第六十九話。ダンザコンボと戦の後始末
俺の体に衝撃が走る。
空気に全身を打たれる様な感覚。
海の波を不意に食らうのに、似ているかも知れない。
魔狼の咆哮だった。
魔法?一種の衝撃波だろうか?
耳を劈く大音量で、俺は腹の底が震えるのを感じた。
一息で吠え続ける魔狼に、小さな火の弾が当たった。
火の玉は砕け、魔狼に纏わり付くように炎を上げる。
魔狼はそれでも、息の続く限り咆哮をやめなかった。
大地に踏ん張り、炎に包まれながらも咆哮をする魔狼に、
2本の矢が連続して突き立ち、
一瞬遅れて、2本目の槍が突き刺さった。
視界のHPバーで、2匹目の魔狼を倒した事が確認出来た。
リリーの高い声が響く。
「洞窟!」
俺は、洞窟に眼をやった。
洞窟の出口の炎は、消え掛かり、
オオカミが5匹、外に飛び出している。
いや、洞窟の中から半身を出し、こちらを見ている小鬼が居る?
オーラスさんとニックさんが、同時に叫んだ。
「ゴブリン!」
「魔法だ!」
俺は、咄嗟に洞窟の出口の小鬼に向かって、
炸裂弾を撃っていた。
炸裂弾が、洞窟に到達する前に、ダンザの盾が音を立てた。
バン!!
ダンザ、何か喰らったのか?
と思う間に、俺の石つぶてが、洞窟の出口で炸裂した。
俺は、視界のPTステータスで、
ダンザの無事を確認する。
洞窟の外に出た5匹のオオカミは、こちらに向かってこない。
背を向けて走り出した、逃げるのか?
後ろ2匹は、砕けた黒曜石を浴びたのか、
足を引きずっている様に見える。
洞窟の出口に見えた小鬼は、
中に入ったのか、姿が見えなかった。
オーラスさんの大きな火の弾が、洞窟の出口をまたも塞ぐ。
ニックさんの矢が、先頭で逃げるオオカミの背に突き立つ。
オーラスさんの指示が飛ぶ。
「逃すな!
中のゴブリンは魔法だ!」
指示の声が終わる前に、
マメダの矢が、逃げるオオカミの背に突き刺さった。
足を引きずるオオカミにも、ハチムの投げ槍が刺さる。
ダンザは、左半身で中盾を前に、
右手の石盾を、後ろに構えたまま動かない。
どうした?ダンザ?
俺は、無傷で逃げるオオカミの前方を狙って、
炸裂弾を撃った。
一瞬の間の後、オオカミを追い越して、
地面に当たった黒曜石は、砕けてハジけた。
バン!
爆竹の様な音が響く。
逃げだしたオオカミが、地を転がる。
ダメージを与えた様だ。
転んだオオカミに、マメダの矢が突き立つ。
ニックさんが、言う。
「どうする?魔ゴブ」
オーラスさんが答える。
「このままでいい、中に閉じ込めた」
ダンザが、吠える。
「いてぇだな!あの野郎!!」
ハチムが、問う。
「オオカミは、どうします?」
マメダが、答えた。
「ほっとけば良いわ、ただの動物よ」
俺は、理解して言った。
「怪我を負わせれば、それで勝ちっすね?
で、魔法ゴブリン?」
リリーが、答える。
「ええ、杖を持ってたわ」
オーラスさんが、指示を出す。
「火が消えれば出てくるか、洞窟に抜け道があるかだ。
このまま暫く様子を見て、出て来ないようなら、距離を詰めるぞ」
一同頷き、攻撃態勢のまま、
火が消えるのを見守る。
出た!
こちらを窺がうゴブリンの半身が見える。
抜け道は無しか?!
と思った瞬間、俺は炸裂弾を撃っていた。
ゴブリンは、洞窟内にまたも姿を消した。
2本の矢はかわされ、
一瞬遅れて、
石つぶてが洞窟内の壁に当たり炸裂する。
バン!
次の瞬間、
オーラスさんの大きな火の玉で、
またも洞窟の出口は塞がれた。
オーラスさんの指示だ。
「オオカミに、トドメを」
まだ生きているオオカミ達への、
トドメの矢や槍が宙を舞う。
ひとしきりの攻撃の後、ダンザが、吠える。
「あの野郎!
突っ込んで食らわしてやるだな!!」
オーラスさんが、いさめる。
「まぁ待て。
マメダ、あれが最後だな?」
マメダが、答える。
「気配はアレだけよ?
