第六十七話。ハチムの夢と無駄な祈り~戦闘の予感と接敵
新たなる日常。
リリーのレベル上げと、
薬草をHPポーションに格上げする事に励む、
ドラカン集落の者達。
平和とも言える日常が、一週間ほど経った頃。
リリー達のレベルは、10階の魔物では、
もう上がらなくなり始めたのである。
アルファは、次の段階に踏み込むべきか考えていた。
アルファ達、若手PTのレベルは全員16に達している。
Lv15の10階ボス、クレイゴーレムに挑み、その先に進む、
その事を考えて居るのであった。
集落の朝。
いつもの様に、ダンジョン跡の広間で朝食を取って居ると、
いつもは大人しいハチムが、口を開いた。
ハチムは、小上がりで朝食を取りながら言う。
「僕、またシガラキ様から、
夢を見せられたみたいなんです」
ドラカンさんが、テーブル席で朝食を取りながら問う。
「む?
まただーか?」
ハチムは、自信を持って言う。
「はい、この間の黒曜石の時と同じで、
行った事無い場所を知ってるんです」
俺達は、ざわつく。
ハチムは、続けた。
「この間より少し遠めだと思うんですけど、東山の方角です。
僕とアルファさんだけじゃなく、
僕達PTと、オーラスさんニックさんが、そこに居るんです」
ダンザが、飯を食いながら言う。
「なんだーな?
またお宝だーな?」
ハチムが、答える。
「たぶん、違います。
防御壁がありましたから」
オーラスさんが、テーブル席から言う。
「防御壁・・・戦闘があるのか」
ドラカンさんも、言う。
「うむ、知らぬ場所を知るハチムの夢は、
シガラキ様のお告げだーな。
そこで、防御壁・・・そう言う事だー」
俺は、みんなに聞く。
「戦闘・・・魔物・・・
行って見るしかないっすよね?」
異論は出なかった。
リリーが、明るい調子で言う。
「シガラキ様のお導きですもの、
私達に手に負えない魔物が居る訳が無いわ」
ドラカンさんが、気を引き締める様に注意をする。
「そうだーな。
しかし、オーラスとニックも、となると、
舐めて掛かると危険だーぞ?」
ハチムも言う。
「火の魔法使いと大弓の元冒険者が、
必要って事ですからね」
ダンザもマメダも言う。
「外の魔物だーな、大した事は無いだー」
「アタシ達、もう駆け出しじゃないんだし、大丈夫よ」
俺は、ダメ元で言った。
「何があるのか、何が居るのか、
シガラキ様に、お伺い立てて見るっすかね?」
それにも異論は出なかったが、
いくら祈っても、当然のごとく無視であった。
二神様は、あんまり事細かに指示を出せないって、
言ってた気がしますが・・・無視は・・・。
みんなの前で、無視されたと報告するの、つらいっす。
おチビ達の前で、恥をかきたくないっす。
世間話でもどうっすか?
シガラキ様、中間管理神様?
聞いてるんすよね?見えてるんすよね?
あー、俺、リバーシ作ってみました。
おチビ達にも大人気っす。
・・・神の世界にも、ボードゲームってあるんすか?
えーと・・・神様の世界はどうっすか?
シガラキ様は、格が上がって、何かお変わりありませんか?
・・・ライツ神様、ゼンツ神様と、
上手くやってらっしゃいますか?
俺の祈りが長いのを見て、
無視されているのを察したリリーが言う。
「アルファ。
シガラキ様もアルファの神様も、
伝えるべき事は無いって事なのよ。
大丈夫、魔物なら行って見れば、先に判るし、
危険なら逃げればいいのよ」
俺は、ダンザに軽い肘撃ちを喰らい、
無駄な祈りを打ち切った。
おチビ達は、シガラキ様に無視されたと、俺を囃し立てる。
「アルファ兄ちゃんは、話し掛けてもほっとかれたー」
「今は、何もしゃべる事無いんだよー」
「いつも見てるのにねー」
「見てるから、いいんだよー」
「でも、魔物が居るんだから、気をつけて行ってね?」
「あぶないからねー」
「でも、見てるから大丈夫だよー」
おチビ達の方が、
よっぽどシガラキ様と仲良しでござんすねぇ。
魔物が居るんですね?
おチビ達は、なんでかそれを知ってるんすね?
俺、神の使いとして、自信を失いそうっすw
若手PTと、オーラスさんニックさんが出陣する事となる。
集落の戦力が一気に奪われるって事だ。
ドラカンさん、レンダさん2人のアイテム師しか、
戦力として集落に残らない。
何に襲われるって事でも無いけど、
用心に越した事は無い。
今日は、陶芸の作業は中止となった。
おチビ達も外出禁止で、集落に閉じ篭る事となる。
案外、おチビ達から文句は出なかった。
聞き訳がいいなw
シガラキ様のお告げだからか?
