第六十五話。石盾と優先順位~ゲンコツダンジョン6階殲滅と装備購入計画
アルファ達若手PTと、元冒険者弓使いのニックは、
ゲンコツダンジョン6階に続く階段前に、無傷で到達していた。
ダンジョンに潜る目的は、リリーのレベル上げである。
また、HPポーションの原料となる薬草集めでもあった。
俺は、虫毒の瓶を配りながら、全員に指示を出す。
「シガラキ様の笠、後、16分あるっす。
それが切れたら、休憩とするっす。
このまま、6階に行くっすけど、
ニックさん、こっからは、集中攻撃じゃなく、
まず、バラバラと虫に虫毒の一撃を入れて、虫を痺れさせます。
カエルは、ライトに弱いので放っておいて、
近場のコボルトから、キノコは距離によりっす」
ダンザが、問う。
「俺の初手、コボルトでいいだーか?」
俺は、頷いて言った。
「そうだね。
初手、虫への攻撃はしなくていいよダンザは、
大体、近いコボルトになるかな?」
ダンザは、頷いた。
ニックさんも、尋ねる。
「槍に塗る虫毒の量は、
ホントに、矢先に塗る程度でいいのかい?」
ハチムが、答える。
「それでも、多いぐらいなんですよ」
俺達は、虫毒の準備が済むと、
6階の階段とその先に、魔物の気配と、
魔力探知範囲内の安全を確認し、階段に続く扉を開いた。
ダンザを先頭に、明るく照らされたダンジョンをズンズンと進む。
PTの隊列は、いつの間にかダンザの真後ろに、
俺が付く様になっていた。
俺が、隊列の後ろに居ると、先頭のダンザの所まで歩き、
魔力探知を報告するまでに、無駄な間が生まれるからだった。
6階の通路を進むと、前方に扉が見える。
ダンザが、扉に到達する前に俺は言った。
「中に居るっす」
そのまま全員通路を進み、ダンザが扉の前で止まる。
俺は、歩きながら鑑定もし、部屋の中の探知結果を報告する。
「左7mアリとコボルト、その後ろにカエル1、
中央20mイモムシ2、
右13mアリと後ろにコボルト、計7匹っす」
ダンザが、言う。
「俺は、左のコボルトだーな」
マメダも、言う。
「左のアリ、ニック叔父さんね。
中央左のイモムシをアタシが、中央右はハチムね」
俺も言った。
「うん、俺は、右のアリだね」
ニックさんが、言う。
「居場所が判り、初手で虫は沈黙か・・・」
ハチムもリリーも言う。
「危険が少ないのは、ありがたいです」
「シガラキ様の使いのお陰よ?」
俺は、少し照れ臭かった。
最終確認をする。
「カエルだけじゃなく、コボルトも暫くは目が眩みます。
槍や矢が簡単に当てられるのも、魔物が棒立ちだからっすよ?
さて、虫毒の武器の準備はいいっすね?
・・・防御壁出します。
3,2,1」
俺は、ゼロで扉の先に防御壁を出した。
ズ。
小さな地響きを合図に、ダンザは扉を押し開き、
扉の隙間から暗闇に光が差し込む。
ダンザは、防御壁前方に駆け込みざま、
左前方のコボルトに石盾をブン投げる。
ゴメキ!!
肉に石盾が当たる鈍い音と、
一瞬遅れて骨の折れる音が、ほぼ重なって聞こえる。
駆け込んだ前衛、ニックさんとハチムの槍が宙を走る。
左のアリ、中央奥右のイモムシに槍が刺さった。
俺は、ステップを踏み、防御壁に飛び乗りながら言う。
「7匹」
その声が消える前に、中央奥左のイモムシに矢が立つ。
俺は、右前方10mほどの所に居るアリに、槍を投げる。
背に当たった!
刺さりはしないが、毒はどうだ?!