キノコ、ナメクジは、居ないでしょ?」
ニックさんが、言う。
「どうだかな?
魔狼2匹と魔ゴブ・・・」
オーラスさんが、指示を出した。
「防御壁を仕舞って、距離を詰めるぞ?
アルファ、魔力探知は良いな?」
俺は、答えた。
「はい、25m以内なら判るっす」
俺は、マメダとニックさんが、
防御壁を降りるのを待ち、防御壁をアイテム収納した。
ダンザが、石盾を右手にズンズンと、洞窟に向かって行く。
出口の火は、とっくに消えていたが、
ゴブリンに動きは無かった。
ダンザ・・・。
何か喰らってお怒りモードか?
俺は、ダンザの背中に付いて、炸裂弾を右手に、
防御壁を出す心構えもしながら、隊列2番目でダンザを追う。
ハチムは細槍を構え、
マメダ、ニックさんは弓を引いたまま、俺達に続く。
オーラスさんとリリーは、最後尾だった。
洞窟まで10mほどの所で、
鑑定をしながら俺は言った。
「感!
ダンザ、視界ウインドウで、位置判るな?」
前を行くダンザは、頷きながらも足を止めない。
ゴブリンマジシャンLv19・・・。
洞窟内、10mほどのところに居る。
HPは、結構削れてた。
半分切ってるな・・・火と炸裂弾を喰らったか?
Lv19の魔物が野生って事は無いな?
ゲンコツが生み出したか?
って、おい。
俺は、焦って言った。
「ダンザ!待てよ。
角度変えて横に回ろうぜ?
そしたら、魔法でも矢でも、洞窟内にぶち込めるんだからさ」
ダンザは、答えた。
「何言ってるだーな。
あの野郎・・・これを直接ぶち込んでやるだーな。
アルファ、防御壁も出すなよ?」
オーラスさんが、後ろから言う。
「まぁ良いだろうw
一気に距離を詰めろよダンザ?
魔法は、そう直ぐには撃てない。
魔法を撃つ準備をされてたら、知らんがなw」
ニックさんが、少し笑いながら言う。
「一撃は喰らう覚悟で行けよ?ダンザ」
リリーが、心配そうに言う。
「危ないわ兄さん、止まってよ?」
ハチムが、早足で俺の横に並び言う。
「ここからは前衛の仕事です。
アルファさんこそ、止まって下さい」
マメダは、弓を引いたまま、後ろから言った。
「見えたら撃つけど、見えないわねw」
確かに、残り一匹だが・・・Lv高いゴブリンだぜ?
俺、ゴブ始めて見るし、ホントかよ?みんな・・・。
ダンザは、オオカミの死骸を踏み越え、
ズンズンと真っ直ぐ洞窟に進む。
ダンザは、とっくに火の消えた洞窟出口の脇、
2mほどの所で止まり言った。
「ハチム、俺が行くだーな。
お前は、一歩遅れて来るだーぞ?」
ハチムは、答える。
「角度変えれば良いと、思いますけど」
俺は、ハチムの後ろで言った。
「25m以内、魔ゴブだけっす。
洞窟は20m無い、行き止まりっす。
・・・ホント突っ込ませるんすか?
オーラスさん?」
オーラスさんが、答える。
「前衛が行くってんだから、しょうがないわなw」
ニックさんも、弓を引いたまま言う。
「まぁ、防御壁に頼りっぱなし、ってのもな?」
リリーは、隊列から離れ、少し横に回り言った。
「兄さん、ポーション届かないほど、中に行かないでね?」
俺も、炸裂弾じゃなく、ポーションの準備しとくか?
いや、普通の石弾にするか・・・。
俺が、手の中の炸裂弾をアイテム収納し、
普通の弾に取り替えた所で、ダンザが言った。
「ハチム、行くだーな。
3,2,1」
ゼロでダンザは、洞窟の出口に飛び出し、
魔ゴブに姿を晒した。
ダンザはそこで止まり、
左半身で中盾を前にして構える。
一瞬の間の後、ダンザの中盾が、バンと言う音を立てた。
それを待っていたかの様に、
ダンザは、洞窟の中に、
ハチムは、ダンザに続いて走りこむ。
ダンザの雄たけびが聞こえた。
「いてぇだな!」
ゴバン!
・・・ガン
・・・ゴメギ!!
