第74話。極秘会談の成功と徒労~ライツ教実戦派閥ターク神父からの贈り物
鉄の武器防具の調達を済ませた、
アルファ、ダンザ、ハチム、シュンツは、
ターク神父の待つ教会へと向かったのであった。
教会に着くと、バイロン冒険者ギルド長も、
アルファが来るのを待っていた。
全員、ターク神父に教会の応接室的な部屋に通され、
ライツ教とシガラキ教の、
正式な初会談が始まったのである。
アルファ達がテーブル席に着くと、
バイロンは向かいの席に座る。
ターク神父は、向かいの席に着かず、
片膝を地に着いて言った。
「先ほどは失礼致しました」
俺は、あせって席から立ち上がり言った。
「あ、ホント、やめて下さい。
他所から転生してきましたが、別に大したモンじゃないんっす」
横から腰を浮かせた、ハチムとダンザも言う。
「神父様、どうか席に着いて下さい」
「アルファは、ホントに大した事ないですだーよ」
ダンザの言い草も、どうかとは思うが・・・、
まぁ今はいい。
ターク神父は、それでも片膝を地に着いたまま、
俺に深く一礼して、やっとテーブル席に着く。
腰を浮かせていた俺達も、席に座りなおした。
席に着いたままのバイロンさんが、
ターク神父に向かって言う。
「ガハハ、神の使いを目の当たりにするとは、
御伽噺の様だな、ガハハ」
席に着いたターク神父が、
バイロンさんの肩を軽く叩きながら言う。
「お前は、声が大きい・・・極秘と言っているだろう。
暫く黙って居てくれ」
バイロンさんは、叱られて、つまらなそうに口をつぐんだ。
俺は、トンバーさんから預かった、
シガラキ様の絵と八相縁起が書いてあるメモを、
ターク神父に、軽く頭を下げながら差し出し言った。
「あの、コレ、簡単なメモなんっすけど、
シガラキ様の姿と、教え?なんかそんな感じのヤツっす」
ターク神父は、そのメモをうやうやしく両手で頂き、
メモを開いて、タヌキの絵と裏書を見て言った。
「こちらが、シガラキ様のお姿と、教義で御座いますか。
鑑定しても宜しいでしょうか?」
バイロンさんは、ターク神父が受け取ったメモを、
だまって横から興味深げに覗き見をしている。
ん?鑑定?
良く判らんが、どうぞどうぞ。
俺は答える。
「はい、鑑定して下さい」
ターク神父は、受け取ったメモを、ウインドウを開き鑑定した。
横からバイロンさんが、そのウインドウを覗き込む。
ターク神父は、息を深く吸い、
少しの間を置いて、静かに言った。
「シガラキ様のお姿・・・。
裏には、聖女様直筆の教義ですな・・・。
コレは・・・聖典とも言えるものです」
バイロンさんが、思わず大きな声で口を開いた。
「聖女?!」
え?何?『聖典』?
『聖女』もヤバい?
もしかして、おおごと?
リリーが聖女ってヤバい?
聖女っておおごとだった?
俺をはじめ、ダンザとハチムは、
何かヤバい空気を感じ、あせっていた。
横に座るシュンツ君は驚きの表情で、
俺達を見て言った。
「聖女ってなんですか?」
俺は、ヤバいかも?
と思いながらも、シュンツ君に正直に説明する。
「あ、いや、リリーがさ、
シガラキ様から、いつの間にか神職に就けて貰ってて、
それが、聖女だったんすよ」
ダンザとハチムも、シュンツ君に向かって頷く。
ターク神父は、こちらのやり取りを見て、
また、一つ息を吸い、落ち着いてから言った。
「聖女とは、聖者と並ぶ、最上級の神職です。
時代ごとに一人居るか居ないか、ライツには今おりません。
当然と言えば、当然ですか・・・。
新たな神が生まれたのですから・・・そこに聖者や聖女が居るのは。
しかし、アルファ様が・・・神の使いが居るとの話を、
ハーネより、うかがっていたもので・・・。
聖女とは・・・そこまでは考えが至りませんでした」
バイロンさんが、ターク神父に向かって大きな声で言う。
「正に御伽噺だな、タークよ。
ガハハハハ」
ターク神父は、バイロンさんに向かって静かに言った。
「お前は・・・ほとほと内緒話の出来ない男だ。
お前は、少し席を外してくれるか?」
バイロンさんは、頭をガリガリと掻き、立ち上がって言った。
「お前が呼ぶから居たんだろうが・・・。
まぁいい、細かい話は、女房が居なけりゃ判らんしな」
シュンツ君が、あわてて取り成す。
「バイロンギルド長、
ダンザとハチムに稽古を付けて頂けませんか?
