第六十三話。火もまた石盾~謎の新戦法開発と修練
虫毒草採集を、30分ほどで切り上げ、
俺達は、集落に帰る事とした。
ありがたい事に、虫毒は十分手に入る事が判った。
今回採取した、東山の方へ続く湖畔の草むらは、
幅が広くて距離も長い。
草むらの半分も探り切れずに30分が経ってしまったし、
ゲンコツ山より川側の、虫毒草を始めて発見した草むらにも、
もう、新たに魔力を溜め込んだ、
虫毒草の葉がちらほらあったのだ。
ゆうても、雑草だしなぁ・・・
季節的な事で取れなくなるかもだから、
採れる内に、多めに虫毒草をキープしておくべきだろう。
俺達は、湖畔を進み、湖を離れ谷を降り、
丸太橋の架かった川原に到着した。
俺は、自信満々にダンザに向かって言う。
「ダンザ、試してみようぜ?
投げ石盾」
みんな半信半疑で、口々に言う。
「石盾ねぇ」
「ホントにあるんですか?」
「投げるだーか?」
「ふむ・・・小盾なんだろうが、投げるとはな」
「盾を投げるなんて凄いのね、アルファの世界は」
ええ、嘘なんですけどね。
でもいいじゃないっすか、
もしかしたら、もしかする訳ですし。
なんかそういう、何でも投げるゲームも、あった様に思いますし。
俺は、ダンザに尋ねる。
「どんなの投げたい?
どんなのでも作るぜ?」
ダンザは、少し考えながら、ポツリポツリと言った。
「俺が投げる盾?
・・・投げるだーか盾?
・・・あー・・・小盾だーな。
大皿ぐらいだーか?
・・・腕に付ける様な感じの大きさやつ、
あるだーな?」
オーラスさんが、噛み砕く。
「ターゲットシールドか?
小手に取り付ける防具だ。
それか、タージェってヤツだな。
ひもで肩から吊るしたりするヤツだ。
あれは、盾と言うか・・・まぁ防具か」
俺は、なんとなく理解した。
腕に付ける盾、はいはい、なんとなく判るぜ。
小手と一体化してるヤツね?
盾の形状はしてるよな、あれ。
あれは盾っちゃ盾か?
超小盾?
盾ってか、プロテクターみたいなもんか?
イヤ、違う!
盾だ、あれは盾、断然盾、相当盾、
事実上盾、思いのほか盾、案外盾です。
俺がそう思わないでどうするw
俺が、あれを盾と言い張らないで、どうするってんだ。
「あー町の防具屋で見たヤツっぽいのかな?
小手に付いてる、
30センチぐらいの円盤型の『盾』?」
ダンザは、なんとなく、ふわっとした感じで答えた。
「うー、投げる盾・・・だーな?
そんな感じのヤツがいいだーな、たぶん」
俺のイメージ的には、フリスビーサイズのヤツだ。
バケツの蓋。
バケツみたいな桶で漬物作る時の、加工された漬物石・・・。
形は、ドラ焼きの皮の片面。
いや、盾ですよ?盾です。
漬物石じゃありません、盾なんです。
作ります、石盾。
今から作るのは、石盾なんです。
俺は、今から超小型石盾を作ります。
自分に言い聞かせながら、とりあえず俺は、
川原にゴロゴロとある大石を一つ削り、
フリスビーサイズのドラ焼きの皮状の石版・・・。
なんか地面にある、コンクリの水路の丸い蓋、みたいな気もするが、
兎に角、石盾と呼べるか怪しい、
建材としか思えない石版を削り出した。
ダンザに見せながら俺は言う。
「『盾』の厚さはどうする?
もっと薄く?」
ダンザは、またも小首を傾げながら言う。
「んー?
わからんだーな、まぁいいだな。
それ投げて見て考えるだーな」
ふむ、一回投げて、様子見ればいいか。
つーか、この『盾』を盾と呼べ!
ダンザ。
俺は、ダンザに『石の超小盾』を渡しながら言った。
「ちょっと杖で小突くから、その盾で防御してみろよ」
ダンザは、眉をひそめ、言った。
「なんだーな、投げれば良いだーな。
腕に付けてれば、使えるだーが、装着して無いだな、これ」
オーラスさんが、俺の様子を見て、何か感づいた様子で言う。
「ふむ・・・その『盾』は、皮で包んで小手と繋げるか、
穴でも開けて革紐を通し、手に直接くくり付けるかだ」
俺は、スローモーションで、
杖の石突きで、ダンザに突き掛かりながら言った。
「こう突かれたら、その盾どう使うの?」
ダンザは、ちょっと不快そうな、不思議そうな表情で、
俺の突きを『石盾』で防御しながら言った。
「そりゃ、お前?