リバーシで遊ぶからいいのか?w
トンバーさんは、
集落内で溜まっている仕事を片付けると、意気込んでいる。
ドラカンさん達、居残り組みの大人は、
そんなトンバーさんを見て、首をすくめて居たw
朝食を終えた俺達若手PTと、
オーラスさんニックさんは戦闘準備を整え、
昼食をトンバーさんから受け取り、
ハチムの見た、夢の場所に向かって出発した。
まだ早朝、時刻は7時前と言った感じだ。
今回は、黒曜石の時と違い、ほぼ山登りだ。
一時間ごとに、10分ほどの休憩を取りながら、
俺達は、山の中の獣道を進む。
毎度の如く、荷が無いのは楽だと、
オーラスさんとニックさんは、繰り返し言っていた。
俺の存在価値は、また荷運びに戻ってしまったなw
まぁいいさ、あんまり大きな期待を掛けられても困る。
二神様も、あんまり導いてくれないしな。
出発から4時間が経とうとした時、
ハチムが前方を指差し言う。
「あの辺りです。
あそこの峠の向こう側で、
防御壁を出した僕達が、居る感じの夢でした」
ダンザが、問う。
「あの、峠の天辺まで行けばいいだな?
もう15分と言ったトコだーな。
獣道を外れて、真っ直ぐいくだーぞ?」
オーラスさんが、言う。
「マメダ、お前の耳が頼りだ」
ニックさんが、続ける。
「魔物や動物の気配を感じるのは、
お前が一番だからな」
マメダは、頷きながら言った。
「アンタも、魔力探知掛けて探ってよ?」
俺は、答える。
「うん、今日はダンジョン行かないし、
MP有り余ってるから、もう掛けちゃうよ」
リリーが、少し緊張した声で言った。
「私も、シガラキ様の笠、掛けていいかしら?」
オーラスさんが、答える。
「そうだな、その方が良いだろう」
ニックさんは、大弓を出し戦闘準備を始める。
俺達もそれに習って、戦闘準備を整えた。
ダンザは、石盾を出せと言ったが、
お前は、手斧で道を切り開けw
何かあったら、防御壁を即出してやるから。
俺達は、ダンザを先頭に、
峠の頂点に向かって一直線に向かい始めた。
峠の頂上に着くと、
これまで見えなかった峠の裏側が見通せた。
前方に見えるのは、東山に連なる山であった。
ハチムは、前方、坂の下を指差し言う。
「この頂上のもうちょっと先、
この坂を降りる途中が、僕が夢で見た場所です。
向かいの山までは行かないです」
マメダが、言う。
「今のところ気配は無いわ?」
俺も、報告した。
「魔力探知にも何も反応無しっす」
オーラスさんが、指示を出す。
「ハチムの指示するところまで、ゆっくり静かに降りて行こう。
ダンザ、下草をもう払うんじゃないぞ?
マメダは気配を、アルファは探知と、防御壁を出す準備を。
俺達は、目でも魔物を探って行くとしよう」
皆頷き、
音を立てないように峠を下って行く。
暫く進むと、マメダが小声で言った。
「居るわ・・・オオカミだと思う」
オーラスさんが、全員の前進を止め、問う。
「どこだ?」
マメダは、答える。
「この坂の途中に、洞穴があるみたい・・・
150mくらい先。
その中だと思うわ」
ニックさんが、小声で言う。
「オオカミか・・・
どのくらいの群れか判るか?
洞穴の横側、
少し高い所から攻撃するのがいいか?」
マメダが、答える。
「数までは、まだ判らないわ」
オーラスさんが、もう一つの問いに答える。
「そうだな、敵より下に陣取るのは下策だ。
オオカミは洞穴の中、か。
気付かれる前に、魔法を放り込みたいところだが」
ニックさんが、続ける。
「先制出来ればそうしたいが、相手はオオカミとなると、
感づかれると思ったほうがいい」
オーラスさんが、進行方向を指差し、指示を出す。
「マメダ、オオカミに動く気配があれば教えてくれ、
少し右にずれて降りよう、洞窟の真上を避けてな。
あそこの平地、そこに陣を張るぞ」
俺達は、出来るだけ音を立てないように、移動する。
マメダは小声で、オオカミの気配が多いと言った。
大きな群れなのか?
まだ、オオカミは、こちらには気付いて無い様子である。
オーラスさんが指示した、坂の途中のちょっとした平地に、
俺達は到着した。
左前方、少し下った所に、
オオカミの洞穴があるとマメダは言う。
ハチムの夢は、タヌキ族守護神、シガラキの導きであった。
ドラカン集落近くに、オオカミの群れが居る事を、
シガラキは危惧したのであろうか?
東山の裾野、山中の森で、
アルファ達若手PTと、
火の魔法使いオーラス、大弓のニックによる、
オオカミ駆除が始まろうとしていた。
さらっと、斜め読みでも、読んで貰って有り難いっす。
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星5やらw頂きたいっす。
反応無いと、便所の落書きだものねw
ポンポン展開の術。