視界のステータスで、魔物の状態を確認、
アリ2イモムシ2、毒状態。
石盾を喰らったコボルトは、うずくまり血を吐いている。
その後ろのカエルは、動けない様子。
俺は、咄嗟に言った。
「右のコボ」
右のコボルトは、頭を下げ、
片腕を上げ目を庇い、中腰で動けずに居る。
そのコボルトに、矢と槍が刺さる。
一瞬後、3本目の槍と、
石盾がまたも背筋の凍る音を立てた。
右のコボルトのHPはゼロだ。
俺は、左のうずくまるコボルトに槍を投げる。
肩口に刺さり、
視界のHPバーでHPがゼロになったのが見える。
バーでは、虫共のHPが減り続けてもいた。
残りは、カエル。
俺が指示を出す間も無く、
カエルに矢と槍が次々と刺さった。
3本目の槍が刺さった時、
視界のバーで、カエルを倒した事が確認出来た。
「虫は毒、見るっす」
俺の指示を無視して、右のアリに石盾が当たる。
ゴシャ!
アリの頭に、石盾が3割ほどめり込んだ。
ダンザが、息を吐きながら言った。
「ふぅ、試しただーな」
左のアリと、中央奥のイモムシ2匹のHPがゼロとなる。
俺が防御壁を出してから、
10秒程度しか経って居なかった。
俺は、防御壁を下りながら指示を出す。
「リリー、扉閉めて。
7匹だったっすね」
ハチムが、言う。
「コボルトに石盾いいですね!
骨折で動けずに居ましたよ!」
マメダが、防御壁を降りながら受ける。
「倒せはしなかったけどね」
リリーが、明るい声で言う。
「アリなら、一撃で倒せてたかもしれないわ?」
俺も、続ける。
「アリの頭に、石盾めりこんでたもんなw」
ニックさんが、頭を振りながら言う。
「まったく・・・信じられん」
マメダが、得意げに言う。
「ね?
槍先に塗る程度で効くのよ」
ダンザが、ドロップや武器を回収に向かう俺に言う。
「悪いだな、
一回試したかっただーよ」
俺は、ダンザの横まで行って言った。
「ハチム、ニックさん、槍いいすか?
防御壁回収するっすよ?」
ハチムとニックさんは、防御壁から、
槍を1本ずつ抜き出した。
慌ててダンザも、石盾を一つ防御壁から取る。
それを見届けた俺は、防御壁を回収し、
ダンザを、杖の石突きで小突きながら言った。
「一回試したかったんだろ?
俺も見れて良かったよ」
ダンザは、俺の杖を中盾で払いながら言う。
「これからも投げていいだーな?
時間短縮になるだし」
マメダが、少し笑いながら言った。
「アンタ、槍に多めに毒塗ったら?」
俺は、ドロップや武器を回収に向かいながら言う。
「どうしよかな・・・意味無いんじゃない?
先っちょのちょっとしか、
刺さってないんだろうから」
ハチムが、フォローに回る。
「練習すれば、今に刺さるようになりますし、
HPポーションで儲かったら、
鉄の槍先を買えばいいんですよ」
俺は、指示を出した。
「話は、また後にするっす。
笠が勿体無いから、先に行くっすよ?」
ダンザは、部屋を抜ける扉に向かって歩き出した。
俺以外が、ダンザに付いて行く。
俺は、部屋中央辺りで、
武器とドロップ品を回収をしながら言った。
「笠、あと10分ちょい、
切れるまで脇道潰して行くっす」
ハチムが、言う。
「ここから先、もうチョットで、
僕、道判らなくなります」
ニックさんが、答える。
「大丈夫だ、俺が判る」
部屋を抜ける扉の前で、皆に合流し俺は言った。
「扉の先、魔力探知、感無し。
ダンザ、行こう」
俺達は、シガラキ様の笠が切れる寸前まで、
6階殲滅を続けた。
4部屋を巡り、2度の戦闘をし休憩とする。
俺は、扉を閉めた部屋の中で、水を配りながら言った。
「さっきの話、儲かったらなんすけど、
武器より防具を、先にするのが良いと思うんだけど、
どうっすか?」
リリーが、不思議そうに言う。
「防具?」
ダンザとハチムが言う。
「防具だーか?」
「防具ですか?