こうだーな」
掛かったな!ダンザ!!
その道端の排水溝の丸い蓋を、
盾と認識しやがったな?!
投げやがれ!!
その建材を投げやがれ!!
それが盾じゃないと気が付く前に、
さっさとその石版を投げやがれ!!!
俺は、何食わぬ顔をして、
15メートルほど先の大きめの岩を指差し、
ダンザに言った。
「その盾、川の向こうの、あの大岩に投げてみ?」
ダンザは、川の水際に向かい、
投げ方をちょっと試しながら言った。
回転はしないが、陸上の円盤投げの要領で投げるようだ。
「思い切りだか?」
俺は、焦る気持ちを抑えて答える。
「思い切り投げたいんだろ?
どかーんと盾投げてみろよ」
オーラスさんも、リリーマメダハチムも、
興味深げに、黙って顛末を見詰めていた。
ダンザは、数歩水際から下がり、
右手に『石盾』を持ち、左半身になって少し体を振ってから、
一瞬止まって狙いを定め、
数歩踏み込んで半回転し、石版を投げた。
ゴガガッ!!
ダンザの手を離れた石版は、
川向こうの大岩に当たり、砕け散った・・・。
バカ金髪ジュニアヘビー級プロレスラー・・・
やりやがった。
あの建材を、盾と思い込みやがった!
やったぜ、ダンザ、やりやがった・・・。
この茶番を見届けていた観客から、歓声が上がった。
「兄さん!当たったわ!!」
「砕けましたよ!凄い音でしたね!!」
「やるじゃないよ」
「当たるじゃないか、投げ盾」
俺も、ダンザに向かって当然の様に言う。
「どうだい?投げ盾の感じは」
ダンザは、川岸で振り向き、笑いながら言った。
「当たるだな、盾。
盾は投げ易いだーな」
そうかいw
盾は投げ易いのかいww
そうだろうさ、お前には、盾の才があるんだからな。
盾扱いならお手の物だろう?
俺も、笑顔で言った。
「いくらでも作るぜ?石盾。
重さ、大きさ、厚さなんかはどうする?」
ダンザは、少し首を傾げ、考えながら言った。
「うーん、ちょっと判らんだーな。
色々作ってくれるだか?
それで、試してから決めるだな」
俺達は、石盾投げと言う謎の新戦法を手に居れ、
集落に戻った。
集落前広場で、おチビ達と犬、
ニックさんサニーさんに出迎えられた。
ドラカンさんは、相変わらず集落前の長椅子で寝転んでいた。
おチビ達は、俺達の無事の帰還を喜んでハシャいでいる。
ホラ、大丈夫だったろう?
俺達には、シガラキ様が付いてるからな。
お前達も、俺たちの無事を祈ってくれてるし、大丈夫だ。
可愛いやつらめ。
俺達は、戦果をドラカンさん達に報告すると、
ニックさんは未だ信じられぬ様子。
ドラカンさんは、270と言う馬鹿げた魔石の量を聞いても、
納得の表情だった。
オーラスさんは、体験すれば判る。
俺は魔法を使ってないと、ニックさんに言ってニヤリ顔だ。
俺達若手は、戦利品を倉庫で整理し、
晩飯にはまだ早いので、各々の仕事をする。
倉庫には、もう聖水が無かった。
換わりに、中級虫毒と、HPポーションが増えている。
ドラカンのとっつぁんが、やってくれたっぽいな・・・。
長椅子で寝てるだけじゃないかw
こういう裏方の事をやって貰えるのは有難い。
ポーション作りなんかは、集落の元冒険者達にお任せしよう。
マメダは矢の手入れ、リリーダンザはおチビ達の世話、
ハチムは晩飯作りの手伝いに取られた。
壊れた黒曜石の槍、投げ斧の修繕は後回しでいいか?
入り口の詰め所に、補修交換パーツを置いておけば、
夜中にでもとっつぁん達がやってくれるか?
まぁ俺は集落前広場で、石削りだ。
近くの長椅子では、
ドラカンさんとオーラスさんが寝転んでいるw
今作るべきは、さっき試しに作った石版。
もとい・・・試しに作った『石盾』より、
大きめ小さめ、重め軽め、円盤の淵を薄くしたり、
四角や、ホームベース型・・・。
とにかく色々な『石盾』を作って見る事とする。
材料は、川原の石だ。
ダンザが、黒曜石の石版、
もとい、黒曜石盾を投げたら、毎回ぶっ壊れそうだからだ。
重さは似たようなもんだし、投げ鈍器だ、
ダメージはそう変わらんだろう。
鋭利さより頑丈さのが、大事だろうと思う。
だいたい、毎回ぶっ壊されたら生産が間に合わん。
長椅子で寝転んでいる、とっつぁん2人は、
石盾投げに付いて話し合っていた。
オーラスさんは、さっき見ているから期待できると言い。
ドラカンさんは、マグレでないか?と半信半疑だ。
まぁ、現時点では、俺も半信半疑な訳だがw
それにしても石版、もとい『石盾』作りは、
案外MPを使うな・・・。
削る面積が多いからか?