交通事故のような音が2回、数瞬送れて骨の砕ける嫌な音が、
洞窟の外の俺にも聞こえた。
視界にある魔ゴブのHPバーは、
急激に下がりゼロとなった。
戦闘は、終わった。
オオカミ狩りかと高を括っていたが、
魔狼2匹とゴブリンマジシャン・・・。
俺は、オーラスさんとニックさんに問う。
「魔狼と、ゴブ・・・野生じゃないっすよね?」
ニックさんが答えた。
「ああ、ダンジョンには居るが」
オーラスさんが続ける。
「外では見た事が無いな」
ハチムが、洞窟から出て来て言う。
「シガラキ様は、
ゴブリンと魔狼が居る事を、
知らせて下さったんですね?」
リリーが、言う。
「そうね、たぶんそうよ。
集落に危険が及ぶ前に、狩れと言う事だったのね」
マメダが、言う。
「前から知ってたのかも?
私達のLvが上がったから、今日だったのかも?」
俺も、言った。
「今日なら、この洞窟内に魔物が居る事を、
知ってたのかもっすね」
洞窟から、ダンザが出て来て言う。
「っち、痛いだな・・・魔法食っただーな」
俺は、不思議に思っている事を聞いた。
「やっぱ、何か食らってたのか?
盾で防いでは居た様だったけど」
オーラスさんが、言った。
「多分、風系、ウインドショットだな」
マメダが、言う。
「HP大して減ってないし、大丈夫なんでしょ?」
リリーは、ダンザに小走りに向かいながら言った。
「兄さん、大丈夫なの?
ヒール掛けてみましょうか?」
ニックさんが、少し笑いながら言う。
「大丈夫さ、何でも無いだろ?ダンザ」
ダンザは、リリーに手を挙げ、
来なくて良いと仕草で表しながら、
口をへの字にして言った。
「何でも無いけど、痛かっただーなw」
ハチムは、そんなダンザに問い掛ける。
「盾で防いでも、魔法は痛いんですか?
僕、前衛で大丈夫かなぁ・・・」
オーラスさんが、少し首を傾げながら言う。
「そう言えば、お前ら、
魔狼の咆哮も受けたが、平気だったのか?」
ニックさんも、今気が付いた様に言う。
「そうだな・・・
咆哮中も攻撃を続けていたな?」
俺は、またも2人に問う。
「魔狼が吠えたの、あれも魔法だったんすね?」
オーラスさんもニックさんも頷いた。
マメダが答える。
「魔狼の咆哮。
聞いてはいたわ、範囲魔法なんでしょ?」
ハチムも言う。
「衝撃に打たれると聞いてました・・・
打たれてる間は動けないとも。
案外平気でしたね」
ダンザが、中盾を放り出して言う。
「俺達もLvが上がってるだし、
シガラキ様の笠も、強くなって掛かってるだーな」
オーラスさんが、納得した様に言った。
「そうか、お前らには、
シガラキ様の笠が掛かっていたから、か」
ダンザは、地面に座り込み言った。
「腹減っただーなw」
俺達は、その場で食事を取って帰る事とした。
食事の後、魔ゴブから、魔石の取り方を俺は教わった。
まぁ、魔石の位置は探知で判る訳で、
ナイフで抉り出すだけの話だがw
当のゴブリンの頭には、
石盾が20センチはめり込んで居た。
ハチムの証言では、
ダンザが左手でシールドバッシュをかまし、
ぶっ飛んだゴブが、洞窟の奥の壁に当たって地に落ちた瞬間、
ダンザの石盾がうなりを上げて飛び、頭を捕らえたそうなw
杖も、拾っておいたが、町で見たのより質が悪い。
大した値はつかなそうだ。
魔狼の皮も、オオカミの皮も売れるそうな、
魔狼は、いくらか値が張るという話だった。
戦闘後の後片付けも、すっかり俺の仕事になったなw
皮を剥ぐ時間がもったいないし、
オオカミの死骸は、俺がアイテム収納して持って帰る。
毎度の如く荷物が無いw
荷車要らずが大好評だw
この調子なら、夕方になるまでに、集落に戻れるだろう。
さらっと、斜め読みでも、読んで貰って有り難いっす。
いいねやら、感想やら、ブックマークやら、レビューやら、
星5やらw頂きたいっす。
反応無いと、便所の落書きだものねw
ドンっとかまして、飛んで落ちたところに、ブンっと。
いっちょあがりと言う事でw