先ほど鉄の防具を手に入れたばかりでして、
使い方をご教授頂ければと」
ダンザとハチムは、目を合わせ言った。
「俺も難しい話は、困るだーな」
「僕は・・・稽古付けて貰うと、
死んでしまいそうです」
バイロンさんは、大声で言う。
「ガハハ、そうか、
お前らに稽古を付けて時間を潰すか」
ターク神父が、言う。
「悪いな、そうして貰えるか?
話はまとめて後日な、ダフリーが居る時に。
・・・稽古は、公園でやるなよ?」
ダンザが、立ち上がり言う。
「ギルド長、獣人キャンプでお願いするだー」
ハチムは、腰を浮かせて言う。
「僕も、行こうかな・・・」
ダンザがハチムの脇に手を居れ、
立ち上がるように引き上げながら言う。
「お前も習うだーな、
アルファ、防具出してくれ」
俺は、ダンザとハチムの新しい防具を、
テーブルの上に出しながら言った。
「バイロンさんと一緒にキャンプ行ったら、
そこで待っててくれればいいよ。
この後は、ハーネさんのところに行って、
売り荷と買い物の清算するだけだから」
ダンザとハチムは、鉄の防具を受け取り、
バイロンさんとイーハンの外、
南門近くの獣人キャンプに向かう。
バイロンさんと一緒なら、
クソ門番から、嫌な思いをさせられる事も無いだろう。
部屋からバイロンさん達が出て行くのを見届けたターク神父が、
頭を下げて言う。
「アルファ様、申し訳ありません。
がさつな男でして」
俺は、またもちょっとあせり気味に言った。
「あ、ターク神父様、俺に『様』は、よして下さいっす」
シュンツ君が、またも取り成す。
「神父が、アルファさんに『様』を付けて呼んで居る所を見られては、
怪しまれる可能性もあります。
『ターク神父』『アルファさん』で呼び名を統一しておきましょう」
俺は頷き、
ターク神父は、恐れ多いと言いながらも、承諾してくれた。
ターク神父は、
ドラカンさんハーネさんとの関係、
ゲンコツダンジョンの事、
ライツ教実戦派閥としては、
シガラキ教と共闘していきたいとの話をしてくれた。
シガラキ教に対し、
ゼンツ教がどう反応するかの予想も教えてくれる。
ドラカン集落との関係は、
さっきドラカンさん達から聞いたのと大体同じだ。
ライツ教と関係が無く、冒険者でもない、
そこそこの実力があるドラカンさん達は、
ライツ教実戦派閥の、表立って出来ない仕事を、
頼むのに適しているとの事。
表立って出来ない、他人に頼めない事情は、
隠しダンジョンだそうだ。
ここからそう遠くない、南のゼンツに、
実戦派閥の隠しダンジョンがあり、
そこでは、低級MPポーションが、
10階も無い低層ダンジョンなのに、ドロップするらしい。
そことの極秘物流を、ハーネ商会が担ってる訳か。
MPポーションは、貴重でほぼ流通していないとの事で、
MPポーションがあれば、深く長くに潜るのに役に立つし、
レベル上げ、力を付けるのに必要だそうだ。
他のクランに売れば、
友好の印でもあり資金源ともなるそうな。
ゲンコツダンジョンは、人工?