MP2で3枚作れると言った所か。
MP1で3つ作れる槍の穂先の・・・倍の魔力コストだ。
まぁいい、俺の魔力は、
リリーと比べれば余る事になるだろうしな。
さっきは、大岩に投げて貰ったが、今度は的を土にして貰おう。
土山なら大体魔物に当てるのと、同じくらいの堅さだろうと思う。
的が岩や板じゃ、石版・・・、
もとい、石盾か的の板、どっちかが壊れるわw
MPを10ほど使い、15パターンの『石版』作りが終った。
おチビ達は、リリーとオーラスさんに託し、
俺とダンザは、ドラカンさんと一匹の犬を連れ、
湖畔に試し投げに向かう。
もう良いだろう?
ダンザだけでも、この『石版』を『石盾』と思ってればw
湖畔に出るとダンザは、
待ってましたとばかりに石版を投げたがる。
チョット待て、今状況を整えるから。
俺は、防御壁と石版を湖畔の水際に出し、
湖畔の土や砂をアイテム収納し、腰ほどの高さの土的を、
防御壁から距離や角度を変え、9つ山側に作った。
俺が、的を作る間にも、ダンザは防御壁の定位置で、
色々な石盾をウキウキと弄っている。
的を作り終えた俺は、ダンザに向かって言う。
「近いの遠いの、真ん中左右、
とりあえず、こんなもんでいい?」
ダンザは、石版を投げるモーションを確認しながら言った。
「そんなもんだーな。
投げるから、そこから離れるだーな」
ダンザ、お前・・・、
気に入ってるな石盾w
ドラカンさんは、防御壁から少し離れた湖畔に犬と座り、
こちらを見ていた。
俺は防御壁に向かい、防御壁の外側の側面に立ち言った。
「いいぜ、『石盾』投げて」
ダンザは、嬉々として石版を投げ始めた。
陸上の円盤投げ、半回転バージョンだ。
数歩助走を付けたり、助走無しもダンザは試している。
大体、6m、13m、20m辺りに小山を積んだが、
ダンザの投げる石版は、高い命中率だった。
手前、中ほどの的に投げていたが、百発百中、
石版がドッと言う音をたて、小山にめり込んだ。
まぁ、百発百中たって、15枚しか石版無いけどね。
一通りの石版を投げ終わったダンザが、
俺に向かって言う。
「アルファ、回収してくれるだか?」
俺は、聞く。
「どれが良かったのさ?
良くなかったのは、そのまま捨てちゃおう?」
ダンザが、的に指を刺しながら言う。
「うーん、どの盾もアレだーが、
良い感じのはアレとアレと・・・アレだーな」
俺は、ダンザが指差した石版に歩いて近づき、
的からアイテム収納し、
ダンザの前の防御壁の上に出しながら言う。
「もう今日は、魔力探知使う余裕無いんだよ。
お前の投げ良い石盾量産しなきゃだし、
黒曜石の槍先も作らなきゃだし・・・」
ダンザが、笑いながら答える。
「なんだーな、そうか、
じゃ投げたら自分で取りに行くだーな」
いつの間にか、防御壁の脇に来ていた、
ドラカンさんが言う。
「いいだーよ、ダンザ。
俺が回収するだー。
お前は、投げる練習をすればいいだーぞ」
ドラカンさん・・・昼寝のしすぎか?
なんてなw
へへ。
さて、ダンザの選んだ石版は、
大体重さが2,5kgぐらいのヤツだ。
大きさ、厚さ、丸か四角かより、重さが大事っぽいな。
あとは、これからダンザが試して、
一番良い形を選んでくれればいい。
俺の残りMPは、10ちょいだ。
今日作れるのは15枚と言った所か・・・足りないな。
明日の朝作ればいいか、30枚あればいいか?50か?
石盾の、壊れ具合にも寄るからなぁ・・・。
後は、防御壁に石盾収納を、マメダに作って貰わないとな。
夕飯に呼ばれるまで、
ダンザは投げ盾の練習に励んだ。
ドラカンさんは、黙々と投げ盾回収をし、
俺は、魔力温存、重かった石盾を削り、
再利用しながら、
ダンザの指示する様に、石盾を作っていた。
さらっと、斜め読みでも、読んで貰って有り難いっす。
いいねやら、感想やら、ブックマークやら、レビューやら、
星5やらw頂きたいっす。
反応無いと、便所の落書きだものねw
心頭を滅却ってか?




