。
「大丈夫よ、石つぶてくらい。
持ってる盾は、鉄の盾なんだから。
一辺防いで置けば、自信もつくわ」
シュンツが、ハチムの後ろから言う。
「僕、受けて見ようかな?
山なりで来る石つぶて、よく見えるし・・・。
ハチム、盾貸してくれる?」
その間にも、ダンザは、
遠くから山なりで飛んで来るゴーレムの石つぶてを、
左手の革盾で受けていた。
リリーが、ダンザの後ろから言う。
「シュンツ、ダメよ、やめときなさい。
シュンツは、一番Lvの低い後衛なのよ?」
ダンザが、一瞬ゴーレムから目を離し、
少し冗談めかして言う。
「なんだーな、シュンツ。
商人から前衛に、鞍替えだーか?」
俺は、シュンツとダンザに向かって言った。
「シュンツは、やめときなよ。
ダンザも、調子に乗るなよ?
まぁ、この程度の石つぶてなら、俺が試そうかな・・・。
ハチムの前に、試して見てもいいか」
マメダが、ハチムに向かって言う。
「聖女の槍の名が泣くわね。
聖女と神の使いの前に、立ちはだかるのが、
前衛の仕事でしょうに」
ここまで言われて、ハチムは不承不承、
石つぶてを受ける事になった。
それでも、ハチムは、痛いんでしょう?
とダンザに聞き、
ダンザは、痛く無いと、笑って居た。
最後の一発の石つぶてを、
ダンザは盾で防御し、扉の影に隠れて、
扉の真ん中をハチムに譲る。
ハチムは、その空いた空間に入り、
左半身で身をゴーレムに晒した。
数秒そのままで待つと、
ゴーレムから石つぶてが飛んで来る。
ハチムの鉄の盾が、カーンと音を立て、
親指の先程の大きさの小石を弾いた。
俺は、視界のPTステータスで、
ハチムのダメージを確認する。
ダンザと同じく、ダメージは5だ。
ハチムが、左半身で、左手に盾を構え、
ゴーレムに向いたまま言う。
「痛く無いです。
良く見えます。
このまま僕も何発か受けます」
マメダとリリーは、目を見合わせ、少し喜んでいた。
俺も、気弱ハチムから、
前衛ハチムへの変貌を見届け、口元に笑みが浮かんだ。
シュンツが、俺と同じく笑みを浮かべながら言った。
「ホントに、僕も、
盾で石つぶて受けて見ようかな?」
シュンツめ・・・また詐術、いや話術だったかw
ハチムが、石つぶてを受けないと、
いけない状況を作り出したな?
まぁ、俺も一役買ったがなw
ダンザが、ハチムに向かって言う。
「な?何でもなかっただーな?
石つぶてなんて、大した事ないだーなw」
ダンザ、お前はお前で、調子に乗りすぎな気もするが、
ハチムが、一皮剥けるのに役に立ったから、
今は、突っ込まないでおこう。
2発目、3発目とハチムは、
石つぶてを盾で防ぐ、
その度に、鉄の盾は、カーンと高い音を響かせた。
石つぶてに慣れてきたハチムが、
遠くのゴーレムを見詰めたまま言う。
「石つぶて・・・、
槍で叩き落して見ようかな?」
え?
一同驚愕の発言だった。
俺達は、ハチムの後ろと、左右の扉の影で、
驚いた表情で、目を合わせあい、口々に言う。
「ハチム、危ないわよ?」
「アンタまで調子に乗って」
「やってみれば良いだーな」
「そうですね、やってみる価値はあります」
「聖女の槍使い様?
空振りでも、盾で防御するっすよ?」
マジっすか?
聖女の槍使い様は、石つぶてを槍で打つと?
野球選手だって、小石と細い棒じゃ、ミート出来るもんだか?
俺には判らん・・・出来るのか?
俺は、ハチムの右側の扉に、立て掛ける様に、
投げ槍を一本、アイテム収納から出し言った。
「こっちのが、太いし、
本装備壊れたらなんだから、こっち使って?」
ハチムは、右手の細槍を、右後ろにそっと落とし、
角材、もとい・・・黒曜石の投げ槍を握った。
しばらく待つと、ゴーレムから石つぶてが飛んで来る。
俺達は、息を飲んで、
ハチムが打てるのか、
空振りして盾で受けるのかを見守った。
ハチムは、左半身のまま、左手の盾で体をガードし、
飛んで来る小石に、
右手の角材を、上から軽く振り下ろした。
コッ、ガッ!