槍先じゃなくて?」
マメダとニックさんは、納得して言う。
「攻撃面に問題無いものね」
「ダンザとハチムの防具って事だな?」
俺は、頷き、ダンザとハチムに向かって言う。
「絶対は、マメダの矢の補充。
次は、前衛の鉄かぶと、鉄の胸当てか鎧、
余裕があれば鉄の盾、小手、靴。
これが武器より優先じゃないかな?
と、思ってるんだけど」
ダンザは、首をかしげ言う
「まだ要らないんじゃないだーか?」
ハチムは、少し考えながら言う。
「10階のボスに挑むなら、
武器も防具も両方欲しいです」
俺は、答える。
「ボスには、まだまだ行かないよ。
ボス前までは行くけど、ボスは行かない。
出来るだけレベルを上げたいんだ」
ニックさんが、問う。
「どのくらいまでレベルを上げるんだい?」
俺は、ニックさんに向かって答える。
「俺も判らないっす。
もう上がらなくなるまでっす」
ニックさんは、納得した様に言った。
「慎重なんだな。
武器より防具、
先に進むより10階でレベル上げか」
マメダが、言う。
「先に進んでも、
大して儲けは変わらないからね?」
リリーが、呟く。
「薬草をポーションに出来るんですものね」
俺は、ダンザとハチムに言った。
「俺達の目標は、リリーのレベル上げと一儲けだ。
そこそこの儲けは、もう見えた。
焦る必要は無いんだ。
後は出来るだけ安全に、
俺達のレベルを上げるのが大事だと思う」
ハチムは、同意した。
「防具を揃える方が、安全なんですね?」
ダンザは、いまいち納得しない。
「安全も何も、
前衛は攻撃を食って無いだーな」
ニックさんが、助け舟を出す。
「ダンザ、後衛はな、前衛頼りなんだよ。
防御壁が通用しなくなって、
攻撃を食い始めた時、後悔しても遅いんだ」
俺も、言った。
「『ダンジョンを舐めるな』だ。
階層違いに出くわしても、どうにか出来る様に、
武器より防具だと思う」
ダンザが、それでも言った。
「判っただーが、鉄の穂先5つくらい、
先に買えばいいだーな」
マメダが、笑いながら言う。
「そうね、槍100本分買う訳じゃないんだからw」
ハチムも、少し笑いながら言った。
「アルファさんの分だけでも、槍先を鉄にするのは、
安上がりに効果があると思います」
俺も、少し笑いながら言った。
「じゃ、矢の補充、槍先5つ、鉄兜の順ね」
リリーも、笑いながら言う。
「それくらい、一度に買えるぐらい、
ポーションを集めましょう?」
ニックさんが〆た。
「何でも無い普通の武器防具だ、
イーハンに行けば、矢も槍先も、鉄兜も手に入るさ」
俺達は、しばし休憩し、6階の殲滅を再開した。
問題無く7階、8階と殲滅を続ける。
6度目の笠を掛けると、リリーの魔力は半分を切った。
その笠が切れるまで殲滅とし、
9階途中までを殲滅し地上に向かう。
帰り道は、5階から魔物が出た。
1~5階は、すり抜けて来たからだ。
7度目の笠を掛け、俺達は地上に最短で向かった。
さらっと、斜め読みでも、読んで貰って有り難いっす。
いいねやら、感想やら、ブックマークやら、レビューやら、
星5やらw頂きたいっす。
反応無いと、便所の落書きだものねw
ゴボキ!!
何を買うか、夢が広がりますなぁw