と言うかなんと言うか・・・。
ドラカン集落は、
元々自然に出来たダンジョンだったらしいが、
そのダンジョンコアを手に入れた、ライツ教実戦派閥は、
自然にダンジョンが出来るほど、邪気の濃いイーハン東山に、
改めてダンジョンコアを植え付けたらしい。
そう言う事が出来る大魔導師が、
実戦派閥の協力者に居るとの事。
MPポーションや美味いドロップが、期待できるかも知れないし、
ライツ国内に、実戦派閥の訓練場候補地としても、
ダンジョンが欲しかったとの事。
そのダンジョンの見張りが、
ドラカン集落だったと言う訳だ。
ダンジョンコアを植え付けて、
ドラカンさん達が近くに住んだら、
東山の邪気が減り。
地上に魔物が生まれるのが減り。
ダンジョンが深くなり。
仕舞いには、シガラキ様が光臨するとはw
すべて予定外の事だったと言うw
まぁ、そうだろうな。
俺は、バイロンさんの言った事が引っ掛かっていた。
『神に見放された世界から来たとの噂』と、
バイロンさんは口にした。
それについては、シュンツ君いわく、悪口だそうだ。
この世界の伝説では、
神の使いが、異世界から来たとあるらしい。
その異世界は、
神がおらず、魔法が使えず、魔族も魔物も居ないが、
ただひたすらに、人同士が殺しあう・・・。
神に見放された、呪われた世界、と言う見方もあるそうな。
まぁ・・・そうかも・・・な。
人間の天敵たる、魔物魔族が居れば、人は団結して戦い、
人同士の争いは過熱しないか・・・。
人の天敵が居るこの世界でも、
平和に浸って、獣人差別をする輩も生まれてるがな!!
バイロンギルド長の奥さん、
ダフリーさんは、ゼンツ教の人らしい。
シガラキ様光臨の話をターク神父から聞き、
ゼンツ教の上層部に、報告と相談の為、
内密に南の獣人国ゼンツに行ったらしい。
ターク神父の話では、ゼンツ教もシガラキ教と、
友好的関係を築きたいハズだとの事。
ライツ教より、獣神ゼンツ教のほうが、
全面的に信頼できるかも知れないな。
俺からターク神父に伝えるべき事は、
取り立てて特に無かった。
シガラキ様の説明は、商売と酒と防御の神、その程度だし。
俺のアイテム収納量が、2t超えてる事。
俺の世界の知識と、
普通より詳しい神の目で、特殊鑑定が出来る事。
リリーが聖女となって、出来る様になった事と、
俺がこの世界に来た事情・・・ハズかしいw
この世界で俺が目標とする事は、タヌキ族を盛り立てる。
それ以外に、何を成そうとか、
世界を変える、誰かと敵対するとか、
そういった事は何も無いと伝えた。
ターク神父は、半信半疑ながらも、
シガラキ様の光臨と、俺の転生を歓迎してくれた。
シガラキ教が広まり、
シガラキ教の神職枠が増え、タヌキ族が栄える事は、
回復防御系の、ライツ実戦派神職冒険者が増える事と同じく、
人類にとって良い事であり、
ライツの実戦派閥とシガラキ教は、共闘出来るとの事だった。
ライツ教とシガラキ教の会談は、友好的に終わった。
お土産に、ポーションサイズの空瓶あるだけ300本ほどと、
ターク神父個人所有の、低級MPポーション10本。
神職が装備する杖1本、
神職用マント?
頭に被るフードがあるからローブか?
を俺とリリー用に2着頂いた。
最後に、シュンツ君と礼拝堂に寄り、
ライツの神像に、お祈りをして帰る事となった。
のだが・・・。
俺の行動全ては、
どうでもいい事だったようだ・・・。
さらっと、斜め読みでも、読んで貰って有り難いっす。
いいねやら、感想やら、ブックマークやら、レビューやら、
星5やらw頂きたいっす。
反応無いと、便所の落書きだものねw
まぁ、世界設定のご説明とw
全てがひっくり返ると面白いね。