マジか!
・・・地面に叩き落した・・・。
野球のように、横に棒を振って打つ訳じゃないが、
上から、ハエを叩く様に、角材で石つぶてを叩いた。
ハチムが、遠くのゴーレムに向いたまま言う。
「出来ましたよ。
盾で受けるのより、楽です」
視界のステイタスバーを見ると、
ハチムのダメージは・・・ゼロだ。
すげぇな・・・。
石つぶてはリリーのライトで、よく見えてるとは言え、
俺には無理だな、槍の才ってヤツか?
ハチムはそのまま、
石つぶてを5発ほど叩き落し、
中央から、扉の影に身を隠した。
扉の影のダンザが、俺に向かって言う。
「アルファは、俺の革中盾とハチムの鉄小盾、
どっち使うだーな?」
俺は、やっぱりかと言う顔で言う。
「そうなりますよね?
俺の番が、回って来ますよね?」
ダンザもハチムも、
それどころか、シュンツもマメダもリリーも、
俺を、期待の目で見ている。
俺は、嫌々ながら言った。
「頭に喰らわなきゃ、死にはしないか。
かぁ・・・嫌な流れだとは、思ってたっすけどね!
あーもう・・・盾は・・・大きい方!!」
俺は、ダンザから、革の中盾を借り、
扉の影から、肩幅より少し大きく開いた中央に出て、
左半身で盾を構えた。
しばらく待つと、遠くのゴーレムから、
石つぶてが飛んで来る。
なんだか、バッティングセンターみたいな、
変な気持ちだ。
俺は、俺めがけて飛んで来る小石を、
中盾を使って防ぎ、
視界のステイタスを確認した。
はい、ダメージ7喰らいました。
そりゃ、喰らうよ?
俺打ち落とせないし。
俺は、一発喰らって、扉の影に隠れながら言う。
「痛くないけど、
ガンって、衝撃が来るじゃん・・・。
こんなの頭に喰らったら、イヤだなぁ」
マメダが、少し笑いながら言った。
「死ぬ自信は無くしたの?」
リリーも、微笑んで言う。
「良く言ってたわねw」
ダンザとハチムが、シュンツに向かって言う。
「お前もどうだーな?」
「シュンツもやっときますか?」
シュンツは、判っていたと言う表情で言った。
「僕は、鉄の小盾で」
リリーが、真剣な表情で、ダンザとシュンツに言う。
「ダメよ?危ない事はいけないわ。
シュンツも、ダンジョンを甘く見てはダメなのよ?」
マメダも続けて言った。
「そうね、シュンツにはまだ早いわ。
アタシ、矢で小石撃ち落して見ようかしら?」
俺達は、口々に言った。
「そりゃ、無理だーな」
「撃ち落すって、そんな、無理ですよ」
「矢が奥に飛んでったら、回収できないから」
「矢が勿体無いし、危ないからやめておきましょう?」
「マメダなら出来るかも、
だけど、弓や矢の精度が高くないと・・・、
もっと精度の高い、弓と矢を仕入れてから試しましょう」
俺達は、10階ボス見学を切り上げ、集落に戻る事とした。
が、マメダダンザが、ボスを倒せば、近道で帰れると言う。
さすがに、シュンツを連れて、初ボス戦はやりすぎだし、
俺は、初ボス戦は、元冒険者の力を借りるつもりだったのだが。
シュンツが、シレっと言った。
「あ、僕のLv、もう13ですね」
そうですか、こうなりますかw
シュンツめ、こうなる事まで計算してたのか?
恐ろしい、本当に恐ろしい男だ。
俺は後衛だけど、石つぶて一発受けたのに。
シュンツは、喰らって無いし。
さらっと、斜め読みでも、読んで貰って有り難いっす。
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星5やらw頂きたいっす。
反応無いと、便所の落書きだものねw
進んでるような、進んでないようなw




